1.文字と式:中学1年数学―オリジナル基礎教科書

中学数学[総目次]

中学1年数学 2章 文字と式

検定 教科書
3級:文字式の基礎と表現ルール
2級:文字式の基本的な計算ルール
1級:関係を表す式と等式・不等式の基礎

1. 文字式の表し方

 例えば,1本120円の鉛筆を何本か買うことを考えます。

  1本では120円
  2本では240円
  3本では360円
   $\vdots$

 このように鉛筆を何本買うかによって代金が変わってくるわけですが,1本,2本,3本,…というように個別の本数に応じて代金を表す方法とは別に,買う本数を $n$ としておけば,鉛筆 $n$ 本の代金は

$120\times n$ (円)

というように表すことができます。このとき文字 $n$ というのは「数を入れる箱」といったイメージがぴったりです。$n$ という名前の箱の中に1が入れば120円だし,2が入れば240円だしといった具合に,鉛筆を買うときのあらゆる状況を $120\times n$ で表すことができるのです。

鉛筆の代金がこの式1つで表される。

 このように文字を用いて表した式を文字式といいます。

 このように数量を文字で表すことは,既に小学6年生のときに学習済みだったわけですが,中学校ではここから更に文字を用いて式を表す際のいくつかのルールを学んでいきます。まずはそのリストを一気に見てみましょう。

文字式のルール

ルール
文字を含む乗法では「×」の記号を省く $5 \times x \to 5x$
$x \times y \to xy$
$x \times y \times z \to xyz$
文字と数の積では数が先,文字があと $x \times 5 \to 5x$
$y \times (-4) \to -4y$
$x \times \frac23 \to \frac23x$ ($\frac{2x}3$ でもOK)
$(a-b) \times 6 \to 6(a-b)$
文字どうしの積はアルファベット順が基本 $y \times x \to xy$
$c \times b \to bc$
※アルファベット順は絶対ではありません。例外もしばしばあります。
1と文字の積は1を省き、$-1$ と文字の積はマイナスだけ書く $1 \times x \to x$
$a \times (-1) \to -a$
同じ文字の積は指数で表す $x \times x \times x \to x^3$
$x \times x \times y \times y \times y \to x^2 y^3$

 小学校から慣れ親しんできた割り算の記号「÷」は,中学校以降ではほとんど使わなくなります。というより,使わないことの方がむしろ推奨されます。というのは,割り算は交換法則や結合法則が成り立たないからです。


  $8\div4\ne4\div8$ (交換法則が成り立たない)
  $(8\div4)\div2\ne8\div(4\div2)$ (結合法則が成り立たない)

 文字を用いて,割り算の結果である商を表すときは,「÷」の記号を用いずに,分数で表すようにします。

商の表し方 \[a\div b\ \ \to\ \ \dfrac ab\]

除法の形 文字式表記の例
$x \div 4$ $\dfrac{x}{4}$
$3x \div 5$ $\dfrac{3x}{5}$ ( $\dfrac35x$ でもOK )
$y \div (-6)$ $-\dfrac{y}{6}$ ( $-\dfrac16y$ でもOK )
$(x+7) \div 2$ $\dfrac{x+7}2$ ( $\dfrac12(x+7)$ でもOK )
$a \div b \times 4$ $\dfrac{4a}b$ ( $4\dfrac ab$ とは書かない )

2. いろいろな数量の表し方

 いくつかの例題を通じて,いろいろな数量を文字式で表してみよう。

例題1 500円を出して,1本100円の鉛筆を $x$ 本買うとき,おつりを $x$ を用いて表しなさい。ただし消費税は考えません。

こたえ

鉛筆の代金は $100\times x=100x$ (円)です。
従っておつりは

$(500-100x)$ 円

例題2 $x$ kmの道のりを,時速5㎞で歩いたときにかかる時間を,$x$ を用いて表しなさい。

こたえ

かかる時間は $x\div5$(時間) つまり $\dfrac x5$ 時間

例題3 20%の食塩水 $x$ gに含まれる食塩の量を,$x$ を用いて表しなさい。

こたえ

含まれる食塩の量は $x\times0.2$(g) なので $0.2x$ g

例題4 $x$ kmの道のりを時速3kmで歩いたあと,$y$ kmの道のりを時速5kmでジョギングしました。かかった時間は全部で何時間ですか。$x$ と $y$ を用いて表しなさい。

こたえ

$x$ kmの道のりを時速3kmで歩くときにかかる時間が $\dfrac x3$ 時間
$y$ kmの道のりを時速5kmでジョギングするときにかかる時間が $\dfrac y5$ 時間
よってかかる時間の合計は $\left(\dfrac x3+\dfrac y5\right)$ 時間

3. 式の値

 1本120円の鉛筆を $n$ 本買うときの代金は $120n$ 円と表すことができます。いま鉛筆を2本買うとすれば,代金は $120n$ の $n$ を2に置きかえて

$120\times2=240$ (円)

となります。5本では

$120\times5=600$ (円)

です。

 このように,式の中の文字を具体的な数に置き換えることを,文字にその数を代入する(だいにゅうする)といいます。最初の例では $n$ に2を代入し,次の例では $n$ に5を代入したことになります。$n$ に2を代入したとき,2を文字 $n$ のといい,結果の240を $n=2$ のときの式の値といいます。

例題5 $a=2,\ b=-3$ のとき,$4a-5b$ の値を求めなさい。

こたえ

\[\begin{align*} 4a-5b&=4\times2-5\times(-3)\\[5pt] &=8-(-15)\\[5pt] &=8+15\\[5pt]&=23 \end{align*}\]

問題1 次の数量を,文字式の表し方に従って書きなさい。最後に単位も書くこと。
(1) 1個 $x$ gのおもり4個と,1個 $y$ gのおもり3個の重さの合計
(2) 鉛筆を1人につき $n$ 本ずつ15人に配ると $m$ 本余るとき,初めにあった鉛筆の本数
(3) 5mのひもから $x$ cmのひもを7本とったときの残りの長さ

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3級:文字式の基礎と表現ルール
2級:文字式の基本的な計算ルール
1級:関係を表す式と等式・不等式の基礎