公務員試験のための数学ワークブック
公務員試験の一般知能分野、教員採用試験等の一般教養分野の数学に限定して説明しています。より本格的に復習されたい方は、本編の 高校数学 をご覧ください。

乗法公式・因数分解と2次方程式
さて,これから高校数学が続きます.今回は「乗法公式・因数分解と2次方程式」です.乗法公式と因数分解の公式は,同じ式の左から右への変形か,右から左への変形かの違いだけです.乗法公式は分数の分母が無理数の場合にそれを有理数にする(有理化する)ときに使ったりします.また因数分解は今回の最後に取り上げる2次方程式を解く際に欠かせない知識です.
1. 分配法則さえ知っていればOK~式の展開
皆さんよくご承知のとおり,1つの式の中に足し算,引き算,掛け算,割り算が混ざっているとき,足し算,引き算よりも掛け算,割り算を優先して行わなくてはなりません.例えば,
を計算するときは
となります.ところがこの優先順位を逆転させることができます.それにはカッコを使えばよいのです.例えば,
とすると,
ですね.
ところで四則演算において次の関係が成立することもよくご存知でしょう.
この関係式を分配法則といいます.この法則が確かに成立していることを上の例で見てみましょう.
さて,私たちが問題を解く際には未知数として
という項が出てきたら,分配法則を使って,
と変形しますね.このように
演習問題1 次の式を展開しなさい.

2. 式の展開をお手軽に~乗法公式
さて,次のような式の展開を考えてみましょう.
これは
となります.この
一般知能でよく使われるものとしてあと3つあります.ここでそれらをまとめておきましょう.
乗法公式 乗法公式1
乗法公式2
乗法公式3
乗法公式4
(メモ)複号同順 “
公式の使い方に慣れるまでは逆に時間がかかるかもしれませんが,それなりのご利益があるのでしっかり使えるようになってください.
演習問題2 次の式を展開しなさい.

3. 乗法公式を覚えればもうこっちのもの~因数分解
冒頭でも述べましたように.因数分解のほとんどは乗法公式における右辺から左辺への変形という作業になります.
因数分解の手順は,
- 共通因数(下の注を参照)でくくる
- 因数分解の公式を利用
(注) 因数とは約数のようなものと思っていてよいでしょう.よって共通因数とは各項に共通する約数といえます.
となります.2の「因数分解の公式」とはSection2でみてきた乗法公式の右辺と左辺を入れ換えただけのものですので何てことありませんね.因数分解をするとは,式を因数の積の形にすることをいいます.書くまでもないかもしれませんが,一応因数分解の公式もまとめておきます.
因数分解の公式
因数分解の公式1
因数分解の公式2
因数分解の公式3
因数分解の公式4
公式1~3はすぐに慣れて使えるようになりますが,公式4は所謂「たすき掛け」の方法によって
例題 次の式を因数分解しなさい.
こたえ
(1)まずは共通因数がないか調べます.この場合
(2)
(3) 3つの項に共通な因数はありません.しかし因数分解の公式1が利用できます.
(4) これも3つの項に共通な因数がありません.しかし因数分解の公式3が使えます.この公式では
の計4通り存在します.(今はあくまで整数の範囲で考えています.
となりますから,一番最初の2数を選べばよいわけです.どちらを
演習問題3 次の式を因数分解しなさい.

4. 乗法公式 因数分解からイモヅル式にわかる~2次方程式
2次方程式は2次関数と密接な関係があるため,本来は2次関数とともに学習すべきなのですが,2次関数については出題頻度が低いためここでの説明は割愛させていただきます.2次関数に絡んだ問題が出題されるとすると,ほぼ間違いなく
最大最小問題でしょう.これには2次関数のグラフをきちんと描き,定義域をしっかりおさえることができれば難しいところはありません.あと2次関数の頂点の座標が求められるよう復習しておけば万全です.
2次方程式の解法は,
- 因数分解をする.
- 解の公式を利用.
のいずれかですが,一般知能で出題されるときには因数分解ができるような簡単な数値設定になっていることでしょう.ですからSection3で因数分解ができるようになった皆さんにとって,2次方程式などその付録のようなものです.
4.1 因数分解ができるケース
例題 次の2次方程式を解きなさい.
こたえ
(1) 左辺を因数分解します.共通因数の
(2) 同じく左辺を因数分解します.因数分解の公式3を適用しましょう.
(1)と同様に,
4.2 因数分解ができず,止む無く解の公式を用いるケース
解の公式は次のとおりです.
解の公式
“
の2つが答えになります.
一般知能で解の公式を使うことは滅多にありません.2次方程式が絡むほとんど全ての問題は,因数分解の公式が適用できるように数字が設定されているはずです.選択肢をヒントに,答えが
例題 次の2次方程式を解きなさい.
こたえ
(1)因数分解の公式が使えませんので解の公式を使います.
(2)やはり解の公式を用います.
演習問題4 次の

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