1.1次方程式:中学1年数学―オリジナル基礎教科書
中学数学[総目次]
中学1年数学 3章 方程式
| 級 | 検定 | 教科書 |
|---|---|---|
| 2級:1次方程式の基礎 | ||
| 1級:1次方程式の利用 |

1. 方程式とその解
同じであるという関係を表す等式
直前に学んだ「2章 文字と式」の3.関係を表す式 において,等号「=」には2つの意味があることを確認しました。
ここでは,そのうちの1つである「同じであるという関係を表す記号」という意味の「=」について,さらに深く見ていきます。
例
1冊 $x$ 円のノート2冊の代金は,400円である。
→ $2x=400$
- 左辺の $2x$ というのは,1冊 $x$ 円のノート2冊の代金です。
例えば
・$x=50$ (円)なら,$2\times50=100$ (円)
・$x=70$ (円)なら,$2\times70=140$ (円)
です。つまり,$x$ の値によって,$2x$ の値が変化します。 - 右辺の400は,実際の代金です。
ノート2冊の代金 $2x$ (円)と,実際の400円という代金が,同じであるという関係,それが
$2x$=$400$
です。
方程式とは?
この等式は,左辺が $x$ の値によって値が変化しますから,成り立つこともあれば,成り立たないこともあります。成り立つときの $x$ の値は何でしょうか?
それは $x=200$ です。確かめてみましょう。
\[2x=2\times 200=400\]
右辺の400と同じ値になりました。従って $x=200$ のとき,等式は成り立ちます。
この $2x=400$ のように,$x$ の値によって,成り立ったり,成り立たなかったりする等式を,方程式(ほうていしき)といいます。
また,$x=200$ のような,その方程式を成り立たせる $x$ の値を,その方程式の解(かい)といい,解を求めることを,方程式を解く(とく)といいます。

いくつかの例
方程式の例題をやってみましょう。
例題1 方程式 $4x=20$ について, $x=6$ は解ですか。
こたえ
$x=6$ のとき
\[4x=4\times6=24\]
これは,右辺の20と同じ値ではありません。
従って, $x=6$ はこの方程式の解ではありません。
答え 解ではない
例題2 方程式 $3x+4=25$ について,$x=7$ は解ですか。
こたえ
$x=7$ のとき
\[3x+4=3\times7+4=25\]
これは,右辺の25と同じ値です。
従って, $x=7$ はこの方程式の解です。
答え 解である
例題3 方程式 $-2x=-x+6$ について,$x=-6$ は解ですか。
こたえ
$x=-6$ のとき
\[\begin{align*}
&-2x=-2\times(-6)=12\\[5pt]
&-x+6=-(-6)+6=12
\end{align*}\]
両辺とも,値が12になりましたから,等式が成り立ちます。
従って, $x=-6$ はこの方程式の解です。
答え 解である

2.等式の性質
どうやって方程式を解くか
方程式 $2x=400$ を解くと,解は $x=200$ でした。実際,
(左辺)$=2\times 200=400=$(右辺)
となるからです。では,$4x+5=-15$ や, $x=7x+12$ などはどうでしょうか。$x=1,\ 2,\ \cdots$ などを当てはめて考えるのでは,時間がかかりそうです。解が分数なら大変なことになります。
実は,次に見る等式の性質を使えば,方程式の解が,機械的に求まります。あるいは「勝手に解にたどり着く」といってもよいかもしれません。
等式の4つの性質
①釣り合っている天びんに,同じおもりを載せても釣り合う
釣り合っている天びんがあります。

両方の皿に,同じおもりを置くと,

釣り合ったままです。
これを等式で表すと,
$A=B$ ならば $A+C=B+C$
②釣り合っている天びんから,同じおもりを取り除いても釣り合う
釣り合っている天びんがあります。

両方の皿から,同じおもりを取り除くと,

釣り合ったままです。
これを等式で表すと,
$A=B$ ならば $A-C=B-C$
③釣り合っている天びんで,おもりを何倍かにしても釣り合う
釣り合っている天びんがあります。

両方の皿のおもりを,それぞれ3倍にすると

釣り合ったままです。
これを等式で表すと,
$A=B$ ならば $AC=BC$
④釣り合っている天びんで,おもりを何分の1かにしても釣り合う
釣り合っている天びんがあります。

両方の皿のおもりを,それぞれ $\dfrac13$ にすると

釣り合ったままです。
これを等式で表すと,
$A=B$ ならば $\dfrac AC=\dfrac BC$
まとめておきましょう。
等式の性質
等式 $A=B$ が成り立つとき,次の4つの性質が成り立つ。
① 両辺に同じ数を足しても,等式は成り立つ。
\[A+C=B+C\]
② 両辺から同じ数を引いても,等式は成り立つ。
\[A-C=B-C\]
③ 両辺に同じ数を掛けても,等式は成り立つ。
\[AC=BC\]
④ 両辺を同じ数で割っても,等式は成り立つ。
$\dfrac AC=\dfrac BC$ (ただし,$C\ne0$)
いくつかの例
例題1 方程式 $x-5=-1$ を解きなさい。
こたえ
両辺に5を加えると, \[\begin{align*} x-5\color{red}{+5}&=-1\color{red}{+5}\\[5pt] x&=4 \end{align*}\]
例題2 方程式 $x+3=-1$ を解きなさい。
こたえ
両辺から3を引くと, \[\begin{align*} x+3\color{red}{-3}&=-1\color{red}{-3}\\[5pt] x&=-4 \end{align*}\]
例題3 方程式 $\dfrac x3=-6$ を解きなさい。
こたえ
両辺に3を掛けると, \[\begin{align*} \dfrac x3\color{red}{\times3}&=-6\color{red}{\times3}\\[5pt] x&=-18 \end{align*}\]
例題4 方程式 $4x=-12$ を解きなさい。
こたえ
両辺を4で割ると, \[\begin{align*} \dfrac{4x}{\color{red}{4}}&=\dfrac{-12}{\color{red}{4}}\\[5pt] x&=-3 \end{align*}\]

3.1次方程式の解き方
移項という考え方
方程式 $x+4=1$ を考えてみます。
等式の性質を使って,両辺から4を引くと
\[\begin{align*} x\color{red}{+4}&=1\\[5pt] x+4-4&=1-4\\[5pt] x&=1\color{red}{-4}\\[5pt] x&=-3 \end{align*}\]
赤色の部分がある2つの式が大切です。この2つを書き出すと,次のようになっています。
\[\begin{align*} x\color{red}{+4}&=1\\[5pt] x&=1\color{red}{-4}\\[5pt] \end{align*}\]
これはあたかも,$+4$ が「=」という扉を通ると,$-4$ へと変身させられたかのようです。
このように等式では,一方の辺にある項を,符号を変えて他方の辺に移動することができるのです。これを移項(いこう)するといいます。
移項の例
| 方程式 | 移項すると |
|---|---|
| $5x=\color{red}{3x}-6$ | $5x\color{red}{-3x}=-6$ |
| $-5x=\color{red}{-7x}+10$ | $-5x\color{red}{+7x}=10$ |
| $4x\color{red}{-2}=8$ | $4x=8\color{red}{+2}$ |
方程式の解き方
方程式は,文字を含む項を左辺に,数の項を右辺に移項することで,解くことができます。
ポイント
方程式の解き方
文字の項は左辺へ,数の項は右辺へ
例題1 次の方程式を解きなさい。\[6x-17=2x-5\]
こたえ
$-17$ と $2x$ を移項すると, \[\begin{align*} 6x\color{red}{-2x}&=-5\color{red}{+17}\\[5pt] 4x&=12\\[5pt] x&=3 \end{align*}\]
例題2[カッコを含む場合] 次の方程式を解きなさい。\[7(x+2)=9x+6\]
こたえ
カッコを外すと \[7x+14=9x+6\] $14$ と $9x$ を移項すると, \[\begin{align*} 7x\color{red}{-9x}&=6\color{red}{-14}\\[5pt] -2x&=-8\\[5pt] x&=4 \end{align*}\]
例題3[分数を含む場合] 次の方程式を解きなさい。\[\dfrac x2=\dfrac x3-1\]
こたえ
両辺に6を掛けて \[\begin{align*} \dfrac x2\color{red}{\times6}&=\left(\dfrac x3-1\right)\color{red}{\times6}\\[5pt] 3x&=2x-6 \end{align*}\] $2x$ を移項して \[\begin{align*} 3x\color{red}{-2x}&=-6\\[5pt] x&=-6 \end{align*}\]
例題4[小数を含む場合] 次の方程式を解きなさい。\[0.4x-1.3=0.7\]
こたえ
両辺に10を掛けて \[\begin{align*} (0.4x-1.3)\color{red}{\times10}&=0.7\color{red}{\times10}\\[5pt] 4x-13&=7 \end{align*}\] $-13$ を移項して \[\begin{align*} 4x&=7\color{red}{+13}\\[5pt] 4x&=20\\[5pt] x&=5 \end{align*}\]
補足
これまで学んできた方程式は,移項して整理すると,どんなものでも次のような形をしています。
\[ax+b=0\]
この左辺は $x$ の1次式なので,この形の方程式を1次方程式といいます。

4.比例式
例えば,果汁40%のオレンジジュース200mLに含まれている果汁の量は
$200\times0.4=80$(mL)
です。よって,果汁とジュースの比は
\[80:200=2:5\]
となります。このとき,$\dfrac25$ を $2:5$ の比の値といいます。
$a:b$ の比の値は $\dfrac ab$
小学校のときから,$80:200=2:5$ と書いてきましたね。これは「80と200の比」と「2と5の比」が等しいという意味です。
では,ここで問題です。「比が等しい」とはどういうことなのでしょうか?
もし「説明してごらん」と言われたら,うまく答えられるでしょうか?
実は,その答えはこうです。
比を分数にして比べてみると,どちらも同じ値になる
\[\dfrac{80}{200}=\dfrac25\]
つまり,「比が等しい」というのは「それぞれの分数の値が等しい」ということを意味しているのです。
一般に,次が成り立ちます
\[\dfrac ab=\dfrac cd\iff a:b=c:d\]
$a:b=c:d$ のような比で表された等式を比例式といいます。
比例式の解き方
比例式を扱うとき,上の等式のように分数だとちょっと書きにくいです。そこで,$\dfrac ab=\dfrac cd$ の両辺に $bd$ を掛けて,分母を払うと次のようになります。
\[\dfrac ab\color{red}{\times bd}=\dfrac cd\color{red}{\times bd}\]
\[ad=bc\]
小学校のときからこの形で使ってきたと思います。そこで,今後は比例式が出てきたら,この形で取り扱うことにします。
比例式の関係\[a:b=c:d\iff ad=bc\]
例題 比例式 $x:4=7:2$ を満たす $x$ を求めなさい。
こたえ
比例式の関係から \[\begin{align*} x\times2&=4\times7\\[5pt] 2x&=28\\[5pt] x&=14 \end{align*}\]

中学数学[総目次]
中学1年数学 3章 方程式
| 級 | 検定 | 教科書 |
|---|---|---|
| 2級:1次方程式の基礎 | ||
| 1級:1次方程式の利用 |
