2.1次方程式の利用:中学1年数学―オリジナル基礎教科書

中学数学[総目次]

中学1年数学 3章 方程式

検定 教科書
2級:1次方程式の基礎
1級:1次方程式の利用

1. 1次方程式の利用

 小学校の算数では,長い問題文を読ませて考えさせる,いわゆる文章題と呼ばれる問題がありました。「計算はできるけど,文章題は苦手だな」と思っていた人はきっと多いはずです。

 塾のテキストや,書店の参考書には「つるかめ算」「旅人算」「ニュートン算」といった「~算」の類が次々に登場し,そのたびごとに苦労したことでしょう。

 けれど,もう大丈夫。これら「~算」と呼ばれていた問題のほとんどは,方程式を使って解けてしまうのです。しかも,算数のときよりずっとシンプルに,ずっと簡単に。

今日で「~算」をはじめとした算数のテクニックはすべて,きれいさっぱり忘れてしまってもOKです。

 方程式の威力はそれほど絶大なのです

 小学校のころ,文章題をスラスラ解いてしまう友達が,クラスに1人か2人はいたことでしょう。でも,方程式を使えば,そんな友達と同じくらい問題が解けるようになります。

 実は,算数王であった友達でさえ,ひとたび方程式の便利さを味わってしまうと,自然に方程式を利用するようになります。そして,あれほど極めた算数のテクニックは使わなくなり,徐々に忘れていってしまうのです。

 信じられないかもしれませんが,これが現実です。

 そして,安心してほしいのは方程式を使えるようになるのに,特別な算数のセンスはほとんど必要ないということです。算数は苦手だったけど,数学はわかってきた!というのはとてもよくある話なのです。

 算数と数学,似ているけど,実はちょっと違う学問。
 だから,これからの勉強でどんどんできるようになっていくはずです。

 それでは実際に文章題を方程式で解いていきましょう。まずはその手順です。

①わからない数量を $x$ とおく
② $x$ を使った式や数量の間に成り立つ関係(方程式)を導く
③作った方程式を解く
④解いた答え(解)が問題に適しているか確かめる

例題1 何人かの子どもにお菓子を分けるのに,1人に4個ずつ配ると2個余り,1人に5個ずつ配ると4個足りませんでした。子どもの人数とお菓子の個数を求めなさい。

こたえ

①わからない数量を $x$ とおく

わからないものが,子どもの人数とお菓子の個数の2つあります。どちらを $x$ とおく方が考えやすいでしょうか。ここでは子どもの人数を $x$ 人としましょう。

② $x$ を使った式や数量の間に成り立つ関係(方程式)を導く

お菓子の個数を $x$ を使って表します。
1人に4個ずつ配ると2個余る → $4x+2$ …①
5個ずつ配ると4個足りない → $5x-4$
お菓子の個数が $x$ を使って2通りに表せました。よって次の関係(方程式)が成り立ちます。\[4x+2=5x-4\]

③作った方程式を解く

$2$ と $5x$ を移項して $4x-5x=-4-2$
整理して $-x=-6$
両辺を $-1$ で割って $x=6$(←解)

④解いた答え(解)が問題に適しているか確かめる

$x$ は子どもの人数ですから,小数や分数ではなく自然数です。従って $x=6$ は問題に適しています。
また,お菓子の個数は①より $4\times6+2=26$
お菓子の個数も自然数です。よってこれも問題に適しています。

答え 子どもの人数6人,お菓子の個数26個

子どもの人数を $x$ 人とすると

\[4x+2=5x-4\]

これを解いて  $x=6$
お菓子の個数は $4\times6+2=26$
これらは問題に適している。

答え 子どもの人数6人,お菓子の個数26個

補足

 例えば $x=5.8$(人)だと問題に適しませんが,1次方程式の問題では,そのような答えにならないようにちゃんと作られていています。

例題2 あゆみさんは,家から2km離れた図書館に向けて歩き出しました。あゆみさんが出発して12分後,お姉さんが自転車で同じ道を追いかけました。あゆみさんは分速70m,お姉さんは分速210mで進みます。お姉さんは出発してから何分後にあゆみさんに追いつきますか。

こたえ

①わからない数量を $x$ とおく

お姉さんが出発してから $x$ 分後にあゆみさんに追いついたとします。

② $x$ を使った式や数量の間に成り立つ関係(方程式)を導く

2人が進んだ道のりに着目します。
あゆみさんが進んだ道のり → $70(x+12)$
お姉さんが進んだ道のり  → $210x$ …①
2人が進んだ道のりは同じです。よって次の関係(方程式)が成り立ちます。\[70(x+12)=210x\]

③作った方程式を解く

両辺を70で割って $x+12=3x$
$12$ と $3x$ を移項して $x-3x=-12$
整理して $-2x=-12$
両辺を $-2$ で割って $x=6$(←解)

④解いた答え(解)が問題に適しているか確かめる

2人が進んだ道のりは,①より $210\times6=1260$(m)
図書館までの距離が2kmですから,お姉さんはあゆみさんに追いつくことができました。従って $x=6$ は問題に適しています。

答え 6分後

お姉さんが出発してから $x$ 分後に追いついたとすると

\[70(x+12)=210x\]

これを解いて  $x=6$
このとき,2人が進んだ道のりは $210\times6=1260$(m)
これは図書館までの距離より短いから問題に適している。

答え 6分後

例題3 6%の食塩水300gに,水を加えて5%の食塩水を作ります。何gの水を加えればよいですか。

こたえ

①わからない数量を $x$ とおく

加える水の量を $x$ gとします。

② $x$ を使った式や数量の間に成り立つ関係(方程式)を導く

食塩水に含まれる食塩の量に着目します。
6%の食塩水300g → $300\times\dfrac6{100}$
5%の食塩水 $(300+x)$g → $(300+x)\times\dfrac5{100}$
水を加える前と後では食塩の量は同じです。よって次の関係(方程式)が成り立ちます。\[(300+x)\times\dfrac5{100}=300\times\dfrac6{100}\]

③作った方程式を解く

両辺に100を掛けて $5(300+x)=1800$
両辺を5で割って  $300+x=360$
$300$ を移項して    $x=60$(←解)

④解いた答え(解)が問題に適しているか確かめる

水を60g加えることは可能です。よって $x=60$ は問題に適しています。

答え 60g

加える水の量を $x$ gとすると

\[(300+x)\times\dfrac5{100}=300\times\dfrac6{100}\]

これを解いて  $x=60$
これは問題に適している。

答え 60g

例題4 赤玉と白玉の個数の比が $4:5$ で入っている袋の中に,白玉を9個入れたところ,赤玉と白玉の個数の比が $5:7$ になりました。赤玉の個数を求めなさい。

こたえ

①わからない数量を $x$ とおく

赤玉の個数を $x$ 個すると,白玉の個数は(赤玉):(黒玉)=4:5より,$\dfrac54x$ です。このまま解き進めてもよいのですが,分数は書きにくいので,文字のおき方を工夫します。
$n$ を自然数として,赤玉の個数を $4n$ とおきます。すると,赤と白の個数の比が $4:5$ より,白玉の個数は $5n$ とおけます。

※自然数は英語で natural number といい,答えが自然数となる変数にはしばしば $n$ が用いられます。もちろん $x$ など他の文字でも構いません。数学では「この文字を~の意味で使う」と宣言しておけば,ある程度自由に選べます。

② $x$ を使った式や数量の間に成り立つ関係(方程式)を導く

白玉を追加したあとの比例式を考えます。
追加したあとの白玉の個数は $5n+9$
よって次の関係(方程式)が成り立ちます。\[4n:(5n+9)=5:7\]よって \[4n\times7=(5n+9)\times5\]

③作った方程式を解く

整理して $28n=25n+45$
$25n$ を移項して $3n=45$
両辺を3で割って  $n=15$(←解)

④解いた答え(解)が問題に適しているか確かめる

$n=15$ のとき,赤玉は $4\times15=60$,白玉は $15\times5=75$ で,ともに自然数ですから,問題に適しています。

答え 60個

$n$ を自然数とする。
赤玉の個数を $4n$ 個とすると,最初の白玉の個数は $5n$ 個である。
袋に白玉を9個入れたとき\[4n:(5n+9)=5:7\]\[4n\times7=(5n+9)\times5\]これを解くと $n=15$
よって赤玉の個数は $4\times15=60$ より60個
これは問題に適している。

答え 60個

例題5 $x$ の方程式 $ax-12=-2x$ について,$4$ が解であるとき,$a$ の値を求めなさい。

こたえ

4が解であるということは,$x=4$ を代入すると,等号「=」が成り立つということですから実際に代入します。 \[\begin{align*} a\times\color{red}{4}-12&=-2\times\color{red}{4}\\[5pt] 4a-12&=-8\\[5pt] 4a&=4\\[5pt] a&=1 \end{align*}\] 答え $\boxed{a=1}$

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