1.比例:中学1年数学―オリジナル基礎教科書
中学数学[総目次]
中学1年数学 4章 比例と反比例
| 級 | 検定 | 教科書 |
|---|---|---|
| 3級:比例で始める関数と座標の理解 | ||
| 2級:反比例の考え方とグラフの特徴 | ||
| 1級:比例・反比例の応用問題の考え方 |

1. 関数
関数とは
まずは,中学校で初めて登場し,その後ずっと使い続ける重要な用語「関数」について説明します。キーワードは「ただ1つ」です。
例1
空(から)の水そうに水を入れると,水面の高さが毎分3cmずつ高くなるとします。
- 1分後 → 3cm
- 2分後 → 6cm
- 3分後 → 9cm
$\vdots$
$x$ 分後の水面の高さを $y$ cmとすると
\[y=3x\]
と表せます。$x$ を決めると,それにともなって $y$ の値がただ1つ決まります。
例2
1つ $x$ グラムの品物を買うと,1枚3gの袋に入れてくれます。合計の重さを $y$ グラムとすると
\[y=x+3\]
と表せます。$x$ を決めると,それにともなって $y$ の値がただ1つ決まります。
このように,ともって変わる2つの数量 $x,\ y$ があり,$x$ の値を決めると,それに対応して $y$ の値がただ1つに決まるとき,$y$ は $x$ の関数であるといいます。
関数とは$x$ の値を決めると,それに対応して $y$ の値がただ1つに決まるとき,$y$ は $x$ の関数である
また,$x,\ y$ のように,いろいろな値をとる文字を変数(へんすう)といいます。数学では $x,\ y$ の他に,$t$ や $n$ などの文字もよく用いられます。一方で,3のように決まった数のことを定数(ていすう)といいます。
関数のイメージ
ジュースの自動販売機があります。ボタン($=x$)を押すと,ジュース($=y$)が1つ出てきます。
ボタンを1つ決めたら,出てくるジュースもただ1つ決まります。
このとき,ジュース($y$)は,ボタン($x$)の関数であるといえます。
一方,ボタン($x$)を押すと,ジュース ($y$)が2本出てきたら?
これは関数ではありません。
※関数は「数と数の対応関係」を指す用語なので,ボタンとジュースというように物と物では,本当は関数とはいいません。あくまでイメージと思ってください。

変域とは
深さ30cmの空の水そうに水を入れると,水面の高さが毎分3cmずつ高くなるとします。 $x$ 分後の水面の高さを $y$ cmとすると
\[y=3x\]
となります。
ここで,$x$ の値は,とれる範囲が制限されていることに注意しましょう。
$x$ は0以上でなければなりません。また10分でちょうど満水になります。よって
\[0\leqq x\leqq10\]
です。このとき,$y$ の値の範囲は
\[0\leqq y\leqq30\]
です。このように,変数のとれる値の範囲を変域(へんいき)といいます。
- $x$ の変域は $0\leqq x\leqq 10$ です。
- $y$ の変域は $0\leqq y\leqq 30$ です。

2.比例を表す式
$y$ は $x$ に比例するとは
空(から)の水そうに水を入れると,水面の高さが毎分3cmずつ高くなるとします。 $x$ 分後の水面の高さを $y$ cmとすると
\[y=3x\]
と表せます。またこのとき, $y$ は $x$ の関数であるといいました。
ところで,$y=3x$ のように,
$y=$(定数)$\times x$
で表されているとき,
$y$ は $x$ に比例する
といいます。つまり「$y$ は $x$ の関数である」と同時に,「$y$ は $x$ に比例する」のです。
小学校のときは…
比例は小学校6年生で学習済みです。小学校の教科書には次のように書いてありました。
比例とは(小学校バージョン)2つの数量 $x$ と $y$ があって,$x$ の値が□倍になると,それにともなって $y$ の値も□倍になるとき,$y$ は $x$ に比例するといいます。
一方,中学校バージョンは次の通りです。
比例とは(中学校バージョン)2つの数量 $x$ と $y$ があって,
$y=ax$ ($a$ は定数)
で表されるとき,$y$ は $x$ に比例するといいます。
※このとき定数である $a$ を比例定数(ひれいていすう)といいます。
●「違うの?」
いいえ,どちらも同じことをいっています。小学校バージョンを出発点にすれば,中学校バージョンの内容が導かれます。逆に,中学校バージョンを出発点にすれば,小学校バージョンの内容が導かれます。
$y=3x$ の場合を表で確認しておきましょう。

$x=1$ を基準にして,2倍,3倍と変化した様子

$x=2$ を基準にして,2倍,3倍と変化した様子
これらの表を見ると,$x$ の値が2倍,3倍,…になると,それにともなって $y$ の値も2倍,3倍,…になることがわかります。
例題 $y$ は $x$ に比例し,$x=2$ のとき, $y=-8$ です。比例定数を求めなさい。
こたえ
$y$ は $x$ に比例するので,比例定数を $a$ とすると,
\[y=ax\]
と表せます。$x=2$ のとき, $y=-8$ なので,
\[-8=a\times 2\]
両辺を2で割って,$-4=a$
答えは $\boxed{-4}$
補足 この例題のように,比例定数が負になることもあります。負の場合でも, $x$ の値を2倍,3倍,…とすると,それにともなって $y$ の値も2倍,3倍,…となります。

3.座標
平面上の点の表し方
次の図において,点Pの位置を相手に知らせるにはどうしたらよいでしょうか?

「真ん中より右で,ちょっとだけ上の方。」
これではどこを指しているのか,正確には伝わりませんよね。
そこで,誰にでも正確に点の位置がわかるようにするためのアイデアが,座標平面(ざひょうへいめん)です。
・原点で垂直に交わる2本の数直線を引きます。
↓
・縦と横にまっすぐに線を引いて,数直線と交わったところの目もりを見ます。
↓
・横の数直線の目もり,縦の数直線の目もりの順に $(3,\ 2)$ と書き表します。

点Pの位置が $(3,\ 2)$ であるとき,$\rm{P(3,\ 2)}$ と書き表します。
このようにすることで,誰もがいつでも同じ点を指し示すことができます。
用語
| 内容 | 用語 |
|---|---|
| 横の数直線 | $x$ 軸,または 横軸 |
| 縦の数直線 | $y$ 軸,または 縦軸 |
| $x$ 軸,$y$ 軸を合わせて | 座標軸 |
| 座標軸の交点O | 原点 |
| $\rm{P(3,\ 2)}$ の 3 | 点Pの $x$ 座標 |
| $\rm{P(3,\ 2)}$ の 2 | 点Pの $y$ 座標 |
| $(3,\ 2)$ | 点Pの 座標 |
注意
座標軸の原点はアルファベットの $\rm O$(オー)です。$0$ (ゼロ)ではありません。原点は英語でoriginといい,その頭文字の $\rm O$ が使われています。教科書の印字を,目を凝らして見ると,違いがわかると思います。
例題1 次のAからDの点の座標をいいなさい。

こたえ
${\rm A}(1,\ 4)$
${\rm B}(-4,\ 0)$
${\rm C}(-2,\ -1)$
${\rm D}(3,\ -2)$

4.比例のグラフ
グラフって何?
グラフという用語は,小学校のときから使っています。でも,「グラフって何?」と質問されたら,答えられますか?
「直線のことだよ。」
「じゃあ,反比例の曲線はグラフじゃないの?」
こんな会話が聞こえてきそうです。
$y=2x$ を例に考えてみましょう。
$x=1$ のとき,$y=2$ です。この $(x,\ y)=(1,\ 2)$ を座標平面上の点として取ることができます。他にも
\[\begin{align*}(x,\ y)=&(0,\ 0),\ (2,\ 4),\ (3,\ 6)\\[5pt]&(-1,\ -2),\ (-2,\ -4),\ (-3,\ -6)\end{align*}\]
などがあります。これらを座標平面の点として取っていきます。

こうして $y=2x$ を満たす $(x,\ y)$ の点を,もっと細かく,たくさんとっていくと,だんだん1つの図形が見えてきます。

この点の集まりで作られた図形が,$y=2x$ のグラフです。
つまりグラフとは,式を満たす $x$ と $y$ の組 $(x,\ y)$ を点と見て,座標平面に書き込んだ点の集まりでできる図形のことなのです。
グラフとは式を満たす $x$ と $y$ の組 $(x, y)$ を,点として座標平面に書き込んだ「点の集まりでできる図形」のこと
これは次のようなことを意味します。
- 式を満たす点は,グラフ上にある。
- グラフ上にある点 $(x,\ y)$ は,その式を満たしている。
改めて,比例のグラフを考えよう
小学校で学んだように,比例のグラフは,原点を通る直線になります。
ただし,中学校では負の数も出てきましたから,$x$ や $y$ が負の数になる場合もグラフで表します。
例1 $y=2x$

例2 $y=-2x$

例題1 次の比例のグラフをかきなさい。\[y=\dfrac23x\]
こたえ


例題2 次の点のうち,比例 $y=2x$ のグラフ上にある点をすべて選びなさい。
① $(5,\ 12)$ ② $(-6,\ -12)$
③ $\left(\dfrac12,\ 1\right)$ ④ $\left(\dfrac25,\ \dfrac65\right)$
こたえ
① $y=2x$ に $x=5$ を代入すると,$y=2\times5=10$
よって,点 $(5,\ 12)$ はグラフ上の点ではありません。
② $y=2x$ に $x=-6$ を代入すると,$y=2\times(-6)=-12$
よって,点 $(-6,\ -12)$ はグラフ上の点です。
③ $y=2x$ に $x=\dfrac12$ を代入すると,$y=2\times\dfrac12=1$
よって,点 $\left(\dfrac12,\ 1\right)$ はグラフ上の点です。
④ $y=2x$ に $x=\dfrac25$ を代入すると,$y=2\times\dfrac25=\dfrac45$
よって,点 $\left(\dfrac25,\ \dfrac65\right)$ はグラフ上ではありません。
答え ②,③

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