5.乗法の計算法則:中学1年数学―オリジナル基礎教科書
中学数学[総目次]
中学1年数学 1章 正の数と負の数
1.正の数と負の数
2.加法と減法
3.加法の計算法則
4.乗法と除法
5.乗法の計算法則
6.四則の混じった計算
検定
教科書

1. 除法を乗法になおす方法
ここでの目的は,除法(割り算)を,乗法(掛け算)になおすことです。そのために,1つだけ用語を確認しておきます。
逆数とは
$4\times\dfrac14$ は1です。また,$(-4)\times\left(-\dfrac14\right)$ も1です。
このように,2つの数を掛けて,答えが1になるとき,それら2つの数は互いに逆数(ぎゃくすう)の関係にあるといいます。
$4$ の逆数は $\dfrac14$ であり,$\dfrac14$ の逆数は $4$ です。
$-4$ の逆数は $-\dfrac14$ であり,$-\dfrac14$ の逆数は $-4$ です。
逆数 $A$ の逆数は $\dfrac1A$,$\dfrac1A$ の逆数は $A$

例
$\dfrac23$ の逆数は $\dfrac32$ $\left(\dfrac23\times\dfrac32=1\right)$
$-\dfrac53$ の逆数は $-\dfrac35$ $\left[\left(-\dfrac35\right)\times\left(–\dfrac53\right)=1\right]$
$1$ の逆数は $1$ $(1\times1=1)$
$-1$ の逆数は $-1$ $[\ (-1)\times(-1)=1]$
注意
0以外の数はどんな数にも逆数があります。しかし,0には逆数がありません。0×□=1となる□がないからです。
逆数を用いると,除法は乗法に書き換えることができる
6÷2=3ですが,$6\times\dfrac12$ も3です。
6÷(-2)=-3ですが,$6\times\left(-\dfrac12\right)$ も-3です。
(-6)÷2=-3ですが,$(-6)\times\dfrac12$ も-3です。
(-6)÷(-2)=3ですが,$(-6)\times\left(-\dfrac12\right)$ も3です。
これら4つの例から,
除法は乗法に書き換えることができる
ということがわかります。
上の計算例では
(ある数)÷2 → (ある数)×$\dfrac12$
(ある数)÷(-2) → (ある数)×$\left(-\dfrac12\right)$
となっています。
「$\,\div2\,$」が「$\times\dfrac12$」になり,「$\div(-2)$」が「×$\left(-\dfrac12\right)$」に変化しています。$2$ の逆数は $\dfrac12$ であり,$-2$ の逆数は $-\dfrac12$ です。つまり,ある数で割ることは,その数の逆数を掛けることと同じである ということがわかります。
ポイント
除法を乗法になおす方法
(ある数) ÷ $A$ = (ある数) × $\dfrac1A$
これが除法を乗法になおす方法です。(ただし,$A\ne0$)
例題 次の除法の式を,乗法になおして計算しなさい。
(1) $3\div(-4)$
(2) $(-5)\div3$
(3) $\dfrac12\div\dfrac16$
(4) $\left(-\dfrac49\right)\div\left(-\dfrac23\right)$
こたえ
(1) $3\div(-4)=3\times\left(-\dfrac14\right)=-\dfrac34(=-0.75)$
(2) $(-5)\div3=(-5)\times\dfrac13=-\dfrac53$
(3) $\dfrac12\div\dfrac16=\dfrac12\times6=3$
(4) $\left(-\dfrac49\right)\div\left(-\dfrac23\right)=\left(-\dfrac49\right)\times\left(-\dfrac32\right)=\dfrac23$
(1) $3\div(-4)=3\times\left(-\dfrac14\right)=-\dfrac34(=-0.75)$
(2) $(-5)\div3=(-5)\times\dfrac13=-\dfrac53$
(3) $\dfrac12\div\dfrac16=\dfrac12\times6=3$
(4) $\left(-\dfrac49\right)\div\left(-\dfrac23\right)=\left(-\dfrac49\right)\times\left(-\dfrac32\right)=\dfrac23$
2. 乗法の性質
乗法の交換法則と結合法則
加法では,次の交換法則と結合法則が成り立ちました。
加法の計算法則
[1] 加法の交換法則 $a+b=b+a$
[2] 加法の結合法則 $(a+b)+c=a+(b+c)$
乗法においても,交換法則と結合法則が成り立ちます。
乗法の計算法則
[1] 乗法の交換法則 $a\times b=b\times a$
[2] 乗法の結合法則 $(a\times b)\times c=a\times (b\times c)$
例
2×3=3×2 【交換法則】
(2×3)×4=2×(3×4) 【結合法則】
例題1 次の計算をしなさい。
(-4)×3.14×(-2.5)
こたえ
(-4)×3.14×(-2.5)
=3.14×(-4)×(-2.5) 【交換法則】
=3.14× {(-4)×(-2.5)} 【結合法則】
=3.14×10
=31.4
答えは 31.4
除法では交換法則や結合法則が成り立たない
除法では,交換法則や結合法則が成り立ちません。
[交換法則が成り立たない例]
$2\div5=\dfrac25(=0.4)$,$5\div2=\dfrac52(=2.5)$ (答えが違う)
[結合法則が成り立たない例]
$(8\div4)\div2=1$,$8\div(4\div2)=4$(答えが違う)
しかし,逆数を使えば除法は乗法に書き換えることができました。
例 $a\div b=a\times\dfrac1b$
除法は,乗法になおしてから計算すれば,乗法の交換法則や結合法則が利用できるようになります。除法の計算では,いつでも乗法に書き換えるクセをつけておくのがよいでしょう。
ポイント除法は乗法に書き換えておくのが基本
例題 次の計算をしなさい。
$36\div(-15)\div18$
こたえ
$36\div(-15)\div18$
=$36\times\left(-\dfrac1{15}\right)\times\dfrac1{18}$ (すべて乗法で表す)
=$\left(-\dfrac1{15}\right)\times36\times\dfrac1{18}$ 【交換法則】
=$\left(-\dfrac1{15}\right)\times\left(36\times\dfrac1{18}\right)$ 【結合法則】
=$\left(-\dfrac1{15}\right)\times2$
=$-\dfrac2{15}$
答えは $-\dfrac2{15}$
積の符号と絶対値
正の数だけの乗法と,負の数を含んだ乗法との違いを確認していきましょう。例えば $-2$ を何個も掛けていくとどうなるでしょうか。
1個 $-2$
2個 $(-2)\times(-2)=4$
3個 $(-2)\times(-2)\times(-2)=-8$
4個 $(-2)\times(-2)\times(-2)\times(-2)=16$
5個 $(-2)\times(-2)\times(-2)\times(-2)\times(-2)=-32$
$\vdots$
この結果から,負の数を含んだ乗法の積の符号と絶対値は次のようなっていることがわかります。

例題 次の計算をしなさい。
$(-4)\times5\times\left(-\dfrac13\right)\times(-6)$
こたえ
積の符号
負の数は,$-4,\ -\dfrac13,\ -6$ の3個(奇数) → 符号は-
積の絶対値
$|-4|\times|5|\times\left|-\dfrac13\right|\times|-6|=4\times5\times\dfrac13\times6=40$
答えは -40
3. 累乗
例えば,2×2×2のように同じ数を複数個掛けるとき,3個くらいならまだしも
2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2
になると,2が何個掛けられているかがとてもわかりにくいです。こんな時,数学には便利な表現方法があります。
例えば上の式は,2が13個掛けられているのですが,これを $2^{13}$ というように表現するのです。読み方は「2の13乗」です。
一般に,ある数 $a$ を $n$ 個掛けるとき,これを $a^n$ と表現し,「$a$ の $n$ 乗」と読みます。また $n$ を指数(しすう)といいます。そして,$a^2$,$a^3$,$a^4$,… をまとめて $a$ の累乗(るいじょう)といいます。
$a$ の累乗

累乗表現における注意事項
累乗の表現ではカッコ( )を付ける,付けないでは結果が異なる場合がありますから注意しなければなりません。次の例で確認しておきましょう。
例1 $(-3)^2=(-3)\times(-3)=9$
$-3^2=-(3\times3)=-9$
例2 $\left(\dfrac32\right)^2=\dfrac32\times\dfrac32=\dfrac94$
$\dfrac32^2=\dfrac{3\times3}2=\dfrac92$

問題1 次の逆数を求めなさい。
(1) $\dfrac73$ (2) $-\dfrac67$ (3) $-\dfrac18$
(4) $5$ (5) $1$ (6) $-1$
ヒント 掛けて1になる数が,その数の逆数です。
こたえ
問題2 次の計算をしなさい。
(1) $\dfrac65\div(-3)$ (2) $\left(-\dfrac5{12}\right)\div\dfrac{10}9$ (3) $-\dfrac{15}{32}\div\left(-\dfrac38\right)$
ヒント すべて乗法に書き換えてから計算します。
こたえ
中学数学[総目次]
中学1年数学 1章 正の数と負の数
1.正の数と負の数
2.加法と減法
3.加法の計算法則
4.乗法と除法
5.乗法の計算法則
6.四則の混じった計算
検定
教科書
