6.四則の混じった計算:中学1年数学―オリジナル基礎教科書
中学数学[総目次]
中学1年数学 1章 正の数と負の数
1.正の数と負の数
2.加法と減法
3.加法の計算法則
4.乗法と除法
5.乗法の計算法則
6.四則の混じった計算
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教科書

1. 分配法則
乗法・除法は,加法・減法に優先する
加法,減法,乗法,除法の4つをまとめて四則(しそく)といいます。四則が混じった計算には優先順位があることは小学校の時に学びました。乗法と除法が先で,加法と減法があとです。例えば $2+3\times4$ という計算では乗法を先に計算して $2+12=14$ となるのでした。
一方で,この優先順位を変更することも小学校で学習しました。カッコ( )です。カッコを用いると例えば $(2+3)\times4$ という計算は,カッコ内を先に計算して $5\times4=20$ となるのでした。
小学校で学んだ「分配のきまり」を改めて
ところで,(2+3)×4 という計算は,
2×4+3×4
というように,4を分配して計算できました。これを小学校では「分配のきまり」と呼んでいましたが,中学校からは分配法則といいます。今の計算では4が後ろから2と3に分配されましたが,次のように前から分配することもできます。
4×(2+3)=4×2+4×3
分配法則\[\begin{align*}&(a+b)\times c=a\times c+b\times c\\[5pt]&a\times(b+c)=a\times b+a\times c\end{align*}\]
例題 分配法則を利用して,次の計算をしなさい。
(1) $15\times\left(\dfrac13-\dfrac25\right)$
(2) $\left(\dfrac13-\dfrac12+\dfrac14\right)\times 12$
こたえ
(1) 分配法則より
\[\begin{align*} 15\times\left(\dfrac13-\dfrac25\right)&=15\times\dfrac13-15\times\dfrac25\\[5pt] &=5-6\\[5pt] &=\underline{-1} \end{align*}\]
(2) 分配法則より
\[\begin{align*} \left(\dfrac13-\dfrac12+\dfrac14\right)\times 12&=\dfrac13\times12-\dfrac12\times12+\dfrac14\times12\\[5pt] &=4-6+3\\[5pt] &=\underline{1} \end{align*}\]
分配法則は分配するだけではない
これも小学校の復習になりますが,分配法則の役割は「分配」だけはありません。分配法則の左辺と右辺を入れ替えてみましょう。
分配法則の利用\[\begin{align*}&a\times c+b\times c=(a+b)\times c\\[5pt]&a\times b+a\times c=a\times(b+c)\end{align*}\]
これはいわば,「分配」の逆の「まとめる」という役割を果たしています。
※「まとめる」という考え方は,因数分解といい,中学3年生で詳しく学習します。
例題 分配法則を利用して,次の計算をしなさい。
(1) $3.14\times77+3.14\times 23$
(2) $(-32)\times25+28\times25$
こたえ
(1) 分配法則を逆向きに利用して
\[\begin{align*} 3.14\times77+3.14\times 23&=3.14\times(77+23)\\[5pt] &=3.14\times100\\[5pt] &=\underline{314} \end{align*}\]
(2) 分配法則を逆向きに利用して
\[\begin{align*} (-32)\times25+28\times25&=(-32+28)\times25\\[5pt] &=(-4)\times25\\[5pt] &=\underline{-100} \end{align*}\]
2. 数の集合と四則
数学における集合とは
数学では,範囲がはっきりと決まっているものの集まりを「集合」といいます。
ここで注意したいのは,日常会話で使う「集合」とは意味が違うということです。
例えばさいころの目の数といえば,1,2,3,4,5,6 とその範囲がはっきりしていますから集合といえます。
一方で,「安いスーパー」という言い方を考えてみましょう。同じスーパーでもある人は安いというし,また別の人は安くないということが十分に起こりえます。つまり「安いスーパー」というだけでは,どのお店がその集合に入るかを,みんなが同じように決めることができないのです。従って「安いスーパー」というのは,数学では集合にはなりません。
数の集合
これまでの学習で,小学校から使ってきた0以上の数から負の数にまで広げました。これを集合という見方で整理しておきましょう。
まず数全体という集合の中には,
…,-3,ー2,-1,0,1,2,3,…
という整数の集合が含まれます。そして整数の集合の一部分として正の整数の集合,すなわち
1,2,3,…
という自然数の集合が含まれます。図にまとめておきましょう。

その集合に含まれるいくつかの数が,例として書き込まれている。
同じ集合に属している2つの数で計算すると?
今,集合として
数(全体) 整数 自然数
という3つの集合を考えました。これらの集合において,同じ集合に属している2つの数を用いて四則計算を行うと,その結果も同じ集合に属するか,それともはみ出してしまうのかを考えてみましょう。
[1] 自然数の集合
- 加法
自然数どうしの足し算は,いつでも自然数です。 - 減法
自然数どうしの引き算は,引く数が大きいと負の数になり自然数ではありません。(例 $2-5=-3$) - 乗法
自然数どうしの掛け算は,いつでも自然数です。 - 除法
自然数どうしの割り算は,自然数にならない場合がります。(例 $2\div6=\dfrac13$)
以上の考察により,いつでも自然数ならば〇,そうでなければ×をつけると次のようにまとめることができます。
| 加法 | 減法 | 乗法 | 除法 | |
| 自然数の集合 | 〇 | × | 〇 | × |
[2] 整数の集合
- 加法
整数どうしの足し算は,いつでも整数です。 - 減法
整数どうしの引き算は,いつでも整数です。 - 乗法
整数どうしの掛け算は,いつでも整数です。 - 除法
整数どうしの割り算は,整数にならない場合があります。(例 $2\div6=\dfrac13$)
以上の考察により,いつでも整数ならば〇,そうでなければ×をつけると次のようにまとめることができます。
| 加法 | 減法 | 乗法 | 除法 | |
| 整数の集合 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
[3] 数の集合(すべての数の集合)
- 加法
数どうしの足し算は,いつでも数です。 - 減法
数どうしの引き算は,いつでも数です。 - 乗法
数どうしの掛け算は,いつでも数です。 - 除法
数どうしの割り算は,いつでも数です。ただし,0で割ることは考えないこととします。
以上の考察により,いつでも数(全体)ならば〇,そうでなければ×をつけると次のようにまとめることができます。
| 加法 | 減法 | 乗法 | 除法 | |
| 数(全体)の集合 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
以上の3つをまとめておきましょう。
| 加法 | 減法 | 乗法 | 除法 | |
| 自然数の集合 | 〇 | × | 〇 | × |
| 整数の集合 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
| 数(全体)の集合 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |

発展的補足
数全体の集合は,四則計算が自由に行えます。これを難しい用語を用いて述べると「数全体の集合は四則計算で閉じている」といいます。逆に閉じていないというのはどういうことでしょうか。
自然数しか知らない宇宙人がいたとしましょう。この宇宙人は,加法と乗法はいつでも計算できますが,減法と除法は数字によっては計算できません。$2-5$ といわれても,$-3$ といった負の数を知りませんから「答えはない」となってしまいます。$3\div6$ も同様です。この宇宙人は $\dfrac12$ といった分数を知らないのですから。このとき,自然数の集合は,加法と乗法については閉じていますが,減法と除法については閉じていないという言い方をするのです。
3. 素因数分解
自然数のうち,1とその数以外に約数にもたない数を素数(そすう)といいます。ただし1は素数に含めません。
例えば
- 2の約数は,1と2ですから素数です。
- 3の約数は,1と3ですから素数です。
- 4の約数は,1,2,4の3つあり,1と4の他に,2という約数をもちますから,素数ではありません。
- 6も約数が1,2,3,6というように4つあり,1と6以外に,2や3という約数をもちますから,素数ではありません。
素数を,小さい方から順に列挙すると
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, …
となります。
素数は,2だけが偶数で,他はすべて奇数です。
また,素数は無数に存在していることが知られています。
自然数を素数の積に表す
例えば,12という自然数は
12=2×6
と表すことができますが,6は更に 2×3 と表せますから,12は
12=2×2×3
というように表すことができます。そして,もうこれ以上は細かく積の形に表すことができません。なぜなら,使われている2と3は素数だからです。
このように,自然数を素数だけの積の形で表すことを素因数分解(そいんすうぶんかい)するといいます。素因数分解の例を見ておきましょう。
素因数分解の例
$4=2^2$
$6=2\times3$
$8=2^3$
$10=2\times5$
$12=2^2\times3$
$14=2\times7$
$15=3\times5$
$16=2^4$
$\vdots$
素因数分解のやり方
ある自然数を素因数分解したときは,図のように,割れる数でどんどん割って,値を小さくしていきます。
例 180

180÷2=90
90÷2=45
45÷3=15
15÷3=5(ここで終わり)
よって180の素因数分解は,緑色の部分にある数を全部掛けて
$180=2^2\times3^2\times5$
と求めることができます。
補足

この例では,180を小さな素数から順に割っていきましたが,小さな数から順に割る必要はなく,また素数で割る必要もありません。例えば図のように計算すると,
180=10×9×2
と表せます。10や9は素数ではないのでこの状態では素因数分解とはいえませんが,10や9はそれぞれ
$10=2\times5$, $9=3^2$
と書き直せるので,
$180=(2\times5)\times3^2\times2=2^2\times3^2\times5$
というようにして素因数分解ができます。
素因数分解の必要性
中学校の数学を学んでいく上で,素因数分解が必要だと感じられる場面の代表が,最大公約数と最小公倍数を考えるときです。
最大公約数を考える場面の例:分数の約分
例えば $\dfrac{120}{168}$ という分数を約分することを考えます。
120と168を素因数分解すると
$120=2^3\times3\times5$
$168=2^3\times3\times7$
となります。この2つの数に共通するのは
$2^3\times3=24$
です。従って120と168の最大公約数は24です。よって分数は
$\dfrac{12}{168}=\dfrac{24\times5}{24\times7}=\dfrac57$
となります。
最小公倍数を考える場面の例:分数の通分
例えば $\dfrac1{24}+\dfrac1{60}$ という計算を考えます。
24と60を素因数分解すると,
$24=2^3\times3=(2^2\times3)\times2$
$60=2^2\times3\times5=(2^2\times3)\times5$
となります。この2つの数に共通する $2^2\times3$ と,それぞれの残りの部分を掛けると
$(2^2\times3)\times2\times5=120$
となり,24と60の最小公倍数が120であるとわかります。よってこの分数計算は
\[\dfrac1{24}+\dfrac1{60}=\dfrac5{120}+\dfrac2{120}=\dfrac7{120}\]
となります。
以上のように,自然数を素因数分解をすることで,最大公約数や最小公倍数が求めやすくなるのです。

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1.正の数と負の数
2.加法と減法
3.加法の計算法則
4.乗法と除法
5.乗法の計算法則
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