高校数学[総目次]
数学Ⅱ 第5章 指数関数・対数関数
スライド | ノート | 問題 | |
1. 指数の拡張 | |||
2. 指数関数 | |||
3. 対数とその性質 | |||
4. 対数関数 | |||
5. 常用対数 |

5.常用対数
5.1 常用対数とは
logax の a を底(てい)といったが,この底が10である場合を特別に常用対数と呼んでいる.常用対数の応用は専ら自然数の桁数に関する問題と,小数第 n 位の数字に関する問題である.log10x のいくつかの値がどんな数学Ⅱの教科書の巻末にも表としてまとめられている.

5.2 常用対数の応用1(桁数)
自然数の桁数を知るには?
530 という自然数を考えてみよう.5を30個も掛けるのだから,相当に大きな数であることは間違いないが,一体何桁の自然数なのであろうか?もう少し小さな桁数についての考察を深めたのちに,この問題を考えることとしよう.
例えば,2桁の自然数といえば10以上99以下の自然数のことを指す.n を自然数として式で表すと,10≦n<100 である.右辺を「≦99」から「<100」に書き換えた理由はすぐ後に明らかになる.
10≦n<100 の各辺の常用対数をとると,底の10が1より大きいので,対数関数の単調性により不等号の向きを保存したまま log1010≦log10n<log10100,すなわち
1≦log10n<2
となる.従って
n が2桁 ⟹ 1≦log10n<2
となることがわかった.
ここで「n<100」という記述を選んだことに,ひとまず留意しておきたい.「n≦99」とした途端,常用対数を取った際に log1099 となってしまい,もはや簡単な式にはならない.このわずかな数値選択の違いが,式の簡明さに決定的な差異をもたらすのである.
530 の桁数を知る核心は「逆」にあり
冒頭に提示した 530 の桁数を知る核心部分は,上の囲みの逆命題,すなわち
1≦log10n<2 ⟹ n が2桁
にある.これが真であることは,対数関数の単調性からいえるのであって,下のグラフを見れば,より理解が深まるであろう.

上の2つの囲みから,
n が2桁の自然数 ⟺1≦log10n<2
が成り立つ.2桁の自然数の常用対数をとると,漏れなく1以上2未満に写され,逆に常用対数の値が1以上2未満となる自然数は,例外なく2桁の自然数である.自然数 n の桁数が,常用対数をとるという操作で計算可能となるのは,まさにこの同値な言いかえができることによっている.
一般に次が成り立つ:
自然数の桁数と常用対数
自然数 n の桁数が N
⟺N−1≦log10n<N
念のための注意
log10n の値が「1.⋯」となった場合,この1につられて n を1桁の数と判断してはいけない.101(=10) は2桁の数, 102(=100) は3桁の数である.

冒頭の問題をここで解決しておこう.
例題1 530 の桁数を求めよ.ただし,log102=0.3010 とする.
答

常用対数という装置に自然数を通すとき,そこに現れる値は,まるでその数がひそかに抱え込んでいた桁数という構造の,解読されることのなかった鍵のようにも思えてくる.数とは本来,沈黙を装ったまま形を与えられる存在だが,常用対数に変換されたその姿には,どこか告白にも近い気配が漂っている.
5.3 常用対数の応用2(小数第 n 位)
0と1の間の数で,小数第2位に初めて0以外の数字が現れる数 p を考えよう.具体的には 0.023 や 0.0514 などである.これらの数はもれなく 0.01≦p<0.1 の範囲に含まれている.すると対数関数の単調性により,この各辺の常用対数をとると,底の10が1より大きいから不等号の向きが保存されて log100.01≦log10p<log100.1,すなわち
−2≦log10p<−1 ⋯ ①
となる.逆に①の関係を満たす p はすべて小数第2位に初めて0以外の数字が現れる.すなわち
p は小数第2位に初めて0以外の数 ⟺−2≦log10p<−1
がいえる.この辺りの事情は常用対数を用いて自然数の桁数を考えたときと全く同じで,対数関数の単調性からいえることであり,下のグラフを見れば理解が深まる.

一般には次が成り立つ:
小数第 N 位と常用対数
0と1の間の実数 p について
p は小数第 N 位に初めて0以外の数が現れる
⟺−N≦log10p<−N+1
念のための注意
log10p の値が「−1.⋯」となった場合,p は小数第2位に初めて0以外の数が現れる数であるということである.−2≦−1.⋯<−1 であるから,上の N は 2 である.数直線をイメージして考えると間違いが少ない.


例題2 0.510 は小数第何位に初めて0でない数字が現れるか.ただし,log102=0.3010 とする.
答

5.4 常用対数の応用3(最高位の数)
5.1節で常用対数を用いることで自然数の桁数が計算できることがわかった.しかし実はもっと詳細な情報も常用対数を用いて得ることができるのである.その1つが最高位の数である.例えば,3桁の数789の最高位の数は7であり,5桁の数98765の最高位の数は9であるが,この7とか9といった数字を常用対数を利用して求めることができる.ただしそのためには,予めその数の常用対数の値がわかっていなければならない.(わかっていない場合はそれを計算するところから始めなければならない.)
例題3 530 の最高位の数を求めよ.ただし,log102=0.3010, log103=0.4771 とする.