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高校数学[総目次]

数学Ⅱ 第1章 式と証明

  スライド ノート 問題
1. 整式の除法      
2. 分数式      
3. 恒等式      
4. 等式の証明      
5. 不等式の証明      

2. 分数式

2.1 分数式の計算

 $\dfrac52$ や $-\dfrac43$ を分数と呼んだように,$\dfrac{x^2-1}{x+2}$ のような式を分数式という.分数式の取り扱いは,分数の場合とほぼ同じである.

 分数では$\dfrac{18}{24}=\dfrac34$ という具合に公約数で約分ができたが,分数式では公約式とでもいうべき共通因数で約分することができる.

分数式の基本性質 $A$~$D$を整式とする.(ただし$C\neq0,D\neq0$)\begin{align*}
&\frac AB=\frac{A\times C}{B\times C}\\
&\frac AB=\frac{A\div D}{B\div D}
\end{align*}

 $\dfrac{x^3-1}{x^2+x-2}=\dfrac{(x-1)(x^2+x+1)}{(x+2)(x-1)}=\dfrac{x^2+x+1}{x+2}$

コラム $\dfrac{x+2}{x+3}=\dfrac23$ はなぜ起こるか?

 この計算は初学者が非常によくやる誤りである.$\dfrac{10+2}{10+3}$ ならば,これを $\dfrac23$ としてしまう人はほとんどいない.整数のみではほぼ起こらないような計算エラーが,分数式で起こってしまうのは何故だろうか?

①「分数の約分」と「文字式の約分」の混同

  • 分母子に同じ数があれば約分できるということは小学生の時から知っている.例えば $\dfrac{10}{15}$ を $\dfrac{5\times2}{5\times3}$ と書いて,5で約分するなどである.しかし $x+2$ と $x+3$ はともに $x$ を含んでいるが,同じ式ではない.

②計算ルールの勝手な拡大解釈

  • 例えば $\dfrac{2x}{3x}=\dfrac23$ という約分の経験があると,上の計算も同じようにできるという,計算ルールの勝手な拡大解釈が考えられる.見た目が似ているというだけで,同じことができるという思い込みである.

③計算ルールの機械的な適用

  • 計算手順をその「意味」ではなく,「パターン」として覚えようとしている場合に,この手のエラーが起こりうる.分母子に同じものがあれば消すという「作業」を無意識のうちに行っており,何故消せるのかという「意味」は意識されない.パターンによって,計算をはじめとする数学の学習を乗り越えようとすると,数や文字のわずかな設定変更で全く違うパターンと認識され,手がつかないという事態がよく見受けられる.

 分数と分数式の約分は「完全に同じものがあれば約分できる」という点で共通している.その同じものというのは,分母・分子それぞれを積の形で表現したときの1つ1つの構成要素(=因数)を指す.

  • 分数の場合は,素因数分解によって約分できるものを見つけ出す.
  • 分数式の場合は,因数分解によって約分できるものを見つけ出す.

 つまり,「約分できるかどうか」は,必ず因数分解(または素因数分解)をしてから判断することが大切である.

「因数分解はできている?」

 分数式を約分する前にこう問うてみることで上記エラーを防ぐことができる.

 分数式どうしの計算は,ほとんど分数の場合と同じである.足したり引いたりできるのは分母の式が同じ場合のみであって,異なっている場合はいわゆる通分の作業が必要になる.一方,分数式を掛けたり割ったりするときは,分数の場合と全く同じ取り扱いである.

分数式の四則\begin{align*} &\frac AC+\frac BC=\frac{A+B}C\\ &\frac AC-\frac BC=\frac{A-B}C\\ &\frac AB\times\frac CD=\frac{AC}{BD}\\ &\frac AB\div\frac CD=\frac AB\times\frac DC=\frac{AD}{BC} \end{align*}

  $\dfrac1{x^2+x}-\dfrac1{x^2-x-2}$

 $=\dfrac1{x(x+1)}-\dfrac1{(x+1)(x-2)}$

 $=\dfrac{x-2}{x(x+1)(x-2)}-\dfrac x{x(x+1)(x-2)}$

 $=\dfrac{(x-2)-x}{x(x+1)(x-2)}$

 $=-\dfrac2{x(x+1)(x-2)}$

 整式(単項式と多項式)と分数式をあわせて有理式という.

注意

① 例えば,$\dfrac{x+5}2$ は $\dfrac 12x+\dfrac52$ と書けるから,分数式ではなく整式である.

② 例えば,$\dfrac{x-1}{x^2-1}$ は約分を行って $\dfrac 1{x+1}$ とできるが, \[\frac{x-1}{x^2-1}=\frac 1{x+1}\ \ \cdots(*)\] と書くとき,両辺の $x$ を 1 とおくと,左辺は分母が0となって意味を持たないが,右辺は $\dfrac12$と なり意味を持つ.このように,$(*)$式の等号「$=$」は,$x\neq1$ が前提となっている.

2.2 仮分数式→整式+真分数式

 $\dfrac52$ のような分数を仮分数(かぶんすう)と呼んだ.この場合,主に小学校では $\dfrac52=2\dfrac12$ のように(分子の数)<(分母の数) となるような変形を行って,この形の分数を帯分数と呼んだ.

 分数式の場合にも同様の状況が考えられて,(分子の次数)≧(分母の次数) となっている仮分数式とでもいうべきものがある.これを

(分子の次数)<(分母の次数)

という形に変形することができる.(分子の次数)<(分母の次数)である分数式を真分数式(しんぶんすうしき)という.

 仮分数式を(整式)+(真分数式)に書き換える際,例えば帯分数 $2\dfrac12$ では $2+\dfrac12$ の「+」を省略して書くことが許されたが,分数式の場合には「+」の省略が許されない.

例題1 関数 $y=\dfrac {2x+3}{x-1}$ $(2\leqq x\leqq 3)$ の値域を求めよ.

ポイント
  割り算を行って,
   (整式)+(真分数式)
 の形にする.

こたえ