高校数学[総目次]

数学Ⅱ 第1章 式と証明

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1. 整式の除法 [無料]    
2. 分数式 [無料]    
3. 恒等式 [無料]   [会員]
4. 等式の証明 [無料]    
5. 不等式の証明 [無料]    

演習問題

問題1【発展】
 定数 $a,\ b,\ c,\ d$ に対して,平面上の点$(p,\ q)$ を点 $(ap+bq,\ cp+dq)$ に移す操作を考える.ただし,$(a,\ b,\ c,\ d)\ne(1,\ 0,\ 0,\ 1)$ である.$k$ を0でない定数とする.放物線 $C:y=x^2-x+k$ 上のすべての点は,この操作によって $C$ 上に移る.$a,\ b,\ c,\ d$ を求めよ.

(一橋大)

問題1【発展】

 定数 $a,\ b,\ c,\ d$ に対して,平面上の点$(p,\ q)$ を点 $(ap+bq,\ cp+dq)$ に移す操作を考える.ただし,$(a,\ b,\ c,\ d)\ne(1,\ 0,\ 0,\ 1)$ である.$k$ を0でない定数とする.放物線 $C:y=x^2-x+k$ 上のすべての点は,この操作によって $C$ 上に移る.$a,\ b,\ c,\ d$ を求めよ.

(一橋大)

 この問題で必要な知識は教科書の範囲から一歩も出ませんが,難関大入試問題ではこのように一見して問題設定が複雑そうで,どう対処してよいかわからなくなりがちです.この問題文で注目すべき箇所は「放物線 $C:y=x^2-x+k$ 上のすべての点は,この操作によって $C$ 上に移る」という記述です.この「すべて」とか「あらゆる」などの表現は恒等式との親和性が高いです.

解答

 点 $(p,\ q)$ が $C$ 上にあるとき

$q=p^2-p+k$ …①

が成り立つ.またこの点を題意の操作で移動した点 $(ap+bq,\ cp+dq)$ も $C$ 上にあるとき

$cp+dq=(ap+bq)^2-(ap+bq)+k$ …②

が成り立つ.$a,\ b,\ c,\ d$ は定数であることに注意すると,①を②に代入して $q$ を消去し,得られた $p$ についての等式は,あらゆる $p$ について成り立つから $p$ についての恒等式である.

恒等式とわかれば,このあとの基本解法は係数比較です.

 ②の右辺における $p$ の最高次の項は,$b^2q^2$ から得られる $p^4$ の項で,

$b^2q^2=b^2(p^2-p+k)^2=b^2p^4+(p$ の3次以下の項)

となるからその係数は $b^2$ である.一方,②の左辺は $p$ の2次式だから,これが $p$ についての恒等式のとき,$b^2=0$ である.よって $b=0$.従って②は

\[cp+dq=(ap)^2-ap+k\]

となる.左辺の $q$ に①を代入すると

\[cp+d(p^2-p+k)=(ap)^2-ap+k\]

\[dp^2+(c-d)p+kd=a^2p^2-ap+k\]

 係数を比較して

\[d=a^2,\ c-d=-a,\ kd=k\]

 $k\ne0$ より $d=1$ よって $a=\pm1$

1° $a=1$ のとき

 $c=0$ となるから $(a,\ b,\ c,\ d)=(1,\ 0,\ 0,\ 1)$ (不適)

2° $a=-1$ のとき

 $c=2$ となるから $(a,\ b,\ c,\ d)=(-1,\ 0,\ 2,\ 1)$ (適する)

 以上により $(a,\ b,\ c,\ d)=(-1,\ 0,\ 2,\ 1)$