高校数学[総目次]
数学Ⅱ 第1章 式と証明
| スライド | ノート | 問題 | |
| 1. 整式の除法 | |||
| 2. 分数式 | |||
| 3. 恒等式 | |||
| 4. 等式の証明 | |||
| 5. 不等式の証明 |

3.恒等式
演習問題
問題1【標準】
$a, b, c$ は実数で,すべての実数 $x$ に対して
\[a(x\!-\!1)(x\!-\!2)\!+\!b(x\!-\!2)(x\!-\!3)\!+\!c(x\!-\!3)(x\!-\!1) \!=\! x^2 \!+\! 1\]
が成り立つとき,$a, b, c$ の値を求めよ.
問題2【発展】
定数 $a,\ b,\ c,\ d$ に対して,平面上の点$(p,\ q)$ を点 $(ap+bq,\ cp+dq)$ に移す操作を考える.ただし,$(a,\ b,\ c,\ d)\ne(1,\ 0,\ 0,\ 1)$ である.$k$ を0でない定数とする.放物線 $C:y=x^2-x+k$ 上のすべての点は,この操作によって $C$ 上に移る.$a,\ b,\ c,\ d$ を求めよ.
(一橋大)

両辺を展開して係数比較します.
解答
左辺 $=a(x^2-3x + 2) + b(x^2-5x + 6) + c(x^2-4x + 3)$
$= (a + b + c)x^2 + (-3a -5b -4c)x + (2a + 6b +3c)$
右辺 $=x^2 + 1$
よって両辺の係数を比較すると
\[\begin{cases}
a + b + c = 1 \\[5pt]
-3a -5b -4c = 0 \\[5pt]
2a + 6b +3c = 1
\end{cases}\]
この連立方程式を解くと
$a = 5$,$b = 1$,$c =-5$
別解
この両辺の $x$ を3とおくと,
\[2a=10\ \ \therefore a=5\]
この両辺の $x$ を1とおくと,
\[2b=2\ \ \therefore b=1\]
この両辺の $x$ 2とおくと,
\[-c=5\ \ \therefore c=-5\]
逆に,$a = 5$,$b = 1$,$c =-5$ のとき,左辺を計算すると $x^2+1$ となるから,十分である.
以上により $a = 5$,$b = 1$,$c =-5$
この問題で必要な知識は教科書の範囲から一歩も出ませんが,難関大入試問題ではこのように一見して問題設定が複雑そうで,どう対処してよいかわからなくなりがちです.この問題文で注目すべき箇所は「放物線 $C:y=x^2-x+k$ 上のすべての点は,この操作によって $C$ 上に移る」という記述です.この「すべて」とか「あらゆる」などの表現は恒等式との親和性が高いです.
解答
点 $(p,\ q)$ が $C$ 上にあるとき
$q=p^2-p+k$ …①
が成り立つ.またこの点を題意の操作で移動した点 $(ap+bq,\ cp+dq)$ も $C$ 上にあるとき
$cp+dq=(ap+bq)^2-(ap+bq)+k$ …②
が成り立つ.$a,\ b,\ c,\ d$ は定数であることに注意すると,①を②に代入して $q$ を消去し,得られた $p$ についての等式は,あらゆる $p$ について成り立つから $p$ についての恒等式である.
恒等式とわかれば,このあとの基本解法は係数比較です.
②の右辺における $p$ の最高次の項は,$b^2q^2$ から得られる $p^4$ の項で,
$b^2q^2=b^2(p^2-p+k)^2=b^2p^4+(p$ の3次以下の項)
となるからその係数は $b^2$ である.一方,②の左辺は $p$ の2次式だから,これが $p$ についての恒等式のとき,$b^2=0$ である.よって $b=0$.従って②は
\[cp+dq=(ap)^2-ap+k\]
となる.左辺の $q$ に①を代入すると
\[cp+d(p^2-p+k)=(ap)^2-ap+k\]
\[dp^2+(c-d)p+kd=a^2p^2-ap+k\]
係数を比較して
\[d=a^2,\ c-d=-a,\ kd=k\]
$k\ne0$ より $d=1$ よって $a=\pm1$
1° $a=1$ のとき
$c=0$ となるから $(a,\ b,\ c,\ d)=(1,\ 0,\ 0,\ 1)$ (不適)
2° $a=-1$ のとき
$c=2$ となるから $(a,\ b,\ c,\ d)=(-1,\ 0,\ 2,\ 1)$ (適する)
以上により $(a,\ b,\ c,\ d)=(-1,\ 0,\ 2,\ 1)$
