高校数学[総目次]
数学Ⅱ 第1章 式と証明
| スライド | ノート | 問題 | |
| 1. 整式の除法 | |||
| 2. 分数式 | |||
| 3. 恒等式 | |||
| 4. 等式の証明 | |||
| 5. 不等式の証明 |

5. 不等式の証明
5.1 不等式の証明
$A>B$ の証明の仕方
① $A-B=\cdots >0$ を示す.
② 有名不等式の利用.
例題1 $a\!>\!b,\ c\!>\!d$ のとき,$a\!+\!c\!>\!b\!+\!d$ を示せ.
$a>b,c>d$ より $a-b>0$,$c-d>0$.
よって証明すべき不等式 $a+c>b+d$ について,
\[\begin{align*}
(\mbox{左辺})-(\mbox{右辺})&=(a+c)-(b+d)\\[5pt]
&=(a-b)+(c-d)\\[5pt]
&>0+0\\[5pt]
&=0
\end{align*}\]
■
例題2 不等式 $|a\!+\!b|\!\leqq\!|a|\!+\!|b|$ を示せ.
確認 $a\geqq0$,$b\geqq0$ のとき,
\[a\geqq b\iff a^2\geqq b^2\]
\[\begin{align*}
(\mbox{右辺})^2-(\mbox{左辺})^2&=(|a|+|b|)^2-|a+b|^2\\[5pt]
&=(|a|^2+2|a||b|+|b|^2)-(a^2+2ab+b^2)\\[5pt]
&=(a^2+2|a||b|+b^2)-(a^2+2ab+b^2)\\[5pt]
&=2(|a||b|-ab)\\[5pt]
&\geqq 0
\end{align*}\]
\[\therefore (\mbox{左辺})^2\leqq(\mbox{右辺})^2\]
左辺,右辺共に非負の数であるから,
\[(\mbox{左辺})\leqq(\mbox{右辺})\]
等号成立は,$a$ と $b$ が共に0以上,または共に0以下のとき.
■

5.2 相加平均と相乗平均
相加・相乗平均の関係式 $a>0,b>0$ のとき,\[\frac{a+b}2\geqq\sqrt{ab}\] 等号成立は,$a=b$ のとき.
証明
$a>0,b>0$ であるから,
\[\begin{align*}
&\sqrt{ab}=\sqrt a\sqrt b\\[5pt]
& a=(\sqrt a)^2\\[5pt]
&b=(\sqrt b)^2
\end{align*}\]
が成り立つことに注意して,
\[\begin{align*}
(\mbox{左辺})-(\mbox{右辺})&=\frac{a+b}2-\sqrt{ab}\\[5pt]
&=\frac{a+b-2\sqrt{ab}}2\\[5pt]
&=\frac{(\sqrt a)^2-2\sqrt a\sqrt b+(\sqrt b)^2}2\\[5pt]
&=\frac{(\sqrt a-\sqrt b)^2}2\ \ \cdots\mbox{①}\\[5pt]
&\geqq 0
\end{align*}\]
等号成立,即ち (左辺)$-$(右辺)$=0$ となるのは,①の分子が0となるときで,$a>0,b>0$ により
\[\sqrt a-\sqrt b=0\iff \sqrt a=\sqrt b\iff a=b\]
となるから $a=b$ のときである.
■
補足
① $\dfrac{a+b}2$,$\sqrt{ab}$ をそれぞれ $a$ と $b$ の相加平均,相乗平均という.
② しばしば分母の2を払った
\[x+y\geqq2\sqrt{xy}\]
の形で用いられる.
注意
相加・相乗平均の関係式を用いる際は,「$a>0, b>0$」の確認を必ず行う.
例題 $x\!>\!0$ のとき,不等式 $x\!+\!\dfrac1x\!\geqq\! 2$ を示せ.
$x>0,\ \dfrac1x>0$ であるから,相加・相乗平均の関係により,
\[x+\frac 1x\geqq2\sqrt{x\cdot\frac1x}=2\]
等号成立は,
\[\begin{align*}
x=\frac1x&\iff x^2=1\ \ (\because x>0)\\[5pt]
&\iff x=1\ \ (\because x>0)
\end{align*}\]
により,$x=1$ のとき.
■
発展的注意
相加・相乗平均の関係の良さは,評価精度の高さ,即ち等号が成立するケースがある,という点にある.($x^2\geqq -1$ と評価したところで,$x^2=-1$ となる実数 $x$ はない.)
この評価の正確さから,しばしば関数の最大・最小問題に利用されるが,最大値,または最小値が求まるのは,相加平均,または相乗平均が定数になる場合であって,次のような使い方は正しくない:
例題 $x\!>\!0$ のとき,関数 $f(x)\!=\!x^2\!+\!\dfrac1x$ の最小値は?
こたえ(??)
$x^2>0,\ \dfrac 1x>0$ であるから,相加・相乗平均の関係により, \[x^2+\frac1x\geqq2\sqrt{x^2\cdot\frac1x}=2\sqrt x\] 等号成立は,$x^2=\dfrac1x$,即ち $x^3=1$ のときだから,$x=1$.(ここまでは正しい.)
よって,$x^2+\dfrac1x\geqq2\sqrt 1=2$ より,最小値は2(??)(← 正しくない.)

