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高校数学[総目次]

数学Ⅲ 第5章 2次曲線

  スライド ノート
1. 放物線 [会員]  
2. 楕円 [会員]  
3. 双曲線 [会員]  
4. 2次曲線の平行移動 [会員]  
5. 2次曲線と直線 [会員]  
6. 2次曲線の性質 [会員]  
7. 曲線の媒介変数表示 [会員]  
8. 極座標と極方程式 [会員]  

2.楕円

 楕円というと,随分と身近な図形であるが,数学的にはどういう図形を楕円と呼ぶのか確認していこう.

2.1 楕円の方程式

 2定点F,F$’$ からの距離の和が一定である点Pの軌跡を楕円という.

 このとき2つの定点F,F$’$ を焦点という.

楕円の方程式

 楕円の方程式がどのように表されるのか見ていこう.条件として,

  • 焦点:F$(c,0)$,F’$(-c,0)$
  • 距離の和:$2a$ (ただし,$a>c>0$)

とする.楕円上の点をPとすると,$\rm{FP+F\,’P}=2a$ である.この式から始めて楕円の方程式を導くまでの途中,2度の平方が行われる.一般に等式を2乗すると同値性が損なわれるが,実は逆も成り立つ.この点について詳しくはスライド で解説する.

\[\begin{align*} &{\rm FP+F\,’P}=2a\ \ \cdots\mbox{①}\\[5pt] \iff &\sqrt{(x-c)^2+y^2}+\sqrt{(x+c)^2+y^2}=2a\\[5pt] \iff &\sqrt{(x-c)^2+y^2}=2a-\sqrt{(x+c)^2+y^2}\\[5pt] \Longrightarrow\ &(x-c)^2+y^2=\left(2a-\sqrt{(x+c)^2+y^2}\right)^2\\[5pt] \end{align*}\]

 両辺を展開して整理すると,

\[\begin{align*} &a\sqrt{(x+c)^2+y^2}=a^2+cx\\[5pt] \Longrightarrow\ &a^2\{(x+c)^2+y^2\}=(a^2+cx)^2\\[5pt] \end{align*}\]

 よって,

\[(a^2-c^2)x^2+a^2y=a^2(a^2-c^2)\]

 ここで,$\sqrt{a^2-c^2}=b$ とおくと,

\[b^2x^2+a^2y^2=a^2b^2\]

$\therefore \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\ \ \cdots$ ②

 従って条件①を満たす点は,曲線②上にある.逆に曲線②上の任意の点は,$c=\sqrt{a^2-b^2}$ とおくことで条件①を満たす.(詳しくはスライド で.)

 方程式②を,楕円の方程式の標準形という.

楕円の方程式 焦点が F$(c,0)$,F’$(-c,0)$,焦点からの距離の和が $2a$ (ただし,$a>c>0$) である楕円の方程式は,$\sqrt{a^2-c^2}=b$ とおくと
\[\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\]

● 別の求め方

 先の導出法は大抵どの教科書にも採用されている方法であるが,長いルートの式を含んだかなり複雑な計算となっている.実は少しテクニカルだがもっとラクに計算する方法が存在する.スタートは上と同じで

${\rm FP+F\,’P}=2a$ …①

 そして次が計算をラクにする重要ポイントである.それは ${\rm FP^2-F\,’P^2}$ を計算するのである.

\[\begin{align*} &{\rm FP^2-F\,’P^2}\\[5pt] =&\{(x-c)^2+y^2\}-\{(x+c)^2+y^2\}\\[5pt] =&-4cx \end{align*}\]

であるから,左辺を因数分解して

\[({\rm FP+F\,’P})({\rm FP-F\,’P})=-4cx\]

 ①から ${\rm FP+F\,’P}=2a$ であったから,代入して両辺を $2a$ で割ると

${\rm FP-F\,’P}=-\dfrac{2cx}a$ …②

 すると,(①$+$②)$\div$2 より,

\[\begin{align*} {\rm FP}&=a-\frac{cx}a\\[5pt] \therefore {\rm FP^2}&=\left(a-\frac{cx}a\right)^2\\[5pt] (x-c)^2+y^2&=a^2-2cx+\frac{c^2}{a^2}x^2\\[5pt] \frac{a^2-c^2}{a^2}x^2+y^2&=a^2-c^2 \end{align*}\]

 $a>c>0$ より,$a^2-c^2>0$ であるから,$b=\sqrt{a^2-c^2}$ とおくと,

\[\frac{b^2}{a^2}x^2+y^2=b^2\]

 両辺を $b^2$ で割って

\[\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1\]

発展的補足

 平面上の2点 $(x_1,\ y_1),\ (x_2,\ y_2)$ の距離は,$\sqrt{(x_1-x_2)^2+(y_1-y_2)^2}$ で計算され,通常ルート $\sqrt{\hspace{6mm}}$ は外れないことが多い.ところが 放物線 のときがそうであったように,楕円の場合も楕円上の任意の点と,この楕円の一方の焦点までの距離は,例外的にルートがつかない式として表すことができるのである.

 楕円上の任意の点を $(x_1,\ y_1)$ とする.$\dfrac{{x_1}^2}{a^2}+\dfrac{{y_1}^2}{b^2}=1$ より ${y_1}^2=b^2\left(1-\dfrac{{x_1}^2}{a^2}\right)$ であることに注意すると,例えば焦点 $(c,\ 0)$ までの距離は,

\[\begin{align*} &\sqrt{(x_1-c)^2+{y_1}^2}\\[5pt] =&\sqrt{({x_1}^2-2cx_1+c^2)+{y_1}^2}\\[5pt] =&\sqrt{({x_1}^2-2cx_1+c^2)+b^2\left(1-\dfrac{{x_1}^2}{a^2}\right)}\\[5pt] =&\sqrt{\dfrac{a^2-b^2}{a^2}{x_1}^2-2cx_1+b^2+c^2}\\[5pt] =&\sqrt{\dfrac{c^2}{a^2}{x_1}^2-2cx_1+a^2}\ \ (\because\ c=\sqrt{a^2-b^2})\\[5pt] =&\sqrt{\left(\dfrac ca{x_1}-a\right)^2}\\[5pt] =&\left|\dfrac ca{x_1}-a\right| \end{align*}\]

と表される.すなわち楕円上の任意の点 $(x_1,\ y_1)$ と焦点 $(c,\ 0)$ までの距離 $\sqrt{(x_1-c)^2+{y_1}^2}$ は,$\left|\dfrac ca{x_1}-a\right|$ としてルートがつかない式で表されるのである.もう一方の焦点 $(-c,\ 0)$ までの距離は,この式の $c$ を $-c$ に置き換えればよい.

 これで放物線と楕円の場合について,曲線上の任意の点から焦点までの距離がルートを含まない式として表すことができることを見たが,残る双曲線にも焦点と呼ばれる点があり,この点から双曲線上の点までの距離は,ルートの中身が同じように平方式となって,ルートが外れるのである.この事実は難関大入試問題で,曲線上の2点と焦点を結んだ三角形を考えさせる問題などで活躍する場合がある.

楕円の性質

 楕円$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\ (a>b>0)$ において,

  • $y=0$ のとき,$x=\pm a$
    $x=0$ のとき,$y=\pm b$
  • $\sqrt{a^2-c^2}=b$ とおいたから,$c=\pm\sqrt{a^2-b^2}$

  $c$ は楕円の焦点の $x$ 座標であったことに注意しよう.この楕円の性質をまとめると次のようになる.

楕円の性質楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\ \ (a>b>0)$ において,

  • 焦点は $x$ 軸上で,
       F$(\sqrt{a^2-b^2},\ 0)$,F$\,'(-\sqrt{a^2-b^2},\ 0)$
  • 座標軸との交点(頂点)は
       $(a,\ 0),(-a,\ 0),(0,\ b),(0,\ -b)$
  • 長軸の長さ $2a$,短軸の長さ $2b$
    長軸と短軸の交点(楕円の中心) $(0,\ 0)$
  • $x$ 軸,$y$ 軸,原点に関して対称
  • 楕円上の任意の点から焦点までの距離の和は $2a$

例題 楕円 $\dfrac{x^2}9+\dfrac{y^2}4=1$ の焦点,頂点,長軸・短軸の長さ,中心を求めよ.

2.2 焦点が $y$ 軸上にある楕円

 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\ (b>a>0)\ \cdots$① のとき,この曲線を直線 $y=x$ に関して対称移動したグラフをもつ方程式は,

\[\frac{x^2}{b^2}+\frac{y^2}{a^2}=1\ \ (b>a>0)\]

である.これは $(\pm\sqrt{b^2-a^2},0)$ を焦点とし,焦点までの距離の和が $2b$ の楕円であったから,元に戻して考えると,①は焦点 $(0,\sqrt{b^2-a^2}),(0,-\sqrt{b^2-a^2})$ で,距離の和が $2b$ の楕円である.

$y$ 軸上に焦点をもつ楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\ (b>a>0)$ は,

  • 焦点 $(0,\ \sqrt{b^2-a^2}),\ \ (0,\ -\sqrt{b^2-a^2})$
  • 長軸は $y$ 軸上,短軸は $x$ 軸上にある.

例題 楕円 $\dfrac{x^2}4+\dfrac{y^2}{16}=1$ の焦点,長軸・短軸の長さを求め,グラフをかけ.

こたえ $\sqrt{16-4}=2\sqrt3$ より,焦点 $(0,2\sqrt3),\ (0,-2\sqrt3)$
    長軸の長さ:$2\times4=8$,短軸の長さ:$2\times2=4$

2.3 円と楕円

 円 $x^2+y^2=a^2$ 上の点を P$(s,t)\ (s^2+t^2=a^2\ \cdots$①)を,$y$ 軸方向に $\dfrac ba$ 倍した点を Q$(x,y)$ とする.

\[\left\{\begin{array}{l} x=s\\ y=\dfrac bat \end{array}\right. \ \ \therefore \left\{ \begin{array}{l} s=x\\ t=\dfrac aby \end{array}\right.\]

 これらを①に代入して

\[\begin{align*} x^2+\left(\frac aby\right)^2&=a^2\\[5pt] \therefore\ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}&=1 \end{align*}\]

 よって,点Qの軌跡は,楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$

まとめ(重要)

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