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高校数学[総目次]

数学Ⅱ 第2章 複素数と方程式

  スライド ノート 演習
1. 複素数      
2. 2次方程式の解と判別式      
3. 解と係数の関係      
4. 剰余の定理・因数定理      
5. 高次方程式      

2. 2次方程式の解と判別式

 このノートでは,方程式の係数や定数項は実数を仮定する.

2.1 解の公式

 xx の1次方程式 ax+b=0 (a0) はどんなものでも x=ba という具合に,方程式の解を係数 a,b を用いて簡単に書き表すことができた.このように方程式の係数を用いて書き表された解を解の公式という.

 1次方程式 ax+b=0 の解の公式

x=ba

 では2次方程式 ax2+bx+c=0 についてはどうか.1次方程式 ax+b=0 から見れば式自体がかなり複雑だが,1次方程式のときのように係数 a,b,c の式として解を書き表すことができるのであろうか?

 それを考える前にいくつかの2次方程式を実際に解いておこう.

例1 2x28=0

 変形して

x24=0(x+2)(x2)=0x=±2

例2 x24x5=0

 変形して

(x+1)(x5)=0x=1,5

 これらの例では因数分解によって解を導くことができたが,別の方法によっても解を導くことができる.

例1の別解

 変形して

x24=0x2=4x=±2

例2の別解

 変形して

x24x=5(x2)24=5(x2)2=9x2=±3x=2±3x=1, 5

 元の解き方に比べ,とりわけ例2では時間がかかったが,実はこの解き方の流れこそ2次方程式の解の公式を考える上でのヒントになるのだ.そこでこの解き方の流れをさらっておこう.

  解法の流れ

    x24x5=0
    x24x=5   (定数項を移項)
    (x2)24=5 (左辺を平方完成)
    (x2)2=9   (4 を移項)
    x2=±3   (平方根をとる)
    x=2±3    (2 を移項)

 この流れで一般の2次方程式 ax2+bx+c=0 の解を導いてみよう.

Q.  2次方程式 ax2+bx+c=0 の解を求めよ.

A.

 ax2+bx+c=0

 x2+bax+ca=0     (a で割る)

 x2+bax=ca      (ca を移項)

 (x+b2a)2b24a2=ca  (平方完成)

 (x+b2a)2=b24ac4a2  (b24a2 を移項)

 x+b2a=±b24ac2a  (平方根をとる)

 x=b±b24ac2a_  (b2a を移項)

重要な補足

 特に1次の係数が 2b のとき,すなわち ax2+2bx+c=0 のとき,解の公式を使って解を計算すると

x=2b±(2b)24ac2a=2b±2b2ac2a=b±b2aca_

となって計算が大幅に省力化できる.

2次方程式の解の公式

 2次方程式 ax2+bx+c=0 の解は,

x=b±b24ac2a

 また,ax2+2bx+c=0 のときは,

x=b±b2aca

アニメーション

例題 次の2次方程式を解け.
(1) x2+5x2=0
(2) 3x2x+1=0
(3) x2+6x3=0

こたえ

(1)

解答例を表示する

x=5±5241(2)21=5±332_

(2)

解答例を表示する

x=(1)±(1)243123=1±116=1±11i6_

(3)

解答例を表示する

x=3±321(3)1=3±12=3±23_

コラム 何故 ax2+2bx+c=0 の形の方程式に対して x=b±b2aca を使わずに,通常の x=b±b24ac2a を使う人が後を絶たないのか.

 すぐ上の例題(3) x2+6x3=0 は1次の係数が 2×3 と書けるので,簡便タイプの解の公式である x=b±b2aca を使って解いた.もちろん通常タイプの解の公式を使って解くこともできて,

x=6±6241(3)21=6±482=6±432=3±23

となる.しかし見ての通り,計算手順が長くなり,ルートを簡単にしたり約分したりと手間がかかる.ラクな上にミスも減らせつつ答えまでたどり着ける簡便タイプの解の公式の優位性は誰もが認めるところであろう.ところが!である.誠に不思議なことに,このような優位性をいくら説いてもなかなか簡便タイプの解の公式を使おうとしない人が後を絶たない.一体どうしてこのような不使用現象が起こるのだろうか?

原因① 極度のリスク回避

 簡易タイプの解の公式が記憶に定着していないことから生じる記憶違いへの不安から,この公式を思い切って使ってみる行動への移行を逡巡させている.いくら便利とはいえ,間違って覚えているかもしれない公式を使うリスクをとるよりは,遠回りでも安心して使える公式でという極度のリスク回避が働いているのではなかろうか.

原因② 認知フレームの固定化

 通常タイプの解の公式が「万能ツール」として脳内に強固に刷り込まれ,その結果新しい公式の存在を「例外処理」と認識し,学習優先順位を著しく下げている可能性が考えられる.「通常公式で全て解ける」という成功体験が変化への抵抗を生むのだ.

原因③ 心理的負荷の増大

 b が偶数かそうでないかという,新しい公式の導入に伴って生じる「判断コスト」や,公式を覚える心理的負担を回避したいという無意識の防御反応の現れの可能性が考えられる.

 興味深いことに,このような思考プロセスは「認知資源の節約」という概念と深く関連しているようだ.人間の脳は新しい情報を処理する際,既存の神経経路を再利用する傾向があり,数学的問題解決においても同様のメカニズムが働くようである.要するに過去に成功した経験を再利用することで思考の負担を減らそうとする,人間に本来備わっている力だという訳だ.このように簡便タイプの解の公式の不使用現象は,単なる「知識不足」ではなく,認知資源の最適配分を図る合理的な判断として解釈できる側面もあるようだ.

2.2 判別式

 次の3つの2次方程式を,解の公式を用いて解いてみよう.