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高校数学[総目次]

数学Ⅲ 第1章 極限

  スライド ノート 問題
1. 数列の極限 [無料]    
2. 無限等比数列 [無料]    
3. 無限級数      
4. 無限等比級数      
5. 関数の極限      
6. (sin x)/x の極限      
7. 関数の連続性      

5.0 いくつかの例

例題1 $\displaystyle{\lim_{x\to1}(x+1)}$ を求めよ.

 $\displaystyle{\lim_{x\to1}(x+1)}$ というのは,$x$ が1と異なる値を取りながら,限りなく1に近付くとき,$x+1$ がどのような値に近付いていくかを表したものである.ここで気を付けておかなければならないのは

\[x\to 1\]

の意味である.

$x\to1$ の意味~その1

 $x$ が1に近付くあらゆる近付き方が,この「$x\to1$」の表現に込められている.

 $x$ が1に近付くといってもその近付き方は無数にある.例えば

\[\begin{array}{ll}
1.1,\ 1.01,\ 1.001,\ 1.0001,\ \cdots &\to 1\\[5pt]
0.9,\ 0.99,\ 0.999,\ 0.9999,\ \cdots &\to 1\\[5pt]
1.1,\ 0.99,\ 1.001,\ 0.9999,\ \cdots &\to 1\\[5pt]
\hspace{20mm}\vdots&
\end{array}\]

などである.これら無数にある近付き方の総称が「 $x\to 1$ 」である.

$x\to1$ の意味~その2

 $x$ が1に近付くときには,$x=1$ 以外の値を取りながら近づく.

 1に近付くときには大きな値や小さな値,正の数や負の数など,どのような値を取りながら近づいてもよいのだが,ただひとつ,1だけは途中一度たりともとってはならない.「最終的には1になる」というのも間違いであるのは言うまでもない.「$x\to1$」に終わりはなく,いつまでも1と異なる値を取りながら1に近付き続けるのだ.

 以上の2点を今後も注意深く意識しながら考えなければならない.

 さて,$x\to1$ について,少し細かい話から始めたが,実際に例題の答えを導き出すには次のグラフを持ち出すまでもなく,

\[\lim_{x\to1}(x+1)=2\]

となることに違和感はないであろう.

例題1の答え $\displaystyle{\underline{\lim_{x\to1}(x+1)=2}}$

 しかしここでも注意しなければならないことがある.$\displaystyle\lim_{x\to1}(x+1)=2$ というのは, $x\to1$ のとき,関数 $x+1$ の値が2になるということを意味しない.正しくは「限りなく2に近付く」ということを意味する.次の例題2がこの状況の理解を助けてくれるであろう.

例題2 $\displaystyle{\lim_{x\to1}\dfrac{x^2-1}{x-1}}$ を求めよ.

 この分数関数は,分母に $x-1$ があるから $x-1\neq0$,すなわち $x=1$ では定義されない.しかし $x\neq1$ のところでは,

\[\dfrac{x^2-1}{x-1}=\dfrac{(x+1)(x-1)}{x-1}=x+1\]

となって,関数 $x+1$ と完全に一致する.従って $\dfrac{x^2-1}{x-1}$ のグラフは,$x+1$ のグラフから $x=1$ である点を除いた次のグラフになる:

 このグラフからもわかるように,$x\to1$ のとき,$\dfrac{x^2-1}{x-1}$ は限りなく2に近付く.しかし決して2にはなれない.

例題2の答え $\displaystyle{\underline{\lim_{x\to1}\dfrac{x^2-1}{x-1}=2}}$

 極限値とはすなわち「目的」である.どこに向かって関数が突き進んでいるのか,そのゴール地点を表したものが極限値なのだとイメージしておくと良いであろう.

5.1 関数の極限

 関数 $f(x)$ において,$x$ が $a$ と異なる値をとりながら限りなく $a$ に近付くとき,それに伴って $f(x)$ が限りなく $\alpha$ に近付く場合,「 $f(x)$ は $x\to a$ のとき $\alpha$ に収束する」といい,

$\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=\alpha,$

または $x\to a$ のとき,$f(x)\to\alpha,$

または $f(x)\to\alpha\ (x\to a)$

で表す.また,$\alpha$ を $x\to a$ のときの $f(x)$ の極限値という.

注意

  1. $x\to a$ は「 $x$ が $a$ と異なる値をとりながら $a$ に近付く」のであって,「$x=a$ になる」ということではない.
  2. 従って(先の例題2からもわかるように),$f(a)$ が定義されていなくても $\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)$ が存在する場合がある.

補足