高校数学[総目次]

高校数学ワンポイント

  スライド ノート
1. ファクシミリの原理 [会員]  
2. バウムクーヘン分割 [会員]  
3. 円と放物線    
4. 垂線の長さ    
5. 不定方程式    
6. 関数の連続性は導関数に遺伝するか    
7. 極方程式における $r$ の正負について    
8. 極座標表示における扇形分割積分    
9. 素因数分解の一意性    
10. 三角関数の不定積分    
11. シュワルツの不等式    
12. 放物線と2接線で囲まれた部分の面積    
13. 整式の除法(発展編)    
14. 3次関数のグラフの特徴    
15. 曲線の長さを求める公式の証明について    
16. もう迷わない!必要条件・十分条件の判定方法    

1.有名な例題

Q.  「命題:$3x+7y$ は,適当な自然数 $x,\ y$ を選べば,$n$ 以上の整数を全て表すことができる.」
 この命題を真にする最小の自然数 $n$ を求めなさい.

\[\begin{align*} 3\cdot5+7\cdot1&=22\\[5pt] 3\cdot3+7\cdot2&=23\\[5pt] 3\cdot 1+7\cdot 3&=24 \end{align*}\] です.実は本問の場合,連続する3つの整数が表現できれば,それらより大きい整数を全て表現できます.何故というに,$i=0,\ 1,\ 2,\ \cdots$ とすれば, \[\begin{align*} 3\cdot(5+i)+7\cdot1&=22+3i\\[5pt] 3\cdot(3+i)+7\cdot2&=23+3i\\[5pt] 3\cdot(1+i)+7\cdot3&=24+3i \end{align*}\] と表せるからです.
 次に,$3x+7y=21$ となる自然数の組 $(x,\ y)$ がないことを示します.$y=1$ のとき, \[3x+7=21\] となりますが,これを満たす自然数 $x$ は存在しません.$y=2,\ 3$ のときも同様に示されます.
 よって,求める自然数 $n$ は 22 です.

2.不定方程式の重要な定理

 整数論における次の定理は重要です.先ほどの問題とは違って,$(x,\ y)$ は整数の組であることに注意が必要です.

定理  $a,\ b$ を自然数とする.$a,\ b$ の最大公約数を $d$ とすると \[ ax+by=d\] を満たす整数の組 $(x,\ y)$ が存在する.

証明

 $S$ を $ax+by\ (x,\ y$ は整数) の形で表せる整数の集合とします:

$S=\{ax+by\ |\ x,\ y$ は整数$\}$

 $x,\ y$ が整数全体を動きますから,集合 $S$ には正の整数があります.その中で最小のものを $m$ とします.証明の流れは次のようになります.

証明の流れ
  1. $S\subset \{km\ |\ k $ は整数$\}$ を示す.
  2. $S\supset \{km\ |\ k $ は整数$\}$ を示す.
  3. $m=d$ を示す.すると $ax+by=d$ とできる.

1.$S\subset \{km\ |\ k$ は整数$\}$ を示す

 $m$ は $S$ の元ですから,ある整数 $x_0,\ y_0$ によって \[m=ax_0+by_0\] と書けます.
 次に,$S$ の任意の元 $s$ を $m$ で割った商を $k$,余りを $r$ とすると, \[\begin{align*} s&=mk+r\ \ \ (0\leqq r < m)\ \cdots ①\\[5pt] \therefore r&=s-mk \end{align*}\] と書けます.$s=ax+by,\ m=ax_0+by_0$ を代入すると, \[\begin{align*} r&=s-mk\\[5pt] &=(ax+by)-(ax_0+by_0)k\\[5pt] &=a(x-x_0k)+b(y-y_0k) \end{align*}\]

となって,$a\times($整数$)+b\times($整数$)$ という形に書けていますから,$r$ も $S$ の元です.$m$ で割った余りである $r$ は $0\leqq r < m$ ですから,$m(>0)$ の最小性より $r=0$ となるしかありません.(もし $r=1,2,\cdots,m-1$ だったら,$m$ より小さな $S$ の正の元が存在することになり,$m$ が最小であるという設定に矛盾してしまいます.)従って①より $s=km$ です.即ち $S$ の任意の元は,集合 $\{km\ |\ k$ は整数$\}$ の元ですから

$S\subset\{km\ |\ k $ は整数$\}$

がいえました.

2.$S\supset \{km\ |\ k$ は整数$\}$ を示す

 $m=ax_0+by_0$ ですから $km=a(kx_0)+b(ky_0)$ です.これは $km$ が $a\times(\mbox{整数})+b\times(\mbox{整数})$ という形に書けることを意味しますから $S$ の元です.従って

$S\supset\{km\ |\ k $ は整数$\}$

がいえました.


 1.及び2.により,「 $S\subset\{km\ |\ k$ は整数$\}$ かつ $S\supset\{km\ |\ k$ は整数$\}$ 」 となりましたから,

$S$ $=$ $\{km\ |\ k $ は整数$\}$

がいえました.即ち $S$ は $m$ の倍数の集まりなのです.


3.$m=d$ を示す

 $m=ax_0+by_0$ でした.この右辺は $a$ と $b$ の最大公約数 $d$ を用いて

$d\ \times$ (整数)

と書けますから $d$ の倍数,従って左辺の $m$ も $d$ の倍数です ($m\geqq d\ \cdots ②$).

 一方,$a=a\cdot 1+b\cdot 0$,及び $b=a\cdot 0+b\cdot 1$ ですから,$a,\ b\in S$.従って $a$ も $b$ も $m$ の倍数ですから $m$ は $a$ と $b$ の公約数です ($m\leqq d\ \cdots ③$).
 ②,③より $m=d$ がいえました.

 以上により,

集合 $\boldsymbol{S}$ と集合 $\boldsymbol{\{kd\ |\ k}$ は整数$\boldsymbol{\}}$ は一致する

ことが示されました.故に $ax+by=d$ を満たす整数の組 $(x,\ y)$ が存在します.

補足

 不定方程式 $ax+by=c$ は,$c$ が $d$ の倍数のときのみ解をもつことが,上の考察からわかります.

 自然数 $a,\ b$ について,
  $a,\ b$ が互いに素
  $\iff ax+by=1$ を満たす整数の組 $(x,\ y)$ が存在する.

証明

$\Leftarrow)$ $a$ と $b$ が互いに素でないなら,$a$ と $b$ が1より大きい公約数 $d$ をもち,

\[a=a’d,\ b=b’d\]

と表せますから,$a’dx+b’dy=1$,即ち

\[d(a’x+b’y)=1\]

を満たす整数 $x,y$ が存在することになります.ところが $d$ は2以上,右辺は1ですからこれは不合理です.

$\Rightarrow)$ $a$ と $b$ が互いに素ですから最大公約数 $d$ は 1 です.従って先に示した定理により $ax+by=1$ となる整数 $x,y$ が存在します.

補足

$\Rightarrow)$ については次のように示すこともできます:

 $a>b$ としても一般性は失われません.$b$ 個の整数

\[a\times1,\ a\times2,\ a\times3,\ \cdots ,\ a\times b\]

について,これらを $b$ で割った余りはすべて異なります.実際,$a\times i$ と $a\times j$ (ただし,$1\leqq i\leqq j\leqq b$) を $b$ で割った余りがともに $r$ とすれば,$q_1, q_2$ を整数として

\[\left\{\begin{array}{l} a\times i=b\,q_1+r\\[5pt] a\times j=b\,q_2+r \end{array}\right.\]

と表せます.2式から $r$ を消去して,

\[a(i-j)=b(q_1-q_2)\]

 右辺は $b$ の倍数ですから左辺も $b$ の倍数でなければなりません.ところが $a$ と $b$ は互いに素で,$0\leqq i-j\leqq b-1(<b)$ ですから結局

\[i-j=0\ \ \therefore i=j\]

となるしかありません.つまり余りが同じなら,元の数も同じだったということです.対偶をとれば,元の数が異なれば,余りも異なるといえます.これで先の $b$ 個の整数を $b$ で割った余りがすべて異なることが示されました.

 整数を $b$ で割った余りは

\[0,1,2,\cdots,b-1\]

の $b$ 個しかありませんから,先の $b$ 個の整数の中に $b$ で割ったときの余りが1であるものが存在します.即ち

\[a\times i=b\,q+1\]

\[\therefore a\times i+b\times (-q)=1\]

を満たす整数 $i, -q$ が存在しますから,題意が示されました.

例1

 $6x+9y\ (x,\ y$ は整数$)$ で表される数は 3(6と9の最大公約数)の倍数(全て)です.また,例えば $6\cdot(-1)+9\cdot 1=3$ です.

例2

 $3x+5y\ (x,\ y $ は整数$)$で表される数は整数全体です.例えば $3\cdot 2+5\cdot (-1)=1$ ですから,$k$ を任意の整数として, \[3\cdot 2k+5\cdot (-k)=k\] と表せます.


高校数学[総目次]

高校数学ワンポイント

  スライド ノート
1. ファクシミリの原理 [会員]  
2. バウムクーヘン分割 [会員]  
3. 円と放物線    
4. 垂線の長さ    
5. 不定方程式    
6. 関数の連続性は導関数に遺伝するか    
7. 極方程式における $r$ の正負について    
8. 極座標表示における扇形分割積分    
9. 素因数分解の一意性    
10. 三角関数の不定積分    
11. シュワルツの不等式    
12. 放物線と2接線で囲まれた部分の面積    
13. 整式の除法(発展編)    
14. 3次関数のグラフの特徴    
15. 曲線の長さを求める公式の証明について    
16. もう迷わない!必要条件・十分条件の判定方法