高校数学[総目次]
高校数学ワンポイント
スライド | ノート | |
1. ファクシミリの原理 | [会員] | |
2. バウムクーヘン分割 | [会員] | |
3. 円と放物線 | ||
4. 垂線の長さ | ||
5. 不定方程式 | ||
6. 関数の連続性は導関数に遺伝するか | ||
7. 極方程式における $r$ の正負について | ||
8. 極座標表示における扇形分割積分 | ||
9. 素因数分解の一意性 | ||
10. 三角関数の不定積分 | ||
11. シュワルツの不等式 | ||
12. 放物線と2接線で囲まれた部分の面積 | ||
13. 整式の除法(発展編) | ||
14. 3次関数のグラフの特徴 | ||
15. 曲線の長さを求める公式の証明について | ||
16. もう迷わない!必要条件・十分条件の判定方法 |
13.整式の除法(発展編)
整式の除法については数学Ⅱ第1章 式と証明の1.整式の除法で基本的なことを学びました.また,数学Ⅱ第2章 複素数と方程式の4.剰余の定理・因数定理では,整式の除法における余りについて学びました.ここではこれらの発展的な問題について説明します.
例題 $x$ の整式 $f(x)$ を $(x+1)^2$ で割ると余りが $2x-2$ で,$(x+2)^2$ で割ると余りが $3x-1$ であるという.$f(x)$ を次の式で割った余りを求めよ.
(1) $x+1$
(2) $x+2$
(3) $(x+1)^2(x+2)$
(4) $(x+1)^2(x+2)^2$
答
(1),(2)
$f(x)$ を $(x+1)^2$ で割ると余りが $2x-2$ ですから,$Q(x)$ を整式として
\[f(x)=(x+1)^2Q(x)+2x-2\]
と表せます.$Q(x)$ をこの割り算の商といいます.
剰余の定理によれば,$f(x)$ を $x+1$ で割った余りは $f(-1)$ ですから,
\[f(-1)=0^2\cdot Q(-1)+2\cdot(-1)-2=-4.\]
従って余りは $-4$ です.同様にして $f(x)$ を $x+2$ で割った余りも $f(-2)=3\cdot(-2)-1=-7$ となります.
さて,のちの発展問題に対処するため,この問題を別の方法でも解いてみます.
$f(x)$ を $x+1$ で割ることを考える際,$(x+1)^2Q(x)$ の部分は $x+1$ で割り切れますから
$\boldsymbol{f(x)}$ を $\boldsymbol{x+1}$ で割った余りは $\boldsymbol{2x-2}$ を $\boldsymbol{x+1}$ で割った余りに等しい
ということがいえます.これをもっと簡単な例でいうと,$24\div7$ の余りを求めたいとき,
\[24=7\times2+10\]
と変形したとして,$7\times2$ の部分は 7 で割り切れますから,あとは残った 10 を 7 で割った余りを考えればよいということです.合同式の考え方と同じですね.
$2x-2=2(x+1)-4$ ですから,$f(x)$ を $x+1$ で割った余りは $-4$ です.
同様にして,
$f(x)=(x+2)^2(x$ の整式$)+3x-1$
ですから,$f(x)$ を $x+2$ で割った余りは $3x-1$ を $x+2$ で割った余りに等しく,
\[3x-1=3(x+2)-7\]
と変形できますから余りは $-7$ です.
ここで大切なことは,
$\boldsymbol{f(x)=g(x)h(x)+r(x)}$ と変形できるとき,$\boldsymbol{f(x)}$ を $\boldsymbol{g(x)}$ で割った余りは,$\boldsymbol{r(x)}$ を $\boldsymbol{g(x)}$ で割った余りに等しい
ということです.
(3)
$f(x)$ を $(x+1)^2(x+2)$ で割った余りを $R(x)$ とすれば,
$f(x)=(x+1)^2(x+2)(x$ の整式$)+R(x)$
と表せます.そして既存の式から上の式を作り出すことを考えます.
$f(x)=(x+1)^2Q(x)+2x-2$ でしたから,上の式をにらんで $Q(x)$ をあらかじめ1次式 $x+2$ で割っておきます.この
ポイント 商を予め適当な式で割っておく
というのがコツです.余りを定数 $a$ とすると,
$Q(x)=(x+2)(x$ の整式$)+a$
と書けます.ここに整式の除法におけるもう1つの重要な事柄が出てきました。それは
(割る式の次数) > (余りの次数)
です.割る式 $x+2$ は $x$ の1次式ですから,余りは0次式,すなわち定数です.それを $a$ とおいたのです.
上の $Q(x)$ を $f(x)=(x+1)^2Q(x)+2x-2$ に代入すると
$f(x)\!=\!(x\!+\!1)^2\{$$(x\!+\!2)(x$の整式$)+a$$\}\!+\!2x\!-\!2.$
変形をして
$f(x)\!=\!(x\!+\!1)^2(x\!+\!2)(x$の整式$)+$$a(x\!+\!1)^2\!+\!2x\!-\!2$.
割る式 $(x+1)^2(x+2)$ は3次式ですから,余りは2次以下です. 部分は2次以下ですから,これが求める余りです.あとは $a$ を決定します.
冒頭で剰余の定理によって $f(-2)=-7$ でしたから,この式の $x$ を $-2$ とおくと,
\[-7=a(-2+1)^2+2\cdot(-2)-2\]
\[\therefore a=-1\]
従って
部分$=-(x+1)^2+2x-2=-x^2-3$
となり,これが求める余りです.
別解
$f(x)\!=\!(x\!+\!1)^2(x\!+\!2)(x$の整式$)+a(x\!+\!1)^2\!+\!2x\!-\!2$ から,この式を $x+2$ で割った余りは $a(x\!+\!1)^2\!+\!2x\!-\!2$ を $x+2$ で割った余りに等しいことがわかります.よってこの式を $\boldsymbol{x+2}$ について展開すると,
\[\begin{align*} &a(x+1)^2+2x-2\\[5pt] =&a\{(x+2)-1\}^2+2(x+2)-6\\[5pt] =&\underline{a(x+2)^2-2a(x+2)+2(x+2)}_{①}\!+a-6 \end{align*}\]
となります.①は $x+2$ で割り切れますから,$f(x)$ を $x+2$ で割った余りは $a-6$ となり,これが $-7$ に等しいのですから $a=-1$.これ以降は先の解法と同じです.
(4)
(3)より,$Q_1(x)$ を $x$ の整式として
$f(x)=(x+1)^2(x+2)Q_1(x)-x^2-3$
と表せます.ここから(3)と同様に,商である $Q_1(x)$ を $x+2$ で予め割っておきます.商を $Q_2(x)$,余りを $b$ とすると
$Q_1(x)=(x+2)Q_2(x)+b$
と表せます.これをすぐ上の式に代入して,
\[\begin{align*} f(x)&\!=\!(x\!+\!1)^2(x\!+\!2)\{(x\!+\!2)Q_2(x)\!+\!b\}\!-\!x^2\!-\!3\\[5pt] \!&=\!(x\!+\!1)^2(x\!+\!2)^2Q_2(x)\!+\!\underline{b(x\!+\!1)^2(x\!+\!2)\!-\!x^2\!-\!3} \end{align*}\]
この先,(3)では $f(-2)=-7$ を用いて解決できましたが,今回は $f(-2)=-7$ でも $f(-1)=-4$ でも $b$ が落ちてしまいます.
$f(x)$ を $(x+2)^2$ で割った余りは下線部$\underline{\hspace{10mm}}$を $(x+2)^2$ で割った余りと一致します.この部分を $x+2$ について展開してみましょう.
$x+2=t$ とおくと,$x=t-2$ ですから,
\[\begin{align*} &b(x+1)^2(x+2)-x^2-3\\[5pt] =&b\{(t-2)+1\}^2\,t-(t-2)^2-3\\[5pt] =&b(t^3-2t^2+t)-(t^2-4t+4)-3\\[5pt] =&bt^3-(2b+1)t^2+(b+4)t-7 \end{align*}\]
となります.$f(x)$ を $t^2$ 即ち $(x+2)^2$ で割った余りは,$(b+4)t-7$ 即ち $t$ を元に戻して
\[(b+4)(x+2)-7=(b+4)x+2b+1\]
となり,これが $3x-1$ ですから $b=-1$ となります.従って求める余りは上の下線部より,
\[-(x+1)^2(x+2)-x^2-3=\boldsymbol{-x^3-5x^2-5x-5}\]
です.
高度な別解
数学Ⅲの微分の知識が使えれば,$f(x)\!=\!(x\!+\!1)^2(x\!+\!2)^2Q_2(x)\!+\!b(x\!+\!1)^2(x\!+\!2)\!-\!x^2\!-\!3$ を微分して
よって,
\[f'(-2)=b+4\]
従って $f'(-2)$ がわかれば $b$ の値が求まりますが,これは最初の条件式 $f(x)=(x+2)^2Q(x)+3x-1$ から
\[f'(x)=2(x+2)Q(x)+(x+2)^2Q'(x)+3\]
\[\therefore\ \ f'(-2)=3\]
故に
\[3=b+4\ \ \therefore b=-1\]
という方法で $b$ を求めることもできます.
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