高校数学[総目次]

高校数学ワンポイント

  スライド ノート
1. ファクシミリの原理 [無料]  
2. バウムクーヘン分割 [無料]  
3. 円と放物線    
4. 垂線の長さ    
5. 不定方程式    
6. 関数の連続性は導関数に遺伝するか    
7. 極方程式における $r$ の正負について    
8. 極座標表示における扇形分割積分    
9. 素因数分解の一意性    
10. 三角関数の不定積分    
11. シュワルツの不等式    
12. 放物線と2接線で囲まれた部分の面積    

1.シュワルツの不等式(ベクトル形)

 有名不等式として真っ先に思いつくのは,相加・相乗平均の関係式でしょうが,次に挙げるシュワルツの不等式も,名前こそ教科書には出てこないものの,この不等式が背後にあるといった問題は時折見かけます.また,コーシー・シュワルツの不等式と呼ばれることも多いです.


 空間内の2つのベクトル $\overrightarrow{\mathstrut a},\overrightarrow{\mathstrut b}$ のなす角を $\theta$ とすると,

\[\overrightarrow{\mathstrut a}\cdot\overrightarrow{\mathstrut b}=|\overrightarrow{\mathstrut a}|\,|\overrightarrow{\mathstrut b}|\cos\theta\]

ですが,$-1\leqq\cos\theta\leqq1$ ですから

\[-|\overrightarrow{\mathstrut a}|\,|\overrightarrow{\mathstrut b}|\leqq\overrightarrow{\mathstrut a}\cdot\overrightarrow{\mathstrut b}\leqq|\overrightarrow{\mathstrut a}|\,|\overrightarrow{\mathstrut b}|\]

即ち

\[(0\leqq)\ |\overrightarrow{\mathstrut a}\cdot\overrightarrow{\mathstrut b}|\leqq|\overrightarrow{\mathstrut a}|\,|\overrightarrow{\mathstrut b}|\]

となります.従って

\[|\overrightarrow{\mathstrut a}\cdot\overrightarrow{\mathstrut b}|^2\leqq|\overrightarrow{\mathstrut a}|^2\,|\overrightarrow{\mathstrut b}|^2\]

がいえます.$\overrightarrow{\mathstrut a}=(a_1,a_2,a_3)$,$\overrightarrow{\mathstrut b}=(b_1,b_2,b_3)$ とすれば,両辺を成分で表して次のシュワルツの不等式を得ます:

シュワルツの不等式  $a_1,a_2,a_3,b_1,b_2,b_3$ を実数とするとき, \[(a_1b_1\!+\!a_2b_2\!+\!a_3b_3)^2\!\leqq\!({a_1}^2\!+\!{a_2}^2\!+\!{a_3}^2)({b_1}^2\!+\!{b_2}^2\!+\!{b_3}^2)\] が成り立つ.
 等号成立は,$a_1=a_2=a_3=0$,または $b_1=b_2=b_3=0$,または \[\frac{b_1}{a_1}=\frac{b_2}{a_2}=\frac{b_3}{a_3}\] が成り立つときで,分母,分子の一方が0のとき,他方も0となる.

 等号が成立するのは $a_1=a_2=a_3=0$,または $b_1=b_2=b_3=0$ のときは当然として,それ以外の場合は $|\overrightarrow{\mathstrut a}\cdot\overrightarrow{\mathstrut b}|=|\overrightarrow{\mathstrut a}|\,|\overrightarrow{\mathstrut b}|$ が成り立つ場合です.内積の定義に立ち返ると $|\cos\theta|=1$ となるときで,それは $\theta=0^\circ$ か $180^\circ$ のときです.このとき2つのベクトル $\overrightarrow{\mathstrut a},\overrightarrow{\mathstrut b}$ は平行ですから,$\overrightarrow{\mathstrut b}=k\overrightarrow{\mathstrut a}$ となる実数 $k$ が存在し,成分で書き表すと,

\[(b_1,b_2,b_3)=k(a_1,a_2,a_3)\]

従って

\[b_1=ka_1,\ b_2=ka_2,\ b_3=ka_3\ \ \cdots\mbox{①}\]

です.$a_1,a_2,a_3$ がいずれも0でなければ

\[\frac{b_1}{a_1}=k,\ \frac{b_1}{a_1}=k,\ \frac{b_1}{a_1}=k\]

となって

\[\frac{b_1}{a_1}=\frac{b_2}{a_2}=\frac{b_3}{a_3}\]

を得ます.どれか1つの成分が0であれば,対応する成分も0でなければならないことは,①を見れば理解できます.

補足

 実はこの不等式は

\[\begin{align*} (a_1b_1+&a_2b_2+\cdots+a_nb_n)^2\\[5pt] &\leqq({a_1}^2+{a_2}^2+\cdots+{a_n}^2)({b_1}^2+{b_2}^2+\cdots+{b_n}^2) \end{align*}\]

というように任意の自然数 $n$ でも成り立ちます.

例題 $x+2y+3z=4$ のとき,$x^2+y^2+z^2$ の最小値を求めよ.

 いろいろな解法が考えられますが,シュワルツの不等式を使ってみます.

 $\overrightarrow{\mathstrut a}=(1,2,3)$,$\overrightarrow{\mathstrut b}=(x,y,z)$ として,

\[\begin{align*} \overrightarrow{\mathstrut a}\cdot\overrightarrow{\mathstrut b}&=x+2y+3z\\[5pt] |\overrightarrow{\mathstrut a}|^2&=1^2+2^2+3^2\\[5pt] |\overrightarrow{\mathstrut b}|^2&=x^2+y^2+z^2 \end{align*}\]

となりますから,シュワルツの不等式により

\[(x+2y+3z)^2\leqq(1^2+2^2+3^2)(x^2+y^2+z^2)\]

\[\therefore 4^2\leqq 14(x^2+y^2+z^2)\]

\[\therefore x^2+y^2+z^2\geqq\frac{16}{14}=\frac87\]

 等号が成立するのは,

$\dfrac x1=\dfrac y2=\dfrac z3$ かつ $x+2y+3z=4$

 即ち $x=\dfrac27,\ y=\dfrac47,\ z=\dfrac67$ のときです.

 従って $\boldsymbol{x=\dfrac27,\ y=\dfrac47,\ z=\dfrac67}$ のとき,最小値 $\boldsymbol{\dfrac27}$ をとることがわかります.

2.シュワルツの不等式(積分形)

 まず次の例題をご覧ください.

例題 $p,q$ を定数とするとき,次の不等式を証明せよ.
\[\left(\int_0^1\!\!(x\!+\!p)(x\!+\!q)dx\right)^2\!\leqq\!\int_0^1\!\!(x\!+\!p)^2dx\int_0^1\!\!(x\!+\!q)^2dx\]

 これを単なる計算問題とみれば,次のように証明されます:

\[(\mbox{左辺})=\cdots=\left(\frac13+\frac{p+q}2+pq\right)^2\]

 また右辺については

\[\begin{align*} &\int_0^1(x+p)^2dx=\cdots=\frac13+p+p^2\\ &\int_0^1(x+q)^2dx=\cdots=\frac13+q+q^2\\ \end{align*}\]

 となり,

\[(\mbox{右辺})-(\mbox{左辺})=\cdots=\frac1{12}(p-q)^2\geqq0\]

として証明が完了します.等号成立は $p=q$ のときです.

 さて、次が積分形のシュワルツの不等式です.

シュワルツの不等式  閉区間 $[a,b]$ で連続な関数 $f(x),g(x)$ について, \[\left(\int_a^b\!\!f(x)g(x)dx\right)^2\leqq\int_a^b\!\!\{f(x)\}^2dx\int_a^b\!\!\{g(x)\}^2dx.\] が成り立つ.等号成立は,$a\leqq x\leqq b$ で常に $f(x)=0$,又は $g(x)=0$,又は $g(x)=tf(x)\ (t$ は定数)のとき.

 この定理を認めるならば,先の例題は,この不等式において $f(x)=x+p$,$g(x)=x+q$,$a=0$,$b=1$ とした特別な場合にすぎないことがわかります.

証明

 それでは証明を見ていきましょう.

 $a\leqq x\leqq b$ で常に $f(x)=0$,または $g(x)=0$ のとき,シュワルツの不等式の両辺はともに0となりますから成り立ちます.従って以下では $f(x)$ も $g(x)$ も恒等的に0でない場合を考えます.

 $t$ を実数として,常に $\{tf(x)+g(x)\}^2\geqq0$ ですから,

\[\int_a^b\!\!\{tf(x)+g(x)\}^2dx\geqq0\]

が成り立ちます.詳しくはこちらの定理を確認してください.

 展開すると,

\[\int_a^b(t^2f^2+2tfg+g^2)dx\geqq0\]

※ $f(x),g(x)$ のうしろの「$(x)$」を省略しました.

となります.

 次に積分を分けます.積分変数は $x$ ですから,$t$ は定数扱いです.よって積分の前に出しておきます.

\[t^2\!\int_a^b\!\{f(x)\}^2dx\!+\!2t\!\int_a^b\!\!f(x)g(x)dx\!+\!\int_a^b\!\{g(x)\}^2dx\!\geqq\!0\]

 この式の定積分はすべて定数です.いま見やすさのために,$\displaystyle{A\!=\!\int_a^b\!\!\{f(x)\}^2dx}$,$\displaystyle{B\!=\!\int_a^b\!\!f(x)g(x)dx}$,$\displaystyle{C\!=\!\int_a^b\!\!\{g(x)\}^2dx}$ とおきますと,

\[At^2+2Bt+C\geqq0\ \ \cdots\mbox{①}\]

という具合にすっきりと書けます.これは常に成り立つ不等式であることを強調しておきます.

 $f(x)$ は恒等的に0ではありませんから $A>0$ です.(詳しくはこちらの定理を確認してください.)従って①は,任意の実数 $t$ で成り立つ2次の不等式です.すると係数$A$,$B$,$C$ の間には,$t$ の2次方程式 $At^2+2Bt+C=0$ の判別式を $D$ としたとき,$D/4\leqq0$,即ち

\[B^2-AC\leqq0\]

\[\therefore B^2\leqq AC\]

という関係が成り立っているはずです.これはシュワルツの不等式に他なりません.

 等号が成立する場合,即ち $B^2= AC$ が成り立つ場合を考えてみましょう.

 放物線 $y=At^2+2Bt+C$ は,先ほど強調したように $y\geqq0$ が保証されていました.

 もし $D/4=B^2-AC<0$ ならば,$y>0$ となり,放物線は $t$ 軸より上側にあります.

 一方,私たちが関心のある $B^2=AC$ 即ち $(D/4=)B^2-AC=0$ であれば,放物線 $y=At^2+2Bt+C$ はある $t=t_0$ で $t$ 軸に接しています.これは $A{t_0}^2+2Bt_0+C=0$ となる実数 $t_0$ が存在しているということで,元をたどれば

\[\int_a^b\!\!\{t_0f(x)+g(x)\}^2dx=0\]

が成り立っているということですから,閉区間 $[a,b]$ で常に $t_0f(x)+g(x)=0$,つまり $g(x)=-t_0f(x)$ が成り立つときです.詳しくはこちらの定理の等号成立条件を確認してください.

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