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高校数学[総目次]

数学Ⅲ 第2章 微分法

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2.合成関数の導関数

2.1 合成関数

 例として4次関数 $y=(x^2-2x)^2-3(x^2-2x)+4$ を考えよう. この関数は大した計算もなしに $x=1$ のとき $y’=0$ であることがわかる.実際,

\[\begin{align*} y&=(x^4-4x^3+4x^2)-3(x^2-2x)+4\\[5pt] &=x^4-4x^3+x^2+6x+4 \end{align*}\]

よって

\[\begin{align*} y’&=4x^3-12x^2+2x+6\\[5pt] &=2(2x^3-6x^2+x+3)\\[5pt] &=2(x-1)(2x^2-4x-3) \end{align*}\]

となって,確かに $x=1$ のとき $y’=0$ である.しかしこの計算を指して「大した計算もなしに」と言った訳ではない.別な計算方法があって,そのやり方では上で示した計算よりずっと手間なく微分ができるのである.その方法とはーーこの関数を2つの関数をミックスしたものと捉えて微分するのである.具体的には,この関数には $x^2-2x$ という塊が2つあり,これを $f(x)$ とおく.そして元の関数を $g(x)$ とおくと

\[ \left\{\begin{array}{l} f(x)=x^2-2x\\[5pt] g(x)=\{f(x)\}^2-3f(x)+4 \end{array}\right. \]

という具合に2つの関数をミックスさせた関数とみることができる.ミックスさせた関数には微分がラクにできる公式があり,それを用いて計算すると $x=1$ で $y’=0$ となることがすぐにわかるのである.

 $x$ を1つ決めると $f(x)$ がただ1つ決まり,この $f(x)$ に応じて $g(f(x))$ がただ1つ定まるとき,$g(f(x))$ を $f(x)$ と $g(x)$ の合成関数といい,$(g\circ f)(x)$ で表す.

注意

① $g(x)$ の $x$ のところに $f(x)$ が入るから,$f(x)$ の値域が $g(x)$ の定義域に含まれていなければならない.
例 $f(x)=x-1,\ g(x)=\sqrt x$ のとき,
  $(g\circ f)(x)=g(f(x))=\sqrt{x-1}\ \cdots
(*) $
  よって $f(x)$ の値域が0以上 $(x\geqq1)$ のとき,$(*)$ は意味を持つ.

② $(g\circ f)(x)$ と $(f\circ g)(x)$ の違いに注意.
例 $f(x)=3x^2,\ g(x)=2x-1$のとき,
  $(g\circ f)(x)=g(f(x))=2\cdot3x^2-1=6x^2-1$
  $(f\circ g)(x)=f(g(x))=3(2x-1)^2$

③ $u=f(x),y=g(u)$ を合成した $y=g(f(x))$ は,$g(u)$ の $u$ が全て $f(x)$ に置き換わっているから $x$ の関数である.つまり $y=g(f(x))$ に文字 $u$ はない.

2.2 合成関数の導関数

 これから学ぶ合成関数の導関数の公式を利用すると,冒頭の関数の導関数は

\[y’=\{2(x^2-2x)-3\}\cdot2(x-1)\]

となることがわかり,従って $x=1$ で $y’=0$ となることがわかる.

 $f(x),\ g(x)$ が微分可能であるとする.$y=f(g(x))$ の導関数 $\dfrac{dy}{dx}$ を考えたい.
 $u=g(x)$ とおいて, \[\left\{\begin{array}{l} y=f(u)\\ u=g(x) \end{array}\right.\ \cdots\mbox{①}\] の合成と考えると次が成り立つ:

合成関数の導関数 \[ \frac{dy}{dx}=\frac{dy}{du}\cdot\frac{du}{dx}\]

証明

 $x$ の増分 $\Delta x$ に対する $u$ の増分を $\Delta u$ とおく: \[\Delta u=g(x+\Delta x)-g(x)\ \cdots\mbox{②}\]  従って,$g(x+\Delta x)=u+\Delta u\ \cdots$③
 以上の準備の下で, \[\begin{align*} \frac{dy}{dx}&=\lim_{\Delta x\to0}\frac{f(g(x+\Delta x))-f(g(x))}{\Delta x}\\[5pt] &=\lim_{\Delta x\to0}\frac{f(u+\Delta u)-f(u)}{\Delta x}\ \ (\because\mbox{③,①})\\[5pt] &=\lim_{\Delta x\to0}\frac{f(u+\Delta u)-f(u)}{\Delta u}\cdot\frac{\Delta u}{\Delta x}\\[5pt] &=\lim_{\Delta x\to0}\frac{f(u+\Delta u)-f(u)}{\Delta u}\cdot\frac{g(x+\Delta x)-g(x)}{\Delta x}\ \cdots\mbox{④} \end{align*}\]  ここで,$g(x)(=u)$ は微分可能,従って連続だから, \[\lim_{\Delta x\to0}g(x+\Delta x)=g(x)\]  よって②により,$\Delta x\to0$ のとき $\Delta u\to 0$ となるから, \[\begin{align*} \mbox{④}&=\lim_{\Delta u\to0}\frac{f(u+\Delta u)-f(u)}{\Delta u}\cdot\lim_{\Delta x\to0}\frac{g(x+\Delta x)-g(x)}{\Delta x}\\[5pt] &=\frac{dy}{du}\cdot\frac{du}{dx} \end{align*}\]

補足

 $\dfrac{dy}{dx}$ (ディーワイ・ディーエックス)といった表現は,例えば $\dfrac23$ といった分数と同じではないが,形式的に分数(ディーエックス分のディーワイ)だと思って公式の右辺の $du$ を約分すると左辺の $\dfrac{dy}{dx}$ となる.これが実は一般的にもいえて,形式的に約分して元に戻るなら論理的に矛盾は生じていない.例えば

\[\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{da}\cdot\frac{da}{db}\cdot\frac{db}{dc}\cdot\frac{dc}{dx}\]

のように次々と式をつなげていくことができる.合成関数の導関数の公式を英語でchain ruleというが,チェーン(鎖)が次々とつながっていく様子がこの公式の中に潜んでいるのが見て取れよう.

 $\dfrac{dy}{dx}$ はライプニッツが用いた記法である.数学Ⅱにおける微分法では $\dfrac{dy}{dx}$ を用いる場面は少なかった.分数の形をしていて場所をとるし,用いる動機がほとんど見当たらなかった.だが数学Ⅲでは違う.この記法が今後も大いに活躍するのである.

 $y=f(u),\ u=g(x)$ のとき,$\dfrac{dy}{du}=f'(u),\ \dfrac{du}{dx}=g'(x)$ により, \[\begin{align*} \frac{dy}{dx}&=\frac{dy}{du}\cdot\frac{du}{dx}\\[5pt] &=f'(u)g'(x)\\[5pt] &=f'(g(x))g'(x) \end{align*}\]

合成関数の導関数2 \[ \Bigl\{f\bigl(g(x)\bigr)\Bigr\}’=f’\bigl(g(x)\bigr)g'(x) \]

例題 $y=(1-2x)^3$ を微分せよ.

こたえ

 解答例を表示する

補足

 本問の結果のように,微分したあとは展開しないままにすることも多い.

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