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高校数学[総目次]

数学Ⅲ 第2章 微分法

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8.平均値の定理

8.1 平均値の定理

 下図を見ると,曲線 $y=f(x)$ の $a< x< b$ における接線で,その傾きが2点 $(a,f(a))$ と $(b,f(b)$ を結ぶ線分の傾きと等しいもの(2つ)が存在している.

曲線上の2点を結ぶ線分と同じ傾きをもつ図のような接線が存在する.

 こういったことを主張しているのが次に示す平均値の定理(mean-value theorem)である.

平均値の定理 関数 $f(x)$ が,閉区間 $[a,\ b]$ で連続,開区間 $(a,\ b)$ で微分可能であるとき, \[ \frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c),\ \ a<c<b \] を満たす $c$ が存在する.

 この式の左辺は関数 $f(x)$ の $x$ の値が $a$ から $b$ まで変化したときの平均変化率で,グラフでは曲線 $y=f(x)$ 上の2点 $(a,f(a))$ と $(b,f(b)$ を結ぶ線分の傾きを表す.そして右辺は,$a$ と $b$ の間の値 $c$ における微分係数で, グラフでは $x=c$ における接線の傾きを表す.

 冒頭でこの定理は直感的に理解しやすいものであると述べたが,証明の方はというと元を正していけば

連続関数の最大値・最小値の定理
$\Longrightarrow$ ロルの定理
$\Longrightarrow$ 平均値の定理

といった具合になっている.加えて最大値・最小値の定理やロルの定理は,高校の教科書においては証明なしに定理のステートメントが紹介されるにとどまっている場合も多い.従ってこの辺りの内容をきっちり見ていくにはやはり大学課程の数学を待たねばなるまい.

補足

 $\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c)$ を変形して

\[f(b)-f(a)=f'(c)(b-a)\]

となるが,これにより $f(b)-f(a)$ から $b-a$ を取り出すことができる. 入試問題でこの形の式が出てきたら「もしや平均値の定理が利用できるのでは?」とピンとくるようにしておきたい.

8.2 平均値の定理の不等式への応用

例題 [不等式への応用]
$0<a<b$ のとき,$\dfrac 1b < \dfrac{\log b-\log a}{b-a} < \dfrac 1a$ を示せ.

 $f(x)=\log x$ とおくと,$f(x)$ は閉区間 $[a,b]$ で連続,開区間 $(a,b)$ で微分可能であるから,平均値の定理により, \[\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c),\ a<c<b\] を満たす $c$ が存在する.$f'(x)=\dfrac1x$ で,$0\! < \! a \! < \! b$ により $\dfrac1b < \dfrac1c < \dfrac1a$ だから, \[\frac1b<f'(c) < \frac1a\] \[\therefore \frac1b < \frac{f(b)-f(a)}{b-a} < \frac1a\]

8.2 平均値の定理の漸化式への応用

例題 [漸化式への応用]
関数 $f(x)={\sqrt2}^{\,x}$ について
(1) $x_1,x_2\leqq2\ (x_1\neq x_2)$ のとき,$|f(x_2)-f(x_1)|<(\log2)\cdot |x_2-x_1|$ が成り立つことを証明せよ.
(2) $a_1=\sqrt2,\ a_{n+1}=f(\,a_n)$ で与えられる数列 $\{a_n\}$ について $\displaystyle \lim_{n\to\infty}a_n$ を求めよ.

こたえ

(1) $f'(x)=\sqrt2^{\,x}\log\sqrt2$

$f(x)$ は閉区間 $[x_1,x_2]$ (または $[x_2,x_1]$)で連続,開区間 $(x_1,x_2)$ (または $(x_2,x_1)$)で微分可能であるから平均値の定理により $\dfrac{f(x_2)-f(x_1)}{x_2-x_1}= f'(c)$ すなわち

\[\frac{f(x_2)-f(x_1)}{x_2-x_1}= \sqrt2^{\,c}\log\sqrt2\]

を満たす $c$ が $x_1$ と $x_2$ の間に存在する.この右辺について,$f'(x)$ は実数全体で単調に増加し,$c<2$ であるから

\[0<f'(c)< f'(2)= \sqrt2^{\,2}\log\sqrt2=\log2\]

 従って

\[\left|\frac{f(x_2)-f(x_1)}{x_2-x_1}\right|<\log2\]

\[\therefore |f(x_2)-f(x_1)|<(\log2)\cdot|x_2-x_1|\]

(2) 「すべての自然数 $n$ について $a_n\leqq2$ …(☆)」であることを数学的帰納法で示す.

[1] $n=1$ のとき,$a_1=\sqrt2<2$ だから成り立つ.

[2] $n=k$ のときの成立を仮定すると,底の $\sqrt2$ が1より大きいから,

\[a_{k+1}=\sqrt2^{\,a_k}\leqq\sqrt2^{\,2}=2\]

 従って $n=k+1$ のときも成立するから(☆)が示された.

 $f(2)=2,\ a_n=f(a_{n-1})$ により

\[|2-a_n|=|f(2)-f(a_{n-1})|<(\log2)\cdot|2-a_{n-1}|\]

\[\therefore \ \ |2-a_n|<(\log2)\cdot|2-a_{n-1}|\]

 この関係を繰り返し用いて

\[\begin{align*} |2-a_n|&<(\log2)\cdot|2-a_{n-1}|\\[5pt] &<(\log2)^2\cdot|2-a_{n-2}|\\[5pt] &<\cdots\\[5pt] &<(\log2)^{n-1}\cdot|2-a_1| \end{align*}\]

\[\therefore\ \ (0<\,)\, |2-a_n|<(\log2)^{n-1}\cdot|2-\sqrt2|\]

 $0<\log2<\log e=1$ より,この右辺は $n\to\infty$ のとき0に収束するから,はさみうちの原理により

\[|2-a_n|\to0\ \ (n\to\infty)\]

\[\therefore \ \ \lim_{n\to\infty}a_n=2\]

補足

 $\sqrt2^{\sqrt2^{\sqrt2^{\cdots}}}=2$ となることが示されたことになる.

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