高校数学[総目次]
高校数学ワンポイント

19.1 はじめに
入試問題を解いていると,東京大学や京都大学を始め,多くの大学で2次方程式の解の配置問題が出題されていると気が付きます.例えば次のような問題です.
$xy$ 平面上の原点と点 $(1,\ 2)$ を結ぶ線分(両端を含む)を $L$ とする.曲線 $y=x^2+ax+b$ が $L$ と共有点をもつような実数の組 $(a,\ b)$ の集合を $ab$ 平面に図示せよ.
(京都大)
この問題は,$L:y=2x\ (0\leqq x\leqq1)$ と表されますから,曲線 $y=x^2+ax+b$ が $L$ と共有点をもつための条件は,2次方程式 $x^2+ax+b=2x$ 即ち\[x^2+(a-2)x+b=0\]が,$0\leqq x\leqq1$ の範囲に少なくとも1つの解をもつことです.
これを2次方程式の解の配置問題として解く方法の他に,ファクシミリの原理 を利用した解法もありますが,第3の解法として,図形の通過領域として捉える考え方があります.
教科書で説明されることはまずないと思われるこの解法を,以下で詳しく見ていきます.

19.2 包絡線とは
以下で扱う題材は直線で,しかもパラメータが2次で表された直線です.
この文脈で最も利用される直線を例にとりましょう.
例:$y=2tx-t^2$
これはパラメータ $t$ の2次式で表された直線です.
このようにパラメータが2次で表されたものに限定して議論を進めますが,パラメータが2次であれば,実は直線でなくても曲線でも成り立ちます.
例えば高校数学ワンポイント1. ファクシミリの原理 の東京大学の過去問(ページ最下部)を参照してください.
また,難関大の入試問題の多くはこのパターンだけで用が足ります.
この直線は,$t$ を決めると直線が1つ決まります.
$t$ のいくつかの値での直線は次のようになります.
$t=-2$ のとき $y=-4x-4$
$t=-1$ のとき $y=-2x-1$
$t=0$ のとき $y=0$
$t=1$ のとき $y=2x-1$
$t=2$ のとき $y=4x-4$

そして次が重要なのですが,これらの直線はある1つの曲線に接しているのです.

この赤色の曲線は,放物線 $y=x^2$ です.
今,5つの $t$ の値について見ましたが,実は任意の実数 $t$ について調べると,もれなくその直線はこの放物線の接線となっているのです.
このとき,この放物線 $y=x^2$ をこの直線群の包絡線(ほうらくせん,envelope)といいます.
包絡線とは 直線群の1本1本が,常にある曲線 $C$ の接線になっているとき,この曲線 $C$ をその直線群の包絡線という.
この包絡線さえわかれば,パラメータに伴って変化する直線の動きを目で捕捉することが可能となり,直線の通過領域に関する問題は一気に答えまでたどり着くことが可能となります.

19.3 包絡線の求め方
ではどのようにすれば包絡線が求められるのでしょうか.
大学の教科書を参照すると,概ね次のように書かれています.
包絡線の求め方 直線群 $F(x,\ y,\ t)=0$ に対して,2つの式
$F(x,\ y,\ t)=0$ …①
$F_t(x,\ y,\ t)=0$ …②
から $t$ を消去して得られる曲線 $C$ は,この直線群の包絡線である.
順に説明していきます.
まず,①式の $F(x,\ y,\ t)=0$ というのは,先の例でいうと $y=2tx-t^2$ のことです.
この式は $2tx-y-t^2=0$ と書き換えることができますから,$F(x,\ y,\ t)$ というのは $2tx-y-t^2$ を指しています.
次に,②式の $F_t(x,\ y,\ t)=0$ ですが,この左辺の $F_t(x,\ y,\ t)$ というのは $F$ の添え字である $t$ 以外は定数と思って,$F$ を $t$ の関数とみたときの導関数という意味です.
先の例でいうと,$F(x,\ y,\ t)=2tx-y-t^2$ において $x$ と $y$ は定数だと思って $t$ で微分すると,
\[F_t(x,\ y,\ t)=2x-2t\]
となります.
これが0となるとき,$2x-2t=0$,つまり $t=x$ です.
この関係を①に代入すると,包絡線がわかるというのが定理の主張です.
実際に代入してみると
\[2x\cdot x-y-x^2=0\ \ \therefore y=x^2\]
となって,確かに包絡線が放物線 $y=x^2$ であることがわかりました.
では何故このようにすれば包絡線が求められるのでしょうか.
気になるところではありますが,証明については思い切って省略したいと思います.
とにかくこの定理を認めて,大学入試の記述で使えるような範囲で利用していきたいというのが目的です.

19.4 パラメータが2次で表された直線の包絡線の求め方
本稿では,直線群をパラメータが2次で表された直線に限定していましたが,このタイプの直線は次のように平方完成というごく身近な道具を使って包絡線を求めることができるのです.
先の例を使って説明していきましょう.
