高校数学[総目次]

高校数学ワンポイント

  スライド ノート
1. ファクシミリの原理 [会員]  
2. バウムクーヘン分割 [会員]  
3. 円と放物線    
4. 垂線の長さ    
5. 不定方程式    
6. 関数の連続性は導関数に遺伝するか    
7. 極方程式における $r$ の正負について    
8. 極座標表示における扇形分割積分    
9. 素因数分解の一意性    
10. 三角関数の不定積分    
11. コーシー・シュワルツの不等式    
12. 放物線と2接線で囲まれた部分の面積    
13. 整式の除法(発展編)    
14. 3次関数のグラフの特徴    
15. 曲線の長さを求める公式の証明について    
16. もう迷わない!必要条件・十分条件のくすっと笑える判定方法    
17. 同じものを含む円順列の考え方    
18. $f(f(x))=x$ の形をした関数方程式の取り扱い方    
19. パラメータが2次で表された直線の通過領域    

18.1 ちょっと不思議な形の方程式

 次の例題を考えてみてください。

例題1 $(x^2-6)^2-6=x$ を解け.

こたえ

 与式の左辺を展開して整理します.

\[(x^4-12x^2+36)-6=x\]

$x^4-12x^2-x+30=0$ …①

 この方程式①の左辺に $x$ に3を代入すると

\[3^4-12\cdot3^2-3+30=81-108-3+30=0\]

 また $x=-2$ を代入しても

\[(-2)^4-12\cdot(-2)^2-(-2)+30=16-48+2+30=0\]

 従って因数定理 により,方程式①の左辺は $(x-3)(x+2)$ を因数にもちますから,実際に割り算を行うと

① $\iff (x-3)(x+2)(x^2+x-5)=0$

となります.よって残りの解は $x^2+x-5=0$ を解いて,$x=\dfrac{-1\pm\sqrt{21}}2$ となります.

 答えは $x=3,\ -2,\ \dfrac{-1\pm\sqrt{21}}2$

例題2 $6(6x^2-2)^2-2=x$ を解け.

こたえ

 与式の左辺を展開して整理します.

\[6(36x^4-24x^2+4)-2=x\]

$216x^4-144x^2-x+22=0$ …②

 この方程式②の左辺に $x$ に $-\dfrac12$ を代入すると

\[\begin{align*}
&216\cdot\left(-\dfrac12\right)^4-144\cdot\left(-\dfrac12\right)^2-\left(-\dfrac12\right)+22\\
=&\dfrac{27}2-36+\dfrac12+22=0
\end{align*}\]

 また $x=\dfrac23$ を代入しても

\[\begin{align*}
&216\cdot\left(\dfrac23\right)^4-144\cdot\left(\dfrac23\right)^2-\dfrac23+22\\
=&\dfrac{128}3-64-\dfrac23+22=0
\end{align*}\]

 従って因数定理 により,方程式②の左辺は $(2x+1)(3x-2)$ を因数にもちますから,実際に割り算を行うと

② $\iff (2x+1)(3x-2)(36x^2+6x-11)=0$

となります.よって残りの解は $36x^2+6x-11=0$ を解いて,$x=\dfrac{-1\pm3\sqrt5}{12}$ となります.

 答えは $x=-\dfrac12,\ \dfrac23,\ \dfrac{-1\pm3\sqrt5}{12}$

 いかがでしたか?かなり難しいと感じられた方が多いのではないでしょうか.とりわけ例題2で発見的に $-\dfrac12$ や $\dfrac23$ を見つけてくるのは容易ではありません.難しいのは当然です.

 しかし実は,例題1では方程式①の左辺が $(x+3)(x-2)$,すなわち $x^2-x-6$ を因数にもつことが出発の最初からわかっていました.例題2でも同様で,問題を読んだ瞬間から方程式②の左辺が $(2x+1)(3x-2)$,すなわち $6x^2-x-2$ を因数にもつことがわかっていたのです.どうしてそんなことがわかっていたのでしょうか.

18.2 $f(f(x))=x$ の取り扱い方

 これら2つの例題を慎重に眺めていると,とてもよく似た形をしていることに気が付きます.もう一度2つの例題をじっくり見てみましょう.

例題1:$(x^2-6)^2-6=x$
例題2:$6(6x^2-2)^2-2=x$

 例題1ではカッコの中身である $x^2-6$ を $X$ とおくと,左辺は $X^2-6$ となって,$X$ とおいた式と全く同じ形になっています.

 同様に,例題2でもカッコの中身である $6x^2-2$ を $X$ とおくと,左辺は $6X^2-2$ となって, $X$ とおいた式と全く同じ形になっています.これを言い換えると,例題1では $f(x)=x^2-6$ とおくと,左辺は $f(f(x))$ と表せます.

※ $f(f(x))$ の表現がわかりにくい場合は,$f(X)=X^2-6$ の $X$ のところに $f(x)$ を代入したと捉えてください.$f(x)=x^2-6$ ですから,左側の $X$ には $f(x)$ を,右側の $X$ には $x^2-6$ を代入します.すると $f(f(x))$ が $(x^2-6)^2-6$ を表していることがわかります.

 例題2でも同様です.$f(x)=6x^2-2$ とおくと,左辺は $f(f(x))$ と表せます.つまりこの2つの例題の共通点は,

方程式 $f(f(x))=x$ を解く

ということなのです.このように関数を含んだ方程式を関数方程式といいます.いま右辺の $x$ を左辺に移項して $f(f(x))-x=0$ としておきましょう.このタイプの関数方程式の取り扱い方は

方程式 $f(f(x))-x=0$ は,
方程式 $f(x)-x=0$ の解をすべて含む

すなわち

ポイント$f(f(x))-x$ は$f(x)-x$ を因数にもつ

ということに注目して因数分解を行うというのが定石です.