高校数学[総目次]
高校数学ワンポイント

9.素因数分解の一意性
$1,2,3,\cdots$ を自然数といいます.このうち1と自分自身しか約数をもたない数を素数といいますが,1だけは素数に含みません.具体的には $2,3,5,7,\cdots$ という数で,素数は無限にあることが知られています.素数と1以外の自然数を合成数といいます.合成数を素因数の積に分解することを素因数分解といいます.例えば,
\[6=2\times3,\ 15=3\times5,\ 18=2\times3^2\]
等々.中学生,あるいは小学生の時から慣れ親しんでいるものでしょうが,次の問いはどうでしょう?
Q1. どんな合成数も素因数の積に分解できるのか?
Q2. できるとすれば,分解の仕方は1通りか?
Q1 は合成数の「分解の可能性」について,Q2 は「分解の一意性」についてですが,答えはどちらもYESです.では証明は?と聞かれたらどうでしょう.教科書でも見たことがありません.
以下,これらについて証明していきます.尚,本稿では数といえば自然数(1以上の整数)であるとします.
9.1 分解の可能性
定理 合成数は素数の積に分解できる.
証明
数学的帰納法で示します.
1° 1番小さい合成数4は $2\times2$ と素数の積に分解できます.
2° ある合成数を $n$ とし,$n$ より小さい合成数はすべて素数の積に分解できるとします.$n$ は合成数ですから,$n$ より小さな数 $a,b$ を用いて $n=ab$ と書き表すことができます.
$a$ と $b$ が共に素数であれば,$n$ はもはや素数の積に分解できています.
次に $a$ と $b$ の少なくとも一方が合成数の場合を考えます.$a$ が合成数としましょう.すると $a$ は $n$ より小さい数なので帰納法の仮定により,素数の積に分解できる数です.これは $b$ が合成数の場合でも同様です.
以上により分解可能性が証明されました。
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9.2 分解の一意性
定理 合成数を素数の積に分解する方法は,素因数の順序を無視すれば1通りである.
