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高校数学[総目次]

数学Ⅰ 第1章 2次関数

  スライド ノート 問題
1. 2次関数のグラフ [無料]    
2. 関数のグラフの移動      
3. 2次関数の最大・最小      
4. 2次関数の決定      
5. 2次関数のグラフと方程式      
6. 2次不等式とグラフ      
7. 2次方程式の解の配置      

1. 2次関数のグラフ

 中学校では「$y$ が $x$ の関数で,$y=ax^2(a\neq0)$ の形で表されるとき,$y$ は $x^2$ に比例する」という形で2次関数を教わる.これは私たちにとって大変大きな転換点であった.

 2次関数が導入される以前は,例えば「毎分70mで $x$ 分歩けば,その距離はいくらになるのか」といった,ひたすら等間隔に延びる世界——あるいは「水槽に蓄えられた5Lの水が,毎分2Lずつ増していく」という,きわめて素朴な直線的関係——そうした,筋道の見通しが良すぎるほど単純な現象だけが扱われていた.

 だが,2次関数という概念の導入は,その直線性に安住していた思考を,全く異なる景色へと導く契機となる.

 相似比が $1:x$ の2つの三角形が,面積に話題を移した瞬間に2乗の比を要求しはじめることや,高い場所から物体を放てば,$t$ 秒の移動距離が時間の2乗に比例して増大していくこと──こうした曲線的な事象の背後に潜む規則性を,数学はようやく視界に収めるのである.

 こうして私たちは,線形の世界を超えて曲線の領域へと踏み出す.高校の数学Ⅰでは,この拡張された視野をさらに押し広げ,より複雑な,そしてより豊かな形式へと踏み込んでいく.最終形は $y=ax^2+bx+c$ であり,ゴールまでのアウトラインは次のようになる.

$y=ax^2$ からスタートして ゴールの $y=ax^2+bx+c$ までのアウトライン

 「最終形が $y=ax^2+bx+c$ なら,最後の緑色の矢印は下向きであるべきではないか」——そういぶかる向きもあるだろう.確かに,学習の順序として最後に登場するのはこの $y=ax^2+bx+c$ であり,その意味では“終点”と呼んでも差し支えない.しかし,実際にそのグラフを描こうとする瞬間,私たちは必ずといってよいほど $y=a(x-p)^2+q$ という姿に書き換えることを求められる.つまり,$y=ax^2+bx+c$ は形式上の終着でありながら,視覚的理解のためには再び $y=a(x-p)^2+q$ へと引き戻される——その事情を踏まえて,緑の矢印は上向きにしてあるのだ.

 2次関数は高等学校のごく初期に学ぶ分野であるが,その影響力は異様なほど広い.他分野の問題に姿を変えて何度も割り込み,特に最大・最小を問う問題においては,最終的に2次関数の理論へと回収されていく構図が繰り返し現れる.大学入試において最重要視される理由も,まさにそこにある.

 2次関数とは,学習の扉を開く最初の段階で姿を現しながら,終盤にいたるまで決して手放すことのできない,数学の根幹そのものなのである.

1.1 $y=ax^2$ のグラフ

 中学校で習った関数 $y=ax^2$ の復習から始めよう.まずは $a$ が正の場合と負の場合に大きく分けられる.いくつかの例で,グラフの形状や特徴を確認しよう.

$a>0$ のとき

例題1 次の2次関数のグラフをかけ
① $y=x^2$
② $y=2x^2$
③ $y=\dfrac12x^2$

 $x$ の値が $-3$,$-2$,$-1$,$0$,$1$,$2$,$3$ の場合を計算して座標平面上にとり,滑らかに連結することでグラフを描いてみよう.

こたえ

① $y=x^2$

② $y=2x^2$

③ $y=\dfrac12x^2$

 これら3つのグラフは次のようになる:

 これらのグラフは放物線と呼ばれている.いずれも軸が直線 $x=0$ すなわち $y$ 軸で,グラフと軸との交点である原点 $(0,\ 0)$ を,これらの放物線の頂点という.また,これらのように下にとがった曲線を下に凸(とつ)という.$a$ の値が大きくなるにつれて,グラフがスリムになっていくことが見て取れる.

$a<0$ のとき

例題2 次の2次関数のグラフをかけ
① $y=-x^2$
② $y=-2x^2$
③ $y=-\dfrac12x^2$

 $a>0$ の場合と同じように $x$ が整数であるいくつかの値を計算し,グラフを描いてみよう.

こたえ

① $y=-x^2$

② $y=-2x^2$

③ $y=-\dfrac12x^2$

 これらのグラフは次のようになる.

 これらのグラフも放物線である.軸が直線 $x=0$ すなわち $y$ 軸であることや,グラフと軸との交点である原点 $(0,\ 0)$ がこれらの放物線の頂点であることも $a>0$ の場合と同様である.大きく異なるのはグラフの形状で,$a>0$ の場合ととがっている向きがが逆になっている.このような曲線を上に凸という.$a$ の値が小さくなるにつれて( $a$ の絶対値が大きくなるにつれて),グラフがスリムになっていくことが見て取れる.

 $y=ax^2$ の $a$ の値を変化させていったときのグラフの様子を,下のアニメーションで確認しておこう.

アニメーション
$y=ax^2$ の $a$ の値を
3から-3まで変化させたときの
グラフの変化の様子.

 関数 $y=ax^2$ のグラフの特徴の1つとして,$y$ 軸に関して対称であるということが挙げられる.直線 $x=0$ ($y$ 軸) をこの放物線のという.また,放物線と軸が交わる点をこの放物線の頂点という.放物線 $y=ax^2$ の頂点は原点 $(0,\ 0)$ である.

1.2 $y=ax^2+q$ のグラフ

 $y=x^2+2$ のグラフは $y=x^2$ のそれと比べてどう違うか.

 この関数について,$x$ の値からスタートして $y$ の値が決まる手順は次の通りである:

$x$ $\to$ $x^2$ $\to$ $x^2$+2 $\to$ $y$

 $x$ の値が $-2,\ -1,\ 0,\ 1,\ 2$ のときの $y$ の値を調べてみると次のようになる.

$x$ $x^2$ $x^2 \color{red}{+2}$ $y$
$-2$ $4$ $6$ $6$
$-1$ $1$ $3$ $3$
$0$ $0$ $2$ $2$
$1$ $1$ $3$ $3$
$2$ $4$ $6$ $6$

 ここで $y=x^2+2$ と $y=x^2$ の関係を探ってみよう.上の考察から

$y=x^2+2$ の $x=X$ のときの値は, $y=x^2$ の $x=X$ のときの値より2だけ大きい

ことがわかる.これを言い換えると

放物線 $y=x^2+2$ の $x=X$ のときの $y$ 座標は,放物線 $y=x^2$ の $x=X$ のときの $y$ 座標より2だけ大きい

ということがいえる.図で表すと次のようになる:

$y=x^2+2$ のグラフ

 いま,$x$ の値のいくつかについて見てきたが,これを全ての $x$ について隙間なく調べてみると次のようになり,これが $y=x^2+2$ のグラフである.

 つまり $y=x^2+2$ のグラフは $y=x^2$ のグラフを $y$ 軸方向に2だけ平行移動したものとなっている.

 一般に,放物線 $y=ax^2\ \ \cdots$ ①上の任意の点を $(x,y)$ とし,この点を $y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動した点を $(X,Y)$ とする:

$a>0,\ q>0$ の場合

 $(x,\ y)$ と $(X,\ Y)$ の関係は,

\[\left\{ \begin{array}{l} X=x\\[5pt] Y=y+q \end{array}\right.\ \ \ \therefore \left\{\begin{array}{l} x=X\\[5pt] y=Y-q \end{array}\right.\]

 これらを①に代入すると,$X$ と $Y$ の関係式が得られる:

\[Y-q=aX^2\]

\[\therefore Y=aX^2+q\]

 これは点$(X,\ Y)$ が,$y=ax^2+q$ のグラフ上にあることを意味する.

 この移動に伴って,2次関数 $y=ax^2+q$ のグラフの頂点は点 $(0,\ q)$ に移動する.一方,グラフの軸は,$y$ 軸のままで,変化しない.

y=ax²+q のグラフ


2次関数 $y=ax^2+q$ のグラフは,$y=ax^2$ のグラフを $y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動したものとなる.

アニメーション

軸は $y$ 軸(直線 $x=0$)

頂点は 点 $(0,\ q)$

1.3 $y=a(x-p)^2$ のグラフ

 $y=(x-1)^2$ のグラフは $y=x^2$ のそれと比べてどう違うか.

 この関数について,$x$ の値からスタートして $y$ の値が決まる手順は次の通りである:

$x$ $\to$ $x$-1 $\to$ $(x-1)^2$ $\to$ $y$

 $x$ の値が $-1,\ 0,\ 1,\ 2,\ 3$ のときの $y$ の値を調べてみると次のようになる.

$x$ $x\color{red}{-1}$ $(x-1)^2$ $y$
$-1$ $-2$ $4$ $4$
$0$ $-1$ $1$ $1$
$1$ $0$ $0$ $0$
$2$ $1$ $1$ $1$
$3$ $2$ $4$ $4$

 ここで $y=(x-1)^2$ と $y=x^2$ の関係を探ってみると,上の具体例の考察から

$x$ のある値 $X$ に対する $(x-1)^2$ の値は, $x $ が $X-1$ のときの $y=x^2$ の値と等しい

ことがわかる.これを言い換えると

放物線 $y=(x-1)^2$ の $x=X$ のときの $y$ 座標は,放物線 $y=x^2$ の $x=X-1$ のときの $y$ 座標と等しい

ということがいえる.図に表すと次のようになる:

$y=x^2$ 上の点(黄色)と,対応する $y=(x-1)^2$ 上の点(赤色).
例えば,$y=(x-1)^2$ の $x=2$ のときの $y$ 座標は,$y=x^2$ の $x=1$ のときの $y$ 座標と等しい.

 この図を見ると,$x$ の各値に対して「$x-1$」というのは1だけ左側の値を指しており,そこにおける $x^2$ の値が右側へスライドしたものが $y=(x-1)^2$ の $y$ の値であることがわかる.

 いま,$x$ の値のいくつかについて見てきたが,これを全ての $x$ について隙間なく調べてみると次のようになり,これが $y=(x-1)^2$ のグラフである.

$y=(x-1)^2$ のグラフ

 つまり $y=(x-1)^2$ のグラフは $y=x^2$ のグラフを $x$ 軸方向に1だけ平行移動したものとなっているのである.

 放物線 $y=ax^2\ \ \cdots$ ①上の任意の点を $(x,y)$ とし,この点を $x$ 軸方向に $p$ だけ平行移動した点を $(X,Y)$ とする:

$a>0,\ p>0$ のとき

 $(x,y)$ と $(X,Y)$ の関係は,

\[\left\{ \begin{array}{l} X=x+p\\[5pt] Y=y \end{array}\right.\ \ \ \therefore \left\{\begin{array}{l} x=X-p\\[5pt] y=Y \end{array}\right.\]

 これらを①に代入すると,$X$ と $Y$ の関係式が得られる:

\[Y=a(X-p)^2\]

 これは点 $(X,\ Y)$ が $y=a(x-p)^2$ のグラフ上にあることを意味する.

 この移動に伴って,2次関数 $y=a(x-p)^2$ のグラフの軸は直線 $x=p$ に移動し,頂点も点 $(p,\ 0)$ に移動する.

y=a(x-p)² のグラフ


2次関数 $y=a(x-p)^2$ のグラフは,$y=ax^2$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$ だけ平行移動したものとなる.

アニメーション

軸は 直線 $x=p$

頂点は 点 $(p,\ 0)$

1.4 $y\!=\!a(x\!-\!p)^2\!+\!q$ のグラフ

 1.2節と1.3節で $y$ 軸方向と $x$ 軸方向の平行移動の式を導いたが,それをミックスしたものがこの節で扱う $y=a(x-p)^2+q$ の形で,これが2次関数の変形の最終形となる.

 放物線 $y=ax^2\ \ \cdots$ ①上の任意の点を $(x,y)$ とし,この点を

$x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$

だけ平行移動した点を $(X,Y)$ とする:

$a>0,\ p>0,\ q>0$ の場合

 $(x,y)$ と $(X,Y)$ の関係は,

\[\left\{ \begin{array}{l} X=x+p\\[5pt] Y=y+q \end{array}\right.\ \ \ \therefore \left\{\begin{array}{l} x=X-p\\[5pt] y=Y-q \end{array}\right.\]

 点 $(x,\ y)$ は放物線①上の点だから代入すると,$X$ と $Y$ の関係式が得られる:

\[Y-q=a(X-p)^2\]

\[\therefore Y=a(X-p)^2+q\ \ (y=a(x-p)^2+q)\]

 従って次が成り立つ:

y=a(x-p)²+q のグラフ


2次関数 $y=a(x-p)^2+q$ のグラフは,$y=ax^2$ のグラフを

$x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$

だけ平行移動したものとなる.このとき,

軸:直線 $x=p$,頂点 $(p,\ q)$

アニメーション

1.5 $y\!=\!ax^2\!+\!bx\!+\!c$ のグラフ

 どのような2次関数も $y=ax^2+bx+c$ の形で表せるが,この形のままだとグラフをかくことは難しい.1.4節で学んだ $y=a(x-p)^2+q$ の形になってこそ,このグラフの状況を詳しくとらえることができるのである.

ポイント 変形して $\boldsymbol{y=a(x-p)^2+q}$ の形にする.

補足

 $ax^2+bx+c$ を $a(x-p)^2+q$ の形に変形することを平方完成するという.演習問題 に平方完成のやり方を示したアニメーションを用意した.

例題 放物線 $y\!=\!-3x^2\!+\!6x\!+\!4$ の軸と頂点の座標を求め,グラフをかけ.

 解答例を表示する

このあとは演習問題 で理解を確認!

次は,2.関数のグラフの移動

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数学Ⅰ 第1章 2次関数

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2. 関数のグラフの移動      
3. 2次関数の最大・最小      
4. 2次関数の決定      
5. 2次関数のグラフと方程式      
6. 2次不等式とグラフ      
7. 2次方程式の解の配置