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高校数学[総目次]
数学Ⅰ 第2章 三角比
スライド | ノート | |
1. 正接,正弦,余弦 | [無料] | |
2. 三角比の相互関係 | [無料] | |
3. 三角比の拡張 | [会員] | |
4. 正弦定理 | [会員] | |
5. 余弦定理 | [会員] | |
6. 三角形の面積 | [会員] |

5.余弦定理
5.1 余弦定理
△ABCにおいて,次の余弦定理と呼ばれる関係が成り立つ:

\[\begin{align*}
a^2&=b^2+c^2-2bc\cos A\\[5pt]
b^2&=c^2+a^2-2ca\cos B\\[5pt]
c^2&=a^2+b^2-2ab\cos C
\end{align*}\]
証明の方針
$\boldsymbol{a^2=b^2+c^2-2bc\cos A}$ を示す場合
1.Cから直線ABに垂線CHを下ろす.
↓
2.△CBHで三平方の定理を利用.
証明
$a^2=b^2+c^2-2bc\cos A$ を示す.
1° $A$ が鋭角のとき


Cから辺ABまたはその延長上に垂線CHを引く.$B$ が鋭角,または鈍角のときは,△CBHにおいて三平方の定理により, \[{\rm CB}^2={\rm BH}^2+{\rm CH}^2\] \[\therefore a^2=|c-b\cos A|^2+(b\sin A)^2\] が成り立つ.$B$ が直角の場合は△CBHがつぶれてしまうが, $a=b\sin A$,$c=b\cos A$ であるから上の式はこの場合も含まれる.この式の右辺は \[\begin{align*} &(c^2-2bc\cos A+b^2\cos^2A)+b^2\sin^2A\\[5pt] =&b^2(\sin^2A+\cos^2A)+c^2-2bc\cos A\\[5pt] =&b^2+c^2-2bc\cos A \end{align*}\] となるから, \[a^2=b^2+c^2-2bc\cos A\] が成り立つ.
2° $A$ が直角のとき

$\cos A=\cos90^\circ=0$ であるから,
\[a^2=b^2+c^2-2bc\cos90^\circ\]
すなわち
\[a^2=b^2+c^2\]
を示せばよいが,三平方の定理によりこれは成り立つ.
3° $A$ が鈍角のとき

Cから辺ABの延長上に垂線CHを引く. \[\begin{align*} {\rm AH}&={\rm CA}\cos(180^\circ-A)\\[5pt] &=-{\rm CA}\cos A=-b\cos A\\[5pt] {\rm CH}&={\rm CA}\sin(180^\circ-A)\\[5pt] &=b\sin A \end{align*}\] 従って,△CBHにおいて三平方の定理により, \[{\rm CB}^2={\rm BH}^2+{\rm CH}^2\]
\[\begin{align*}
\therefore a^2&=\{c+(-b\cos A)\}^2+(b\sin A)^2\\[5pt]
&=(c-b\cos A)^2+(b\sin A)^2
\end{align*}\]
この式は,$A$ が鋭角のときと同じ式 であるから, \[a^2=b^2+c^2-2bc\cos A\] が成り立つ.
以上により,$a^2=b^2+c^2-2bc\cos A$ が示された.他の2式も同様に示される.
■
補足
上の証明では $A$ の大きさで3通りに場合分けして三平方の定理を利用したが,以下のように2点間の距離の公式 (数学Ⅱ)で導けば,場合分けは必要ない.

座標平面を用意し,△ABCを頂点Aが原点にくるようにして辺ABを $x$ 軸の正の部分に置き,頂点Cが $x$ 軸より上側の位置になるように配置する.
このとき,Bの座標は $(c,0)$ であり,また頂点Cの座標を $(x,y)$ とすると,原点を中心とする半径 $b$ の半円を考えて
\[\cos A=\frac xb,\ \ \sin A=\frac yb\]
\[\therefore x=b\cos A,\ \ y=b\sin A\]
となるから,頂点Cの座標は
\[(b\cos A,\ b\sin A)\]
である.よって,2点間の距離の公式により,
\[\begin{align*}
{\rm BC}^2&=(c-b\cos A)^2+(0-b\sin A)^2\\[5pt]
&=(c^2-2bc\cos A+b^2\cos^2A)+b^2\sin^2A\\[5pt]
&=b^2(\sin^2A+\cos^2A)+c^2-2bc\cos A\\[5pt]
&=b^2+c^2-2bc\cos A
\end{align*}\]
■
例題 $b=2,\ c=3,\ A=60^\circ$ のとき,$a$ を求めよ.

こたえ

5.2 余弦定理その2
余弦定理 の3つの式を cos について解くと,次の式が得られる:
余弦定理その2
\[\begin{align*}
\cos A&=\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}\\[5pt]
\cos B&=\frac{c^2+a^2-b^2}{2ca}\\[5pt]
\cos C&=\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}
\end{align*}\]
例題 △ABCにおいて,$a=1+\sqrt3$,$b=2$,$c=\sqrt6$ のとき,$B,\ C$ の大きさを求めよ.

こたえ
補足
$B=45^\circ$ が求まったあとでは,$C$ を正弦定理で求めることもできるが,$\sin$ では次のように吟味が必要になる場合がある:
正弦定理 により \[\frac2{\sin 45^\circ}=\frac{\sqrt6}{\sin C}\] \[\therefore \sin C=\frac{\sqrt6\sin45^\circ}2=\frac{\sqrt3}2\] $0^\circ< C< 135^\circ$ より,$C=60^\circ,\ 120^\circ$.(ここで吟味が必要.)
次の事実を使う:
三角形の辺と角の大小
三角形において,辺の長さの大小と,対応する角の大小は一致する.
(この定理の略証はスライド (会員向け)を参照.)
本問の場合,$a>c>b$ により $A>C>B$ となり,$C$ は最大の角ではないから鋭角.($C$ が $90^\circ$ 以上なら $A$ も $90^\circ$ 以上となり,そうすると三角形に $90^\circ$ 以上の角が2つもあることになってしまう!)
従って $\underline{\boldsymbol{C=60^\circ}}$

5.3 角の大小

$a^2=b^2+c^2$
$\iff$ △ABCは辺BCを斜辺($\angle{\rm A}=90^\circ$)とする直角三角形
つまり,$a^2\neq b^2+c^2$ のとき,$\angle{\rm A}\neq90^\circ$ である.
それでは $a^2\neq b^2+c^2$ のとき,$\angle{\rm A} < 90^\circ$?,$\angle{\rm A} > 90^\circ$?
余弦定理 $\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$ において,(分母)$ > 0$ であるから,
する.よって $0^\circ< A< 180^\circ$ のとき,
1°
\[\begin{align*}
A<90^\circ&\iff \cos A>0\\[5pt]
&\iff b^2+c^2-a^2 > 0\\[5pt]
&\iff a^2<b^2+c^2
\end{align*}\]
2° \[\begin{align*} A>90^\circ&\iff \cos A<0\\[5pt] &\iff b^2+c^2-a^2 < 0\\[5pt] &\iff a^2>b^2+c^2 \end{align*}\]
まとめ
\[\begin{align*}
a^2<b^2+c^2&\iff A < 90^\circ\\[5pt]
a^2>b^2+c^2&\iff A > 90^\circ
\end{align*}\]
例題 △ABCにおいて,$\sin A:\sin B:\sin C=5:7:3$ のとき,△ABCは鋭角三角形,直角三角形,鈍角三角形のどれか.
こたえ

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演習問題
解答
(1) ヒント ヒント
次の条件を満たす△ABCは,どのような形の三角形か.\[\sin A=2\cos B\sin C\]
POINT
三角比は正弦定理,余弦定理を用いてすべて辺の長さの式にするのが定石です.
△ABCの外接円の半径を $R$ とすると,