高校数学[総目次]
高校数学ワンポイント

17.1 教科書による円順列の説明
例題 A,B,C,Dの4人が円形に並ぶ方法は何通りあるか.ただし,回転して同じになるものは区別しない.
少し程度の高い教科書を見ると,円順列に対する考え方が2つ挙げられています。
その1 同じ並び方になる個数に着目する
この4人を1列に並べる方法は 4!=24通りです.これらを輪の形にすると区別できないものが4通りずつありますから,

その2 1つを基準にして考える

「その1」の考え方では,同じものかどうかを回転させてチェックしなければならず大変です。そこで回転させなくてもいい様に,誰か1人を基準にして,その基準にした1人を固定して考えると,もう回転させてチェックしなくてもよくなります.例えばAを固定して考えると,残りの3人の順列を考えればよくなりますから,
となります.(数学A第1章 場合の数 4.円順列・重複順列 )
この2つの方法を比較すると,くるくる回して考えなければならない「その1」よりは,基準を設定して(1つを固定して)考えた「その2」の方が良さそうに見えます.
ところが同じものを含むような場合では,必ずしも基準を設定する「その2」が適しているという訳でもありません.次の入試問題を見てください.
赤い玉と白い玉がそれぞれ6個ずつ合計12個ある.これらをすべて円周上に等間隔に並べる並べ方の総数を求めよ.ただし,回転して並び方が同じになるものは同じ並べ方と考える.
(慶応大・改)
この問題の難しさは
基準となるものを設定しづらい
というところにあります.同じものを含んでいる場合であっても,その中にただ1つしかないものも含まれていれば話はずっとシンプルで,例えばこの問題でも赤6白6に加えて黄1というように,1個しかないものがあれば,その黄色を固定して考えればよく,「その2」でも何とかなります.ところがこの問題のようにそういうものがない,すなわちどれも複数個存在している場合には,「その2」でやろうとすると基準が選びにくく,場合分けが多くなりがちです.そこで大活躍するのが「その1」の考え方です.この考え方を用いれば,劇的に負担を軽減できます.

17.2 「その1」の考え方について,より深く
上の難問題は,先に挙げた「その1」「その2」のどちらの方法でも解くことは可能です.しかし,「その1」つまり「同じ並び方になる個数に着目する」方法は,「その2」つまり「1つを基準にして考える」方法と比べて比較にならないほど容易に答えまでたどり着くことができます.その解法を示す前に,この問題を攻略するための基本姿勢を学んでおきましょう.
異なる4つのものを円形に並べる
「その1」の考え方,つまり同じ並び方になる個数について,深く掘り下げておきましょう.
この考え方の基本は「1列に並べた状態で考える」です.
例1 A,B,C,Dの4つの文字を円形に並べる方法は何通りか.
ABCDがこの順に1列に並んだ場合を例にとりましょう.この列の左端を右端にもっていくことを4度繰り返すと元のABCDの列に戻ります.これを「周期4の列」と名付けておきます.つまり「周期

上の図では列を斜めにずらしながら書いていますが,これは単に見やすさのためにそうしているだけです.そして円順列では青色で囲まれた4つの列は区別しません.他の列でも考えてみましょう.例えばDCBAという列では
というように周期4の列です.つまり,A,B,C,Dを1列に並べてできる列は,周期4の列となっているため,円順列の方で考えると4重にカウントされてしまっていることになるのです.従ってA,B,C,Dの4つを円形に並べる方法は,1列に並べたときの順列である

同じものを含むものを円形に並べる
同じものを含んだこの場合こそが,本稿でお伝えしたい主題です.
例2 A,A,B,Bの4つを円形に並べる方法は何通りか.
この4つの文字を1列に並べる方法は,同じものを含む順列の考え方を用いて

このように周期
A,A,B,Bの4つ文字を用いたとき,周期2の列はいくつできるでしょうか?それは「ABAB」と「BABA」の2つだけです.そして残りの
以上により答えは,周期2の列から1通りと,周期4の列から1通りの合計2通りとなります.

例3 A,A,A,B,B,B の6つを円形に並べる方法は何通りか.
それでは文字をもう1つずつ増やして,A,A,A,B,B,Bの6つを円形に並べる場合を考えましょう.この6つの文字を1列に並べる方法は,同じものを含む順列の考え方を用いて
- 周期2の列が「ABABAB」と「BABABA」の2通り
- 残りの20-2=18通りが周期6の列
となります.
注意 A,A,A,B,B,B の6文字から周期3や周期4といった列を作ることはできません.例えば周期3の列を作ろうとすると,この6文字を,3文字ずつ同じ文字から構成される2つのグループに分けなければなりませんが,そのような分け方はできません.
周期2の列の2通りは,円順列では区別がつきません.ところが1列に並べたときにはこの2通りを区別していますから,円順列で考える際には2重にカウントされていることになります.よって
周期6の列の18通りは,円順列で考えると区別のつかないものが6つずつ含まれている,即ち6重にカウントされていますから,円順列では
以上により答えは,周期2の列から1通りと,周期6の列から3通りの合計4通りとなります.


17.3 難問題の解答
それではいよいよ冒頭の難問題を解決していきましょう.問題を再掲します.
赤い玉と白い玉がそれぞれ6個ずつ合計12個ある.これらをすべて円周上に等間隔に並べる並べ方の総数を求めよ.ただし,回転して並び方が同じになるものは同じ並べ方と考える.
(慶応大・改)