高校数学[総目次]
数学Ⅲ 第3章 積分法
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1. 不定積分 | [無料] | |
2. 置換積分法(不定積分) | [無料] | |
3. 部分積分法(不定積分) | [無料] | |
4. 定積分とその性質 | [会員] | |
5. 置換積分法(定積分) | [会員] | |
6. 部分積分法(定積分) | [会員] | |
7. 定積分と微分法 | [会員] | |
8. 定積分と和の極限 | [会員] | |
9. 定積分と不等式 | [会員] | |
10. 定積分の応用(面積) | [会員] | |
11. 定積分の応用(体積) | [会員] | |
12. 定積分の応用(回転体の体積) | [会員] | |
13. 曲線の長さ |
4.定積分とその性質
4.1 定積分とは
定積分については既に数学Ⅱで学習済みである.しかしここまでの学習で,積分できる関数のクラスは数学Ⅱまでの範囲とは比較にならないほど広がった.そこで改めて定積分とは何なのかという復習から始めたい.
定積分とは 閉区間 $[a,b]$ で連続な関数 $f(x)$ の不定積分(原始関数)を $F(x)$ とすれば, \[F(b)-F(a)\ \ \cdots\mbox{①}\] を「関数 $f(x)$ の $a$ から $b$ までの定積分」といい,①を \[\int_a^b\!f(x)\,dx\] で表す.
定義の中に $f(x)$ の連続性があるが,これは積分可能性に関する断り書きであって,高校数学の範囲ではこの点が問題になることはほとんどない.数学Ⅱの定積分 の説明ではこのような記載はなかったが,それは数学Ⅱの定積分で相手にする関数が整式に限られていたためである.整式とは $2x+3$ や $x^2$ などのことを指すが,これらは実数全体で連続だから,もちろんその一部である閉区間 $[a, b]$ でも連続である.
補足1
①は $\Bigl[F(x)\Bigr]_a^b$ とも表す.即ち
\[\int_a^bf(x)dx=\Bigl[F(x)\Bigr]_a^b=F(b)-F(a)\]
補足2
$F(x)+C\ (C$ は定数)もまた $f(x)$ の不定積分であるが, \[\begin{align*} \Bigl[F(x)+C\Bigr]_a^b&=\{F(b)+C\}-\{F(a)+C\}\\[5pt] &=F(b)-F(a) \end{align*}\] であるから定積分の値は変わらない.
補足3
定数 $a,b$ に対して①は(定数)$-$(定数)だから,定積分は定数である.( $x$ の関数ではない.)
4.2 定積分の性質
\[\begin{align*} &\mbox{①}\ \int_a^b\!kf(x)\,dx=k\int_a^b\!f(x)\,dx\ \ (k\ \mbox{は定数})\\[5pt] &\mbox{②}\ \int_a^b\!\{f(x)\!+\!g(x)\}dx=\int_a^b\!f(x)\,dx\!+\!\int_a^b\!g(x)\,dx\\[5pt] &\mbox{③}\ \int_a^b\!f(x)\,dx=-\int_b^a\!f(x)\,dx\\[5pt] &\hspace{5mm}\left(\mbox{特に,}\int_a^a\!f(x)\,dx=0\right)\\[5pt] &\mbox{④}\ \int_a^b\!f(x)\,dx=\int_a^c\!f(x)\,dx+\int_c^bf(x)\,dx \end{align*}\]
証明
③\[\begin{align*} \mbox{左辺}&=F(b)-F(a)\\[5pt] &=-\{F(a)-F(b)\}\\[5pt] &=\mbox{右辺} \end{align*}\] また,③において $b$ も $a$ とおくと, \[\int_a^a\!\!f(x)\,dx=-\int_a^a\!\!f(x)\,dx\] \[\therefore \int_a^a\!\!f(x)\,dx=0\] (定義より $\displaystyle\int_a^a\!\!f(x)\,dx\!=\!F(a)\!-\!F(a)=0$ でもよい.)
④\[\begin{align*} \mbox{右辺}&=\{F(c)-F(a)\}+\{F(b)-F(c)\}\\[5pt] &=F(b)-F(a)\\[5pt] &=\mbox{左辺} \end{align*}\]
■
4.3 絶対値のついた関数の定積分
例題 定積分 $\displaystyle\int_{-1}^2|x^2-4x|dx$ を求めよ.
被積分関数に絶対値が含まれる場合,そのままの状態で積分しようとしてはいけない.積分する際は,常に絶対値記号を外してから行うのである.絶対値記号を外すといっても,定義域全体を考える必要はない.私たちが関心があるのは積分区間である $[-1,\ 2]$ だけである.この区間内で,絶対値記号の中身が0以上か否かを判定する.そして,積分区間の途中で符号が変わるたびに,積分区間を分けて計算しなければならない.
ポイント
絶対値のついたままでは積分できない
こたえ
積分区間である $[-1,\ 2]$ において,
\[|x^2-4x|=\left\{\begin{array}{ll}x^2-4x&(-1\leqq x\leqq0)\\[5pt]-(x^2-4x)&(0\leqq x\leqq2)\end{array}\right.\]
よって
\[\begin{align*} \int_{-1}^2|x^2-4x|dx&=\int_{-1}^0(x^2-4x)dx+\int_0^2\{-(x^2-4x)\}dx\\[5pt] &=\left[\frac{x^3}3-2x^2\right]_{-1}^0-\left[\frac{x^3}3-2x^2\right]_0^2\\[5pt] &=\frac{0^3-(-1)^3}3-2\{0^2-(-1)^2\}-\left\{\frac{2^3-0^3}3-2(2^2-0^2)\right\}\\[5pt] &=\dfrac13+2-\left(\frac83-8\right)\\[5pt] &=\frac{23}3 \end{align*}\]
補足
絶対値を含む関数の積分では,符号違いの同じ関数を積分することがしばしばである.本問においても,$x^2-4x$ と $-(x^2-4x)$ は符号が異なるだけである.こういった場合の積分計算では同じ式を何度も書くことになり,見た目が見にくい上に書くのも疲れる.そこで次のように予め原始関数を計算しておくと,見やすくなる上に記述が簡略化できる.
こたえ(その2)
$f(x)=x^2-4x$,$F(x)=\dfrac{x^3}3-2x^2$ とおく.(←ここがポイント)
積分区間である $[-1,\ 2]$ において,
\[|x^2-4x|=\left\{\begin{array}{ll}x^2-4x&(-1\leqq x\leqq0)\\[5pt]-(x^2-4x)&(0\leqq x\leqq2)\end{array}\right.\]
であるから,
\[\begin{align*} \int_{-1}^2|x^2-4x|dx&=\int_{-1}^0f(x)dx+\int_0^2\{-f(x)\}dx\\[5pt] &=\Bigl[F(x)\Bigr]_{-1}^0-\Bigl[F(x)\Bigr]_0^2\\[5pt] &=2F(0)-F(-1)-F(2)\\[5pt] &=2\cdot0-\left(-\dfrac13-2\right)-\left(\frac83-8\right)\\[5pt] &=\frac{23}3 \end{align*}\]
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