高校数学[総目次]
高校数学ワンポイント

13.整式の除法(発展編)
整式の除法については数学Ⅱ第1章 式と証明の1.整式の除法で基本的なことを学びました.また,数学Ⅱ第2章 複素数と方程式の4.剰余の定理・因数定理では,整式の除法における余りについて学びました.ここではこれらの発展的な問題について説明します.
例題 $x$ の整式 $f(x)$ を $(x+1)^2$ で割ると余りが $2x-2$ で,$(x+2)^2$ で割ると余りが $3x-1$ であるという.$f(x)$ を次の式で割った余りを求めよ.
(1) $x+1$
(2) $x+2$
(3) $(x+1)^2(x+2)$
(4) $(x+1)^2(x+2)^2$
答
(1),(2)
$f(x)$ を $(x+1)^2$ で割ると余りが $2x-2$ ですから,$Q(x)$ を整式として
\[f(x)=(x+1)^2Q(x)+2x-2\]
と表せます.$Q(x)$ をこの割り算の商といいます.
剰余の定理によれば,$f(x)$ を $x+1$ で割った余りは $f(-1)$ ですから,
\[f(-1)=0^2\cdot Q(-1)+2\cdot(-1)-2=-4.\]
従って(1)の余りは $-4$ です.同様にして(2)は $f(-2)=3\cdot(-2)-1=-7$ から余りは $-7$ となります.
(1)(2)のこたえ (1) $-4$ (2) $-7$

別解
さて,のちの発展問題に対処するため,この問題を別の方法でも解いてみます.
$f(x)$ を $x+1$ で割ることを考える際,$(x+1)^2Q(x)$ の部分は $x+1$ で割り切れますから
$\boldsymbol{f(x)}$ を $\boldsymbol{x+1}$ で割った余りは $\boldsymbol{2x-2}$ を $\boldsymbol{x+1}$ で割った余りに等しい
ということがいえます.これをもっと簡単な例でいうと,$24\div7$ の余りを求めたいとき,
\[24=7\times2+10\]
と変形したとして,$7\times2$ の部分は 7 で割り切れますから,あとは残った 10 を 7 で割った余りを考えればよいということです.合同式の考え方と同じですね.
$2x-2=2(x+1)-4$ ですから,$f(x)$ を $x+1$ で割った余りは $-4$ です.
同様にして,
$f(x)=(x+2)^2(x$ の整式$)+3x-1$
ですから,$f(x)$ を $x+2$ で割った余りは $3x-1$ を $x+2$ で割った余りに等しく,
\[3x-1=3(x+2)-7\]
と変形できますから余りは $-7$ です.
ここで大切なことは,
$\boldsymbol{f(x)=g(x)h(x)+r(x)}$ と変形できるとき,$\boldsymbol{f(x)}$ を $\boldsymbol{g(x)}$ で割った余りは,$\boldsymbol{r(x)}$ を $\boldsymbol{g(x)}$ で割った余りに等しい
ということです.

(3)
$f(x)$ を $(x+1)^2(x+2)$ で割った余りを $R(x)$ とすれば,
$f(x)=(x+1)^2(x+2)(x$ の整式$)+R(x)$
と表せます.そして既存の式から上の式を作り出すことを考えます.
$f(x)=(x+1)^2Q(x)+2x-2$ でしたから,上の式をにらんで $Q(x)$ をあらかじめ1次式 $x+2$ で割っておきます.この
ポイント 商を予め適当な式で割っておく
というのがコツです.余りを定数 $a$ とすると,
$Q(x)=(x+2)(x$ の整式$)+a$
と書けます.ここに整式の除法におけるもう1つの重要な事柄が出てきました。それは
(割る式の次数) > (余りの次数)
です.割る式 $x+2$ は $x$ の1次式ですから,余りは0次式,すなわち定数です.それを $a$ とおいたのです.
