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高校数学[総目次]

数学Ⅱ 第6章 微分法・積分法

  スライド ノート 問題
1. 微分係数      
2. 導関数      
3. 接線      
4. 関数の値の変化      
5. 極大・極小      
6. 関数のグラフと方程式・不等式      
7. 不定積分      
8. 定積分      
9. 様々な定積分      
10. 面積      

1. 微分係数

1.1 平均変化率

 1次関数 $y=2x+3$ を例にとると,変化の割合すなわち

変化の割合$=\dfrac{y\mbox{の増加量}}{x\mbox{の増加量}}$

は $x$ の値が「どこからどこまで増加するのか」という制限がなく常に2である.ところが一般の関数ではそうはいかない.

 例えば2次関数 $y=x^2$ は $x$ の値が1から4まで3だけ増加したとき,それに伴って $y$ は1から16まで15だけ増加するから,変化の割合は $\dfrac{15}3=5$ である.一方 $x$ を同じ3だけ増加させるといっても,例えば0から3まで増加させるとき,$y$ は0から9まで9だけ増加するから,変化の割合は $\dfrac93=3$ となって先程の5と一致していない.

 このように,一般の関数では $x$ の値を「①どこから」「②どこまで」増加させるかの2つの要素によって,変化の割合は変わってくるのである.

 そこで新しい用語として 平均変化率 を導入する.これは変化の割合の発展版ともいえるもので,「$x$ が $a$ から $b$ まで変化する」という情報を取り入れた次の式で定義される:

平均変化率 $=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$

 この式を関数 $f(x)$ の $x$ の値が $a$ から $b$ まで変化したときの平均変化率というのである.

補足

 平均変化率は,$f(x)$ のグラフ上の2点を通る直線(図では直線AB)の傾きを表す.

例題 $f(x)=x^2$ のとき,$x$ が1から2まで変化したときの $f(x)$ の平均変化率を求めよ.

 平均変化率$=\dfrac{2^2-1^2}{2-1}=\underline{\boldsymbol{3}}$

1.2 極限値

 例えば,関数 $f(x)=x+1$ を考える.この $x$ の値を,1と異なる値をとりながら限りなく1に近づけると,$f(x)$ はどのような値に近付いていくだろうか?

 グラフからもわかるように,$f(x)$ は 2 に限りなく近付く.同様に考えて,$x$ が限りなく2に近付けば, $f(x)$ は 3 に限りなく近付くし, $x$ が $-1$ に限りなく近付けば,$f(x)$ は 0 に限りなく近付く.

 一般に,関数 $f(x)$ において,$x$ が $a$ と異なる値をとりながら $a$ に限りなく近付くとき,それに応じて $f(x)$ が $\alpha$アルファ に限りなく近付くならば,$\alpha$ を $\boldsymbol x$ が $\boldsymbol a$ に限りなく近付くときの $\boldsymbol{f(x)}$ の極限値といい,

\[\lim_{x\to a}f(x)=\alpha\]

または,

$x\to a$ のとき,$f(x)\to\alpha$

で表す.

●定数関数の極限値

 例えば関数 $f(x)=2$ というのは,どんな $x$ の値に対しても2の値をとるような関数で,このような関数を定数関数という.この関数は $x$ をどのような値に近づけようとも極限値が常に2になるというのは明らかである.

定数関数の極限値 $f(x)=c$ ($c$ は定数) のとき,\[\lim_{x\to a}f(x)=c\]

\[\lim_{x\to5}4=4\]

注意

 例えば,$f(x)=\dfrac1{x^2}$のとき,${\displaystyle\lim_{x\to0}}\ f(x)$ は値がどんどん大きくなるため,一定の値に限りなく近付かない.従ってこの場合の極限は存在しない.(極限値は $\infty$ というのは間違い.「$\infty$」は値ではない.)

発展的注意

 細かい注意をしておくと,先の $f(x)=x+1$ では $\displaystyle\lim_{x\to1} f(x)=2$ になり,これは $f(1)=2$ と一致する.同様に,$\displaystyle\lim_{x\to2} f(x)=3$ は,$f(2)=3$ と等しく,$\displaystyle\lim_{x\to -1} f(x)=0$ は,$f(-1)=0$ と等しい.この結果を見ると「$\displaystyle\lim_{x\to a} f(x)$ を求めることは,$f(a)$ を計算することではないか」と思ってしまうかもしれないが,これは必ずしも正しくない.例えば関数 $g(x)=\dfrac{x^2-1}{x-1}$ において, $x$ の値を限りなく1に近づけてみよう.この関数の (分母)$=x-1\neq0$ より $x$ は1をとれないから,$\boldsymbol{ g(1)}$ などというものは考えられない.しかし $x$ が1と異なる値をとる限りにおいて,

\[g(x)=\dfrac{x^2-1}{x-1}=\dfrac{(x+1)(x-1)}{x-1}=x+1\]

となり,関数の値は $x+1$ の値と一致する.

$y=\dfrac{x^2-1}{x-1}$ のグラフ

 従って,グラフからもわかるように,$g(x)=\dfrac{x^2-1}{x-1}$ の $x$ を,1と異なる値をとりながら限りなく1に近づけると,$g(x)$ は限りなく2に近付くのである.

 つまり,極限値とは関数が限りなく近付く値であって,関数がその値をとれるかどうかには全く関心がない.ほとんど同じ例だが,

\[f(x)=\left\{
\begin{array}{ll}
x+1&(x\neq1)\\
5&(x=1)
\end{array}\right.\]

は,$x$ が1と異なる値をとりながら限りなく1に近付くとき,$f(x)$ は限りなく2に近付く.

 極限値とは要するに関数の「目的」である.その関数が向かっていく先のゴール地点を表したものが極限値であると理解しておこう.

極限値は関数の「目的」である.

※ この辺りの事情は数学Ⅲ 関数の連続性 で詳しく学ぶ.

1.3 微分係数

 関数 $f(x)$ の $x$ が $a$ から $b$ まで変化したときの平均変化率とは次のようなものであった: