高校数学[総目次]
数学B 第1章 ベクトル
スライド | ノート | 問題 | |
1. ベクトルと有向線分 | |||
2. ベクトルの演算 | |||
3. ベクトルの成分 | |||
4. ベクトルの内積 | |||
5. 位置ベクトル | |||
6. ベクトル方程式 | |||
7. 平面ベクトルの応用 | |||
8. 空間ベクトル | |||
9. 空間ベクトルの成分 | |||
10. 空間ベクトルの内積 | |||
11. 空間の位置ベクトル | |||
12. 空間ベクトルの応用 | |||
13. 空間のベクトル方程式 |

演習問題
問題1【発展】
座標空間において,xy 平面内で不等式 |x|≦1, |y|≦1 により定まる正方形 S の4つの頂点を A(−1, 1, 0),B(1, 1, 0),C(1, −1, 0),D(−1, −1, 0) とする.正方形 S を直線BDを軸として回転させてできる立体を V とする.0≦t<1 を満たす実数 t に対し,平面 x=t による V の切り口を図示せよ.
(東京大・改題)


直線BDを軸として回転させてできる立体を V は,合同な円錐を2個合わせたものとなります.平面 x=t はこの円錐の母線に平行で,この場合切り口は放物線になることが知られています.
さて,平面 x=t での切り口を考えるためにはこれら円錐の方程式を求める必要があります.
目標:円錐の方程式を求める
円錐の方程式なんて教科書のどこにも記載がありません.ところが難関大の入試問題では円錐や円柱といった教科書にはない方程式が,問題を解く上でどうしても必要になることがあるのです.しかし難しく考える必要はありません.見たこともない方程式を導くには,その図形上の点 (x, y, z) の間に成り立つ関係を導いてやればよいだけなのです.
ポイント 立体の方程式の求め方
図形上の点 (x, y, z) の間に成り立つ関係を導く.
解答
1° x+y≧0 …① のとき
まず2つの円錐のうち,S の x+y≧0 の部分を回転させてできる円錐の方程式を求めます.

正方形 S の x+y≧0 の部分を直線BDを軸として回転させた立体は,図のような円錐である.

この円錐の側面上の点を P(x, y, z) とすると,→BP と →BO のなす角が常に45°であるから,
→BP⋅→BO=|→BP||→BO|cos45∘
ここが円錐の方程式に直結する部分ですが,この発想が初めてだととても難しいです.
(x−1y−1z)⋅(−1−10)=√(x−1)2+(y−1)2+z2√2⋅1√2 (1−x)+(1−y)=√(x−1)2+(y−1)2+z2
|x|≦1,|y|≦1 より (左辺)≧0であるから両辺を2乗して
{(1−x)+(1−y)}2=(x−1)2+(y−1)2+z2
整理して
2(1−x)(1−y)=z2
円錐の側面上の点P(x, y, z) の間に成り立つ関係が得られました.この式こそが円錐の側面の方程式です.しかし気を付けておかなければならないのは,円錐の方程式がいつもこの形であるという訳ではないのです.この問題での方程式がこの形になったというだけに過ぎないのであって,例えば xy 平面上の原点を中心とする半径 r の円の方程式が x2+y2=r2 というように決まった形があったこととは事情が異なるのです.この辺りが立体の方程式を考える上で難しいところです.
ここで x=t (…②)(0≦t<1) に固定すると,
2(1−t)(1−y)=z2
x を t に固定するということは,平面 x=t による立体の切り口を見ることになります.
y について解くと y=−z22(1−t)+1
ただし,① 及び |y|≦1 により −t≦y≦1
2° x+y≦0 のとき
次に S の x+y≦0 の部分を回転させてできる円錐の方程式を求めます.
1°の x, y をそれぞれ −x, −y に,そして②より t は −t と置き換えればよい.よって
−y=−z22(1+t)+1 (t≦−y≦1)
∴ y=z22(1+t)−1 (−1≦y≦−t)
1°,2°から,求める切り口の図形は次の図のようになる.

立体の切り口を頭の中でイメージすることは困難な場合も多い訳ですが,イメージできなくても導かれた方程式が切り口の様子を教えてくれるので,それほど神経質になる必要はありません.